障害者の親亡き後プランパーフェクトガイド 障害のある子をもつ親が安心して先立つためにも
希望小売価格:2,200円 + 税 (この商品は非再販商品です)
ISBN978-4-86642-026-4 C0036
A5判 / 328ページ /並製
[2024年04月刊行]
印刷・製本●シナノ印刷
ブックデザイン 山田信也
内容紹介
「親亡き後」を考えることは、自分たち両親が健在のうちに、障害のあるわが子を一人立ちさせることにもつながります。
弁護士であり、 重度知的障害児の父親である著者が 自身の親亡き後対策も例に挙げながら解説。
具体的な計算式・今ある制度の活用法で わが家の「いくらで」「どうやって」がわかる。
障害者の家族はもちろん 健常者の老後対策にも直結するアドバイス。
7つのステップで「何からどうすれば?」を迷わない!
目次
はじめに……13
■ステップ1
障害者の収入には
何があるのか……19
障害者のおもな収入源……19
障害基礎年金による収入……20
障害年金とは何か……20
障害基礎年金はいくらもらえるのか……21
障害基礎年金をもらうための要件……22
加入要件………23
納付要件……23
障害の程度要件……24
障害基礎年金を申請するには……25
申請に必要な書類……26
なぜ医師の診断書が重要なのか……26
適切な等級判定を得るために……29
深掘りコラム●転院する際にはカルテのコピーを入手しておきましょう……31
深掘りコラム●障害基礎年金には例外的に所得制限があります……32
深掘りコラム●所得制限を回避するには確定拠出年金などの利用を……34
就労による収入……36
障害者雇用ではいくらもらえるのか……36
福祉的就労ではいくらもらえるのか……37
手当による収入……38
特別障害者手当……39
在宅重度障害者手当……40
生活保護……41
生活保護はどんな制度か……42
生活保護費はいくらもらえるのか……45
障害基礎年金は生活保護を下回る……46
生活保護を受けるときの注意点①「収入」が増えれば生活保護費は減らされる……46
生活保護を受けるときの注意点②2,000万円以上の不動産……50
生活保護のジレンマ――