2008-05-05

お部屋1487/あれやこれやの表現規制 17

著作権の話になってます。著作権についても新たに章を立てた方がいいのですが、こちらについては「マツワル」「パクリのリスク」シリーズで延々とやり続けているので、「黒子の部屋」では簡単に済ませます。

書評で本の表紙を出す場合、漫画だけは無断で出すとクレームがつくことがあります。だいたい大手の出版社です。本来表紙の著作権者は出版社ではないわけですが、著作権者である漫画家が出版社に委任しているってことでしょう。そのため、漫画の表紙を出す場合は許可をもらうことが慣例化しつつあって、この時に出版社はどういう文章に表紙写真を添えるのかまでチェックしてきます。

内容の事前チェックのために著作権を利用しているとしか思えず、私自身、許可を求めて小学館に原稿を見せたところ、表紙写真の使用を断られたため、その旨を誌面で説明して、そのスペースを真っ白で出したことがあります。

著作権上どうなのかわかった上で、「お互いさま」ってことで、なあなあにできるところはなあなあにしておくのが合理的だと思うのですが、現になあなあにしない出版社や著作者が出てきてしまうと、「だったらガチガチに法を遵守しましょう」ってことで対抗していくしかない。

漫画家が表紙の著作権についてまで主張するのであれば、漫画家がこれまで当たり前のようにやってきたトレースや写真の模倣も著作権侵害として叩かれてしかるべきです。「自分らはパクッて当然、しかし、本の表紙を出す場合は事前に内容をチェックさせろ」は通じない。

現にネット上では漫画のパクリを厳しくチェックするようになってきてます。これは当然のことです。ためらうことなく、漫画のパクリを告発しましょう(大手に限るべきかとも思いますが)。

こうなってきた以上、内容チェックをさせないために、表紙の著作権については、法改正をすべきです。「パッケージの著作権」の条文を新設して、「商品のパッケージや出版物の表紙、衣服など、人目につくところに写真やイラストを使用している場合の著作権は制限されるとすべき」と十年以上言い続けているのですが、ちいとも同意してくれる人がいないです。

著作権の保護期間延長なんてバカなことをやっている暇があるなら、こっちをとっとと改正すべきでしょう。著作権の保護期間なんて死後20年で十分(その時0歳だった子どもが成人するまで)、なんでひ孫の代まで著作権を残してやらねばならんのか。欲に目のくらんだヤツらめが。

屋外に設置された著作物の権利が制限されるのと同様、「望んで晒しているパッケージの著作物」の権利は制限されるとするのが適切です。著作権法が出来た時代には、本や雑誌の表紙、食品のパッケージ、Tシャツに絵や写真が入るなんてことは想定できなかったわけで、これは単に時代の変化に伴った法の不備でしかない。「法律では漫画の表紙を出すためには許諾が必要。原稿を見せろ」と主張するのは、法の不備につけこむことです。

あるいは、着て歩くべく販売されたり、配布されたりするTシャツを着て雑誌に出たり、テレビに出たりすると、著作権侵害になるなんてバカな話がありますかって。

そういう行為を防ぐために法改正しないで済ませている事情が私にはわからないです。ここを改正せずに、「ネット法」なる法律を作ろうとしている意味も私にはわからない(これについては「マツワル」で批判したので、ここでは省略)。

著作権法の改正が実現して、著作権がクリアになったとしても、なお肖像権の問題が残りますから、これも早く法律を作って、本や雑誌の表紙、CDのジャケット、ポスターなどに顔を出している人の肖像権は制限されると明記した方がいい。

第1章は次回で終了です。