2012-12-25
お部屋2480/風営法改正の問題点 8/論点整理 2
うーむ、困ったことになりました。ここまで私が書いてきたことの前提が間違っているかもしれない。
きっかけは前回のコメント欄を参照のこと。風営法の対象となる業種はどう定義づけられるかという、風営法の根幹になる話です。ここがはっきりしないと、議論もできない。「ダンスを風営法から外せ」という主張においてもここは肝です。「風営法はこれこれこういうものだから、ダンスは外すべき」という主張は「これこれこういうもの」があって初めて成立するわけですから。
歴史的経緯見ると、「売春と賭博」というのが二つの柱ではありますが、すでに説明したように、風営法が制定された時点では、売春の予防ということは言えなくなって、より曖昧な内容になっています。
条文上では、「善良の風俗」「清浄な風俗環境」「少年の健全な育成」を侵害し得る営業ということしかわからないわけですけど、たとえば単に「騒音が出る」ということだけで風営法の対象になるわけではありません。騒音が出るにもかかわらず、風営法の対象になっていないものはいくらでもあるわけで。
性風俗営業においては、言うまでもなく「性的な営業」がその対象です。正確には「性風俗に関する営業で、善良の風俗、清浄な風俗環境又は少年の健全な育成に与える影響が著しい営業」。対して、風俗営業は性的ではなく、「博打+●●」を対象にしています。この●●が何かって話です。
性風俗関連特殊営業等は風俗営業とはまた別の章になっている以上、この●●は性的なものとはまた別基準であろうというのが私の解釈だったわけです。その厳密な定義・内容は置くとして、ここでは「歓楽性の高い営業」としておきましょう。「歓楽性」は売春や賭博に直結しなくても成立する。だから、酒やダンスが風営法の対象営業を決定する要件になっていても私にとっては違和感がない。どっちも歓楽的ですから、条件が重なれば風営法の対象になるわけで、性的であることは必須条件ではない。
ところが、風営法の目的は「賭博と売春を予防する」という判例があるようです。性風俗営業は「性風俗に関する営業で、善良の風俗、清浄な風俗環境又は少年の健全な育成に与える影響が著しい営業」で、風俗営業は博打と「性風俗に関する営業で、善良の風俗、清浄な風俗環境又は少年の健全な育成に与える影響が著しくない営業」ということか。だとすると、「かつてのダンスホールは該当したが、現在のクラブは売春のきっかけにはなっていない」との主張は有効のようにも見えますし、Let’sDANCEの主張はこの考えを元にしているものだと推測ができます。
たしかにそう考えると、納得できるところがあります。警察庁は、4号の対象となるダンス営業について「男女間の享楽的雰囲気が過度にわたるもの」という定義を出したわけですが、私はここで「男女間」に限定したのはミスだと思ってました。「男男間」「女女間」であっても享楽的なダンスはいくらでもあるわけで。あるいはシングルダンスであっても、エロチックなものはいくらでもある。
このために、すぐに二丁目では「だったら、ゲイオンリーのクラブ・イベントはOKじゃん」という声が出ました。当然ですね。あの警察庁の定義は4号に関するものですから、酒が加わる3号ではより対象の範囲が広がってもおかしくないわけですが、ダンスそのものの定義が4号と3号で違ってくるのはおかしくて、私も字句通りとらえればミックスではないゲイクラブはOKと判断しています。
もしかすると、このミスに気づいて訂正がなされるかもしれないですが、それまでは男性オンリー、女性オンリーであれば朝まで踊らせる営業ができるはずで、警察になんか言われたら、あの定義を見せればいい。
しかし、この定義も売防法を踏まえていると考えると納得しやすい。売防法の売春の要件は「性交」ですから、男女間でしか成立しません。売春につながり得ないため、同性間のダンスはパスだと警察庁は考えたのかもしれない。たしかに、性風俗営業については異性間に限定していますから、ここは一貫しているように見えます。
という納得の仕方が一応できるのですが、だとすると、今度は「接待」はなぜ異性間に限定していないのかという疑問が生じます。つまり、性風俗営業については「売春につながりえる営業」という定義ができるのだとしても、風俗営業については「売春にはつながらない享楽的営業」という定義がなされているのではないか。だから、異性間に限定していない。なのに、なぜダンスは異性間であることに重きがあるのか。やっぱり警察庁の定義はミスなんじゃなかろうか。
