2007-10-07
お部屋1344/今日のマツワル53
昨日は久々にロフトプラスワンに出演。でも、来ていた人たちに言いたいことが伝えられている感じがせず、途中で話すのを諦めました。
本日10月7日は、2丁目のarchで、Livivg Together Loungに出演です。
http://www.living-together.net/
今回はさきほど配信した「ダイレクトカット」の19回です。「ダイレクトカット」シリーズは、パッケージ産業の終焉について書いています。今回は全然関係のない話が続いて、最後の最後に本題が出てきます。
ここ数回は半年ほど前に書いてあったものを出してして、文中の「最近」は半年前の「最近」です。なお、ここに出てくる報告書に関するシンポジウムが来年大阪で開かれる予定で、私も参加予定です。
< <<<<<<<<<マッツ・ザ・ワールド 第1666号>>>>>>>>>>
< ダイレクトカット19>
厚生労働省科学研究費による「日本の性娯楽施設・産業に係わる人々への支援・予防対策の開発に関する学際的研究」という長ったらしいタイトルの調査があります。
エイズ対策のためには、性産業の実態を知る必要があります。性産業によってHIV感染が増大する事実がないのなら、ことさらに性産業向けの対策をとる必要はないわけですが、その場合でも、まずは実態がわからなけれぱ話にならない。
HIVに限らず、性産業についての公的な調査はほとんどなされていませんから、HIVという範囲を越えて、このような調査には意義がありましょう。
この調査が行われる前に、意見を聞きたいというので、昨年話をしてまして、以前から言っているように、「風俗産業は危険」という先入観で見ないことをお願いしつつ、注意事項をいくつか指摘。
つい先日、昨年度分の報告書ができたので、また感想を言いに行ってきました。
読んだ方もいるかと思いますが、この調査は「週刊ポスト」と組んで、昨年、読者アンケートという形で実施されています。誌面に質問が出て、2202票を回収、うち1784票が有効ですから、サンプル数は十分でしょうが、数字をどう分析するのか、とても難しいです。
「これまで、以下の性風俗サービスを利用したことがありますか?」とあって選択肢にマルをつけるようになっています。複数回答です。
上位5位です。
1/ソープランド 1357人 76.1パーセント
2/店舗型ファッションヘルス 1036人 58.1パーセント
3/ピンクサロン 883人 49.5パーセント
4/ストリップ劇場 852人 47.8パーセント
5/派遣型ファッションヘルス 499人 28.0パーセント
ソープランドの数字が圧倒的に高いのですが、だからといって、今現在の日本では、ソープランドの利用者が多いとは言い難い。これは今までの人生において体験したものすべてですから、たとえば20代の独身時代だけ遊んでいた50代、60代にとっては、ファッションヘルスは選択肢になかったわけです。
「一番最近の風俗利用」について聞いた設問では、ソープが27.2パーセント、店舗型ヘルスが25.1パーセントになってます。「一番最近の」という表現はあいまいで、10年前でも該当してしまうため、「この一年で」とはっきり区切った方がよかったと思いますが、それでもここでは数値がかなり接近してます。
しかし、なお、これらの数字から、日本人男性の嗜好を見極めるのは難しい。第一に地域に選択肢が制限されてしまうためです。居住地域にソープランド、あるいはヘルスしかない場合があって、本番が好きでソープに行っているのかどうかは見極められない。居住地がわかったところで、出張先で遊ぶケースも多いため、なお正確なところはわからないですが。
また、サンプルが偏っているのです。「雑誌のアンケートに答えた人」というだけでも偏りがあるわけですが、風俗産業をもっとも利用する世代より、サンプルの方がずっと年齢が高い。
〜30歳 4.3パーセント
〜40歳 15.4パーセント
〜50歳 32.1パーセント
〜60歳 30.7パーセント
〜70歳 12.6パーセント
71歳〜 5.0パーセント
平均を出すと50代になりましょう。業種によっても違いましょうが、多くの風俗店では平均30代、高級ソープのように年齢が高い店でも40代でしょう。
サンプルの年齢が高いために、ソープランドの利用率が高くなり、ヘルス利用率が低くなっていて、とりわけ派遣型ヘルスの率が低くなっていると考えられます。
なにしろ街娼体験者が13.2パーセントもおり、かつてのパンパンまでがここに含まれていそうです。また、「接待型料理店(元遊廓・ちょんのま」の体験者は20.6パーセントもいて、これも赤線、青線が入っているかもしれません。
報告書でも、若い世代の方がヘルス利用率が高いと書かれていて、年齢別の分析をしないと、これ以上のことはわからんですね。
コンドームの使用については、「一番最近の性風俗利用」で、35.8パーセントがコンドームを使用していません。半数くらいが非本番なので、それでも6割以上がコンドームを使用しているのは大変優秀かとも思います。これも、風俗産業以外での性行動と比較しないとなんとも言えませんけど、この率を上げるのは容易ではないでしょう。
前から言っているように、風俗産業で生サービスが存在するのは、客とワーカーと店の共犯によるものと言うべきと思います。生でしたい客が存在しているのは事実、これが少数派であったとしても、それを拾い上げるためには、店としては生サービスを提供した方が有利、ワーカーも提供した方が有利です。その結果、「コンドームをつけてもいいワーカーや客」「コンドームをつけたいワーカーや客」がつけられない、つけにくい現実も出てくる。
この解消のためには、ワーカーも客も、事前にコンドームをつけられる店かどうかを確認できるようにすべきですが、売防法が障害になります。ここが解決できないまま、「コンドームをつけましょう」とキャンペーンをしたところで、そう簡単に行動は変わらない。
それよりも検査をしやすい環境を作ることだと私は思ってます。この調査によると、今までHIVの抗体検査をしたことがあるのは24.6パーセントにもなります。思っていたよりもずっと高いのですが、日本人の検査体験率がわからないので、これも評価しようがない。
これまでに何らかの性感染症にかかった経験者は25.2パーセントですので、なんのことはない、性感染症にかかった人が、ついでにHIV抗体検査をしたにすぎないとも思えます。実際には、エイズが問題になる以前に淋病などに感染している人も含まれているため、症状があったから検査したわけではない人も含まれていることが想像できますが、「自覚症状があったために検査したが、なんの病気でもなかった」という人も入っていて、正確なところはわからんです。今後、これを元にさらにさまざまな数字を出していくことでしか実態はわからんということになりましょう。
それはそうと、私が注目したのは、サンプルの年齢分布です。「週刊ポスト」の他のアンケートともほぼ合致しているそうです。アンケートを書く人と読者は必ずしもイコールではなく、定年退職した世代の方が暇でアンケートを書き込む傾向があるとも言えて、実際の読者はこれよりもう少しは低い可能性がありますが、おそらくそう大きくは変わらないでしょう。
つまりは、「週刊ポスト」の読者は8割が40代以上で、読者の平均は50代だと思ってよさそうです。かつて「週刊ポスト」は30代のサラリーマン雑誌だったとされていて、今も仮想読者は30代だと思うのですが、現実には20歳くらい高くなっている。管理職の雑誌です。
もちろん、これは他の週刊誌でも同様で、「週刊朝日」であろうと「アサヒ芸能」であろうと、似たような年齢構成でしょう。「週刊新潮」だともっと高いのかな。週刊誌はすべて高年齢者の雑誌と化している。つうか、ほとんどすべての雑誌がそうなってきている。
だから「雑誌は危機」「出版は危機」ってことですが、この危機は雑誌を買い、雑誌を読む習慣が世代的に消滅していることで生じてますから、危機を脱することはありえない。この先、凋落していく以外に道はないのです(続く)。
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