2012-12-20
お部屋2475/風営法改正の問題点 4/学校のダンスとクラブのダンスは違う
風営法の誤解がもっともよく出ているのが「ダンスが中学の必修課目になったのに、風営法でクラブが潰されているのはおかしい」という言説です。これは全然おかしくありません。ずっと私は「ちいともおかしくねえよ」と言っているのですが、なかなかわかってもらえない。
おかしいと感じる人と、おかしくないと感じる人との違いは「風営法は何を維持し、何を規制しているのか」の理解の違いにあるのだと思います。これも前回書いた「個人の実感と法の違い」を峻別できていないことに起因しているのではなかろうか。
言うまでもないことですが、ダンスをさせる営業になって初めてダンスは風営法の対象になります。正確にはダンス自体は規制の対象にさえなってなくて、要件になっているだけです。酒を飲ませて踊らせる営業に一定の縛りをかけることと、ダンスそのものを禁止したり、縛りをかけることとは別だということを認識した方がよい。
現実の運用においては、客がダンスをしたことをもって摘発されることにもなって、あたかもダンスそのものがいけないように思えてしまいますが、違法になる要件が揃ったということであって、この時でも摘発されるのは店であり、違反の容疑は無許可営業です。逮捕されるのはダンスをした人ではなく、ダンスそのものに違法性があるのではない。
ヘルスやソープランドで性的サービスがなされているからといって、営業ではない個人対個人の性的行為が規制されているわけではない。性教育がいかに学校でなされていても、ヘルスやソープランドという性風俗営業が風営法の対象になっていてもおかしくないのと一緒です。
個人対個人の性的行為は公然と行ったり、強制力をともなったりしない限り、刑事の対象にはならない。ここに「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交する」という要件が加わると売春になり、違法性を帯びる。また、「異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業」となると風営法の対象となる。
それぞれの要件はそれ自体が否定されるわけではなく、それ自体が違法性をもつわけではありません。風営法が存在していても、個人対個人の性的行為の自由はなんら揺らがないわけです。
クラブと学校のダンスが矛盾していると感じる方々は、どうか「ヘルスやソープランドを風営法から外せ。風営法を撤廃せよ。性の自由を侵害するな」と要求していただきたい。このあと詳しく書くように、私は風営法を維持すべきという考えなので、これには反対しますけど。性においては徹底したリベラル派である私が風営法を維持すべきと考えているところに風営法の意義が存在していると言っていいかと思います。
酒だってそうです。家で仲間たちと飲んでいてもなんら問題がないのに、飲み屋は届けが必要。食事だってそう。店となれば食品衛生法の届けが必要です。なぜかと言えば営業だからです。そこには不特定多数が集まるからであり、店舗という誰にでも認識できる形態をとるからです。
これらの一定の縛り、一定の条件を「禁止」ととらえるのは間違いですし、法がそれ自体を否定しているととらえるのも間違い。風営法は決してダンスを否定しているのではない。よって、学校で教えることとなんら矛盾はありません。
仮に学校で生徒に酒を飲ませて踊らせることを必修課目にしたんだったら、「矛盾している」と言ってもいいでしょうけど、そうではありません。厳密には学校の授業の中で行われることは営業ではありませんから、学校で生徒に酒を飲ませて踊る授業をしたとしても、これとクラブの間にはなお一線があります。
一般の人たちがこれについてきれいに区別できないことはやむをえないのかもしれないですが、Let’sDANCEがこの両者を並列させて語るのはやはり問題があると思います。
もしかすっと、このシリーズ、一回分が長いっすかね。長い文章を読み通すことができない人がいるようなので、今回はここでやめときます。
ご存知かもしれませんが、レッツダンスの法改正の方向については、DOMMUNEでの発言もそうですが、こちらにまとまっていましたね。
「風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律」等改正案の あるべき方向性について」
http://www.letsdance.jp/law12law/
また今日づけで先日のパブリックコメントに対する声明もあがっていました。
Let’s DANCE法律家の会による 「風営法2条4号関連改正案に対する意見に関する『警察庁の考え方』についての声明」
http://www.letsdance.jp/activity/publiccomment/
私自身も法改正のどういう具体的な姿があるべきかは考えに悩むところで、引き続きこちらの議論を楽しみに拝読させていただきます。
あ、知らなんだ。
でも、結局、別法規のどこをどうやって18歳未満の入場、住宅地の営業、学校や病院に隣接した営業を防止するのかについては書かれてませんね。
ここに関わるのは「公然わいせつに代表される刑法上のわいせつ罪や騒音防止に関する諸法令、未成年の保護育成に関する諸法令により十分に対応可能」という部分ですが、こうなると、現行の2号をどうして残すのかがわからなくなる。それも同じ論理で否定しなければおかしい。つまりは風営法の全否定になってしまってます。Let’sDANCEがそこまで視野に入れているのであれば、堂々そう主張して、それを社会に問うべきでしょう。
で、風営法撤廃というのであれば、私は反対に回ります。