どっちに転んでも矛盾が生じてしまい、どう考えていいのか、全然わからん。ここはいくら私の頭で考えてもしょうがなくて、判例でどう定義づけられるのかを見るしかなく、そこから再度検証していくとして、この大前提に関わる話についてはそこがはっきりするまでしばらく出すのはやめます。
↓この辺を読むと、また違った頭の整理の仕方が出てくるかと思いますよ。
客にダンスをさせる営業に係る質疑応答について
http://www.npa.go.jp/pdc/notification/seian/hoan/hoan20121217.pdf
いやあ、これはいよいよワケがわからんことになってきた。
「店内外における暴行・傷害事案等が発生したり、周辺住民等からの騒音や酔客による迷惑行為等の苦情が警察に寄せられたりする」と風営法の対象になるのか。だったら、居酒屋も風営法の対象にしないとまずいのではないか。カラオケ殺人も過去にいくつか起きていて、周辺住民からの苦情も多いため、カラオケボックスも風営法に入れてあげなきゃ。
また、こうなると、対象となるダンスを男女間に絞ったのはなんだったのかがわからない。やっぱり単なるミスか。警察庁はそれなりの論理と思慮があるのではないかと思っていたのは深読みだったかもしれない。
一方で風営法に対する批判が起きそうなところを場当たり的に切り離しているのではないかとも想像していて、「ライブハウスからの批判が盛り上がるとライブハウスも切り離すしかない」と言っていたのですが、ホントにそうかも。すでに多数摘発してしまったクラブだけは死守するとして。
松沢様
<’85から>3号営業関連に長年関わる者です。
先ず欧米発のディスコ営業が日本に入って来たのは1968辺り(諸説有りますが赤坂ムゲン等)であり、それ以前日本にディスコ営業は存在してませんので、今日の3号営業が規制するディスコ営業と、1968以前の規制する物は中身/対象が異なります。私自身4号営業界隈との関わり無いので解りませんが、史実としては戦後に登場した飲食提供のダンスホールが、ディスコ以前の3号営業規制対象だと思われます・・・この歴史/経緯を考慮する必要が有ります。
もう一つ業界関係者の認識としては、1982の新宿ディスコ殺人事件こそが、1985の大改正(風俗営業取締法→風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律への変更含め)により、それまでほぼ規制されて無かったディスコ営業が、営業時間の制限付き(年齢制限/営業時間制限が存在してないか非常に緩かったからこそ、直接の事件現場では無いけどディスコが殺人事件を生みだし、戦犯/スケープゴートにされたので)と成り、今日に至るので。
先ず調べるべきは、ディスコ営業が日本に登場した1968~1985の状況でどうだったのか?であり、又1985の風営法大改正の際、警察庁等でどういう話し合いが行われたのか(殺人現場では無いのに何故ディスコがやり玉に挙げられて厳しく営業規制される事に成ったのか)・・・です。
・・・松沢さんが袋小路に入られてるのは、当にその部分だと思いますが。
3号営業関連に関して記したmailが有りますが、ご要望で有ればお送りします。
(膨大なのと公言出来ない物が有るので)
タコシェさんのメアドは解りますが、現在直接関係無さそうですね。
私がここに書いている話とはちょっとずれているかもしれません。
私がわからなくなっているのは、過去の経緯はともあれ、今現在、「善良の風俗」「清浄な風俗環境」「少年の健全な育成」を侵害し得る営業というのはどこまでを範囲として、ここにおける「風俗」は何かという定義です。どこでどうその営業が風営法の対象になったにしても、統一された定義、基準が必要です。それがわからない。営業ごとに基準がバラバラでは困るわけです。
おっしゃるように、時代の変化によって、対象営業も変化しているわけですが、その変化によって、現在対象ではないはずのものが対象とされているのだとすると、それは外すべきということになるのですから、「現在の風営法は何を対象にしているのか」がわからないと、その判断もできない。しかし、現にわからないというのがここで書いた内容です。
なしくずしで範囲を拡大してきているので、基準がバラバラになっている可能性は私も感じていて、その時々の警察庁の資料か、判例を調べる以外ないと思っています。その上で現在の基準と内容を比較して、整合性のなさを指摘していくしかないのでしょう。それにしても、今現在の基準がこうも曖昧だとは。
ちなみに、ダンスホールは風営法制定時、二号営業です。キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホールはダンス営業として同じ号です。これが分かれたのは1959年の改正です。この段階でダンスホールはほとんどがタキシダンサーを置いていて、このダンスも接待とされたため、ダンスホールのほとんどはキャバレーに吸収されたのだと思われます。
で、ナイトクラブはそのまんまナイトクラブでありました。カップルで来て踊るナイトクラブが当時は多数存在していたのであります。わかりにくいので、この辺の用語も整理した方がいいんですけどね。つまり、ダンスの質が違うだけで、「接待のダンスなしに客が踊る」という定義の業態はディスコ以前からナイトクラブとして存在していたわけです。
また、この時に少年の健全育成という観点が加わっていて、これが強化されたのが1984年の改正でしょう。
この辺の経緯は『踊ってはいけない国、日本』掲載の拙稿参照。
ディスコはこの前から風営法の対象だったのに、営業時間は無視しているところが多かったんじゃなかったでしたっけ? 私もここは曖昧です。この辺については高橋健太郎さんが詳しい。これも同書参照。
ひとまずmailお送りしました。
・・・私自身1985以前の状況は当事者では無いので解りませんが、ディスコ営業の規制強化(それ以前どう規制されてたかは?)が1982の事件起因で有る事は、そういう業界関係者の共通認識です(私も職務上の上の世代からそう伝え聞くので・・・お送りしたmailに当時の新聞情報リンクなども有りますが)。
当時の店舗関係者を探すのは難しそうですが、足繁く通ってた方々はこういう処で直ぐに見つかります。
http://maharaja-r.jp/ (45歳以上の世代)
http://www.google.co.jp/search?&q=%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2
法規制がどうだったかはさておき、現場が実際どうだったのかは当時ディスコ通いしていた方々に聞けば直ぐに解る事です。
今回の警察庁の施行基準変更やパブコメへの回答なども、法の問題よりも実際どうなのか?・・・の現場運用の問題であり、4号界隈での警察庁の迷走に一喜一憂してる方々はご愁傷様ですが、3号営業に関しては特に変化は無い様です。
・・・違法営業に関して(深夜酒類提供飲食店営業許可で違法ディスコ/クラブ営業を行う事)は、より厳格化される事に成りますが(P45/第23条>引っかけ問題の如き記述)。
http://www.npa.go.jp/safetylife/kankyo/unyoukijun.pdf
木曽さんが記されてる通達の4枚目に関しては、何でわざわざ”食事付き盆踊りプログラム”(何じゃそりゃ?・笑)等という謎の例外措置を記載したのかは大いに謎です。クラブと言う営業形態が全て享楽的雰囲気を醸し出す営業のみでは無いと言う事を認めたのか、内容次第で規制を緩める(手心加える)と言う積もりなのか、若しくは何か他の思惑が有るのか?
そもそも今回現場運用指針に関して公にしたのは画期的な事だと思われますが(所轄の生安担当者に聞いても何が合法/違法か等教えてくれたりしませんから>だから営業許可取得するの大変)、ダンス教育との兼ね合いで相当現場が混乱してるからこそ、敢えて公表されたのかも知れません。
申し訳ないですが、送っていただいたものは法の議論にはほとんど関係がありませんでした。今必要なのは、法的に意味のある客観的資料です。法解釈の話なのですから。これは判例、警察庁の文書、国会答弁に求めるべきものです。
「ディスコ殺人事件」のことについては風営法のことが話題になった段階でTwitterで議論は起きていて、説明していただかなくていいですよ。風営法のことに詳しい人たちはほとんど全員が知っていることですし、ネットにも出ているんですから。
すでに書いているように、「少年の健全な育成」というのは、1959年にさかのぼりますから、全体の流れを見ないとしゃあないかと。売春云々は戦前からの話ですし。
あなたの興味と私の興味は関係がなさそうですよ。ここまでとしましょう。