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[第5章●録音データのデジタル化道] 1… 録音データの取り扱い |
[2003.08.13登録] |
石田豊 |
私はライターだから、時としてインタビュー原稿を書くことがある。座談会などの内容を文章に起こさなければならないこともある。 その「元」になるのは取材メモと記憶と録音テープだ。もちろんテープがいちばん大事ということは言うまでもない。 録音テープと書いたが、その「テープ」は各種さまざまだ。私自身は近ごろはポータブルMDレコーダを使っているが、以前はマイクロカセットレコーダを使っていた。カセットテープを使っている人も多いし、最近ではICボイスレコーダも増えてきた。 こうした機器で録音された「テープ」、つまり「メディア」だね。このメディアの再生環境と保存には、長い間漠然とした不満を抱え続けてきた。この不満の解消のための足がかりができつつあるので、報告したい。 と、書き始めると、「ライター向け」に限定されるワザのように聞こえるかもしれないが、あながちそうでもないだろう。録音メディア→文章という作業はライターだけのものではない。会議や講演を文章化する機会のあるデスクワーカーはけっして少なくないはずだ。もちろん編集者はライターの眷族みたいなもんだから、言うもさらなりってこと。 まずは、どのような不満を感じていたのかということを説明しなければなるまい。 録音メディアから文章を起こすには、ざっくりふたつのやり方がある。ひとつはよく「テープ起こし」と呼ばれる作業で、とにかく全文を逐語的に文章にするというもの。もうひとつは録音全体から内容を取捨選択して決められた量の原稿に再構成していく作業である。 どちらにしてもメディアを繰り返し再生することになる。全文起こしの場合なら、少し進めては停止し、その部分を文章化し、元のところに巻き戻して再確認、補筆を行い、ふたたび停止。この作業をメディアの最後まで繰り返していく。再構成する場合は(私のやり方では)、最初通してメモをとりながら聞き、構成を考え、その構成に応じて再度部分を聞き直して原稿を作成していく。短期記憶力が皆無に近く、かつ要領が悪いせいか、何度も何度もテープを聞くことになる。 どのような再生機器にあっても、再生、停止、巻き戻し、早送りのスイッチはメカニカルなものだから、原稿を書きながら、そうしたメカニカルスイッチを何度も操作することになる。テープ起こしの専門家は足踏み式のスイッチを使っている人もある。つまり作業中に両手を自由にしておきたいからだ。私もそういうのが欲しいと思ったこともあったが、作業の頻度を考えると投資は大きすぎる気がして、結局は入手していない。 巻き戻し、早送りはテープカウンタを見ながらではあるが、ほぼカンで行わなければならない。行きすぎることも多く、実にイライラする。MDはデジタルだからいいだろうと思われるかもしれないが、通しでベタっと録音したものは、デジタルであろうとアナログであろうと同じこと。頭出しすらできやしない。 録音の流れの全体が視覚的に把握でき、そこに「しおり」を挟み込み、任意の区間を直接指定して再生することはできないものか。これが最初の不満である。メカニカルスイッチを試行錯誤的になんどもなんども操作するのではなく、もうちょっとラクに取り扱えないか、ということ。 原稿を書いているのはコンピュータ上であるから、どうせならコンピュータから再生のコントロールができないものか、ということでもある。そうしたらある意味で両手も自由になる。 どんなインタビューでも一部無音部分とか、本筋と関係ない部分とかも多く含まれる。たとえばインタビューイがひょいと立ち上がってちょっと離れた書棚から資料を取り出そうとする。「あれ、このへんに置いたはずなんだけどなあ」ごそごそ「あ、これかな」ごそごそで5分間なんて具合。ここは再生時に飛ばすのだが、初回再生時にそこをごそっとカットしてしまえれば、都合がいい。こういうこともカンタンにできればいい。 できれば再生のピッチも可変でありたい。会話時の人間の音声はけっこう間延びがしているのが普通だ。ちょっと早送りめに再生ができれば、聞き取り時間が短くてすむ。逆にキー入力のスピードに合うようにゆっくり目に再生させて、聞くと同時に入力ということが可能であるような速度にできるのが便利である場合もあるだろう。 再生環境ではこのような不満を持っていた。 それに加えて、まったく別の範疇に属する不満もあった。それはメディアの保存ということ。 テープにしてもMDディスクにしても、その保管はずいぶん面倒だ。小さいし紛失・散逸しやすい。そのためもあって、私はずいぶん前から、テープの保管なんてことはまったく考えないできてしまった。原稿を完成させればテープは不要。そんなもったいない習慣で過ごしてきた。 今回の原稿テーマからは外れているため原稿化しなかった部分にもかけがえのない情報が含まれている場合が多い。別のシゴトをしていて、あ、これに関連すること、あの時の取材で聞いたんだけどなあ、と思い出すことがよくある。録音データがちゃんと保存してあれば、そういう場合のニンマリ感はものすごく大きいことだろう。 昨今は写真もデジカメで撮ることが多くなった。デジカメで撮った写真は原稿データと一緒にフォルダにいれてデジタルデータとして保存しておける。録音データもこのように一緒に保存しておければいいのに。そう思っていた。 以上のような「漠然とした」不満を抱き続けてきたのだが、日常にかまけて、その不満を解消するための具体的な思考や行動は取ってこなかった。その不満解消への光明がフラッシュバルブの閃光のように突然きらめいた瞬間があった。 そのきっかけを与えてくれたのが(またしても、というべきか)POT出版の沢辺さんだった。 沢辺さんがくれたきっかけについては、次回、録音のハードウエアについての議論の中で述べることにしたい。 |
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*匿名*さんより [2005-02-28] |
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