2007-08-23

フランスの週35時間労働はいつまで? ヴァカンスは1カ月だって!

オーマイニュース』に次のような記事を執筆しましたので、転載いたします。

タイトル:フランスの週35時間労働はいつまで?
サブ・タイトル:ヴァカンスは1カ月だって!

【本文】
 フランス人ってうらやましい!

 フランス人のゆったりとしてのんびりした労働環境は、日本人にとってはいかにも心地よさそうに見える。

 何しろ週に35時間しか働かなくてよいのだ。9時に出社して17時に退社する……。そんな暮らしを毎日送れる! この労働政策が実現したのは、1997年6月にリヨネル=ジョスパン社会党政権が成立してからだ。

  政権が発足するなり、労働者の勤務時間を週35時間にする「35時間労働制」が断行された。同制度は、1998年から漸次、実行され、2000年2月1日から従業員21人以上の事業所を対象に施行された。20人以下の事業所については2002年1月1日から施行された。

 この結果、10人以上の社員を有する会社の週平均労働時間は、1992年は39時間だったが、2004年は35.6時間と大幅に短縮された。

 フランスの世論調査会社・Ifopがサラリーマンを対象に2005年1月27日と28日に行った世論調査によれば、77パーセントが週35時間労働を維持することに賛成している。超過勤務で収入を増やしたいと答えた人はわずか18パーセントだった。

 労働省の調査によれば、1998年から2004年までに35時間制のおかげで新たに雇用された人は35万人にものぼった。労働者の労働時間を短くすることにより、ワーク・シェアリングが実現でき、雇用が創出されたというわけだ。

 加えて、労働者にとって嬉しいのが長期ヴァカンスだ。フランスでは最低5週間のヴァカンスが法で保障されている。会社によっては労使協定でヴァカンスをさらに増やす傾向も見られ、年間5~8週間のヴァカンスを満喫できる。8月には夏休みのため、1カ月工場がストップするというのがフランスの伝統だ。1カ月以上のヴァカンスでゆっくり、じっくり心身共にリラックスするのがフランス流だ。「何のために働くか?」と問えば、「もちろん、ヴァカンスのためさ」と普通のフランス人は答える。

 仕事があるときもゆったりとした生活ができ、ヴァカンスも存分に楽しめることができる。私は何人ものフランス人からこう云われた。「日本人はフランスを旅行するとき、何であんなに慌ただしいのか?」

 彼らにとってヴァカンスとは1カ月単位でとるものである。リゾート地へ行き、1カ月、のんびりと過ごす。これが理想的なヴァカンスの過ごし方だ。日本人のように、数日間や1週間の休暇でフランスをせわしなく旅するという姿は、フランス人にとっておおよそヴァカンスには見えないのだ。

 しかし、こんな労働者の天国・フランスでも、ジャック=シラク大統領が任命した2人目の首相・ジャンピエール=ラファラン内閣の下で、35時間労働制を一部骨抜きにする政策が断行され、2007年春のフランス大統領選挙では「もっと働き、もっと稼ごう」をスローガンとした新自由主義路線のニコラ=サルコジ氏が大統領に就任した。サルコジ氏は週35時間労働制の全面的な見直しを公約し、フランス人がもっと働いて、働いた分だけ収入を得られるようにしよう……と主張した。

 いまのところ、労働組合との話し合い抜きでは、年内に労働政策を改革することはないとサルコジ氏は約束し、強硬路線は採らない方針だ。しかし、サルコジ氏の任期は2012年まで……。この期間中に、新自由主義路線の公約が断行され、のどかでのんびりとした労働環境はフランスから姿を消すかもしれない。フランスも近い将来、日米英のようにあくせくとサラリーマンが働く国になるのだろうか?