2005-11-04
94年ロス暴動の如きパリ郊外の動乱を斬る。映画「Haine」「L’esquive」を手がかりに
カンヌ映画祭最優秀監督賞を受賞した「haine」(憎しみ)はまるで今回のパリ郊外・動乱を予言している。Amazonのレビューから引用すると同映画は「パリ郊外の貧民の町で少年が警察から暴行を受けて瀕死状態になった。日頃から警察を嫉ましく思っていた青年が拳銃を拾ったことからやがて暴動への気運が高まる」というもの。同映画がつくられたのはちょうど10年前の1995年だ。
今週火曜日夜から水曜日早朝にかけて、動乱の現場・サンドニで焼かれた車はなんと153台。ごく小さな地域で、一夜にしてこの数である。激しさ・怒りのすごさが分かるであろう。治安の責任者たるニコラ=サルコジ内相が現地視察して、動乱に参加するような若者を「社会のクズ」と罵ったことは火に油を注いだといえよう。アパートが焼けてアフリカ系移民が焼け死ぬ事件が今夏頻発したが、そのときサルコジ氏が発した言葉は「移民の一掃」であった。次期フランス大統領と目されるこの男にたいする私の不信感はいっそう強まった。
それにしても、本年セザールの賞を総なめした映画「L’esquive」の舞台はちょうど動乱の地・サンドニであった。その地域に住む高校生の恋愛物語である。映画「haine」は日本でもDVDでリリースされのだが、「L’esquive」は日本で公開される目途すらたっていない。
パリ郊外の緊張は、この二作を見れば自ずと分かる。