2007-12-20
紅白歌合戦2007の目玉は、中村 中さんだ!
『オーマイニュース』に次のような記事を執筆しましたので、転載いたします。
主題:紅白歌合戦2007の目玉は、中村 中さんだ!
副題:性同一性障害で注目を集めたシンガーソングライター
【本文】
今年で58回目になる大晦日のNHK紅白歌合戦……。出場歌手が先日、発表されたが、とりわけ異彩を放ったのが、初出場のシンガーソングライター・中村 中(あたる)さんだ。
10代、20代の間で広く人気を得ている22歳の「若きカリスマ」中村さんの独占インタビューは今夏、「オーマイニュース」に掲載された。
記事が掲載されてからは、彼女がメディアに露出する機会はさらに増え、テレビではフジテレビ系列の「笑っていいとも」やテレビ朝日系列の「徹子の部屋」、NHK総合テレビの「SONGS」に出演した。11月21日にはシングル「裸電球」を、12月5日には待望のセカンド・アルバム「私を抱いて下さい」をリリースした。
11月からは「ワンマンライブ」と題する初の全国コンサート・ツアーのために日本中を飛び回っている。コンサートはどこの会場も満席で、人気の高さを示している。12月13~15日には中村さんの歌と人形芝居が織りなす歌劇「牡丹燈籠」の公演が華の都・パリで開かれ、中村さんはついに世界進出を果たした。中村さんは只今、大活躍中だ。
中村さんの紅白出場が画期的なのは、性同一性障害者(生物学的な性と精神的な性が一致しない人)の出場が番組史上、初めてのことだからだ。男性として生を授かった中村さんは10代初めから男性であることに違和感を持つようになり、成人してからは女性として生きる道を選び、自身がトランスジェンダーであることをカミング・アウトしている。
中村さんが紅組のメンバーに選ばれ、女性歌手として出場するのは、日本社会の進歩といえよう。
MTF(生物学的には男性だが、精神的な性・性自認は女性で、女性として生きることを歩んでいる人)はかつてメディアでは「ニューハーフ」と呼ばれ、キワモノ扱いされてきた。しかし、当事者の地道な運動によって性同一性障害者は徐々に市民権を得ていき、2003年4月にはMTFであることを公言する上川あやさんが世田谷区議に当選し、同年7月に性同一性障害者の戸籍の性別変更を認める「性同一性障害者特例法」が国会で成立、2004年7月16日に施行された。
日本で公に男性から女性へ、女性から男性へ戸籍を変更できるようになったわけだ。
そして今年はMTFの1人が、どちらかといえば保守的な体質を持つNHKが全精力をかける国民的番組に、女性歌手として出演する。そこまで日本の社会は進んだのだ。
今年の大晦日の夜、中村さんの美声がテレビ・ラジオを通じて全国に中継される。昨年(2006年)の同番組では無名に近かったテノール歌手・秋川雅史さんが「千の風になって」を歌い、多くの人に感動を与えた。その効果で秋川さんが同曲を歌うシングルは今年、爆発的に売れ、長い間、ヒットし続けた。同じように、紅白で歌うことによって中村さんの知名度はさらに上がり、人気も上昇することだろう。国民的歌手の1人になる可能性だってある。
今年の大晦日をテレビが見られる、またはラジオを聴ける環境で過ごすならば、中村さんの魂の込められた歌に耳を傾けることをオススメしたい。あなたにしあわせをもたらすことだろう。