2005-06-15
拉致記者を支えたフランス世論
フランスに来てもうすぐ一年になる。一年ほど暮らしていれば、この国の好きなところ、嫌いなところが、ハッキリしてくる。
私がこの国に来てもっとも好感を持てたのは、イラクで拉致された自国記者に対する姿勢である。これまでフランス人記者はイラクで計三人拘束された。その都度、国民的な解放運動が起こった。非イスラム教徒はもとよりフランス在住のイスラム教徒も解放のための集会や大規模デモを開き、シラク与党のUMPから左派政党の社会党・共産党・緑の党まで、解放に向けた運動に参加した。いくつかの政党ホームページでは、トップに拉致記者の関連情報を掲載していた。保守系メディアから左派系メディアまで、早い解決を求める記事・論説を掲載し続けた。
昨年一二月に拘束されていたフランス人男性記者が二人、イラクで解放されたとき、休暇をとっていたシラク大統領、ラファラン首相がパリ郊外の空港で彼らを出迎えた。今回、拉致されたフロランス記者の出迎えにも、シラク大統領は駆けつけた。
危険地にも赴く国境なき医師団の中心メンバーがフランス人ということもあろう、危険地で働くジャーナリストやNGOに対するフランス人の敬意の念は高い。フランス民衆がジャーナリズムやNGOの活動に対して敬意をもっているからこそ、フランス政府も熱心に解放にむけた交渉に臨めた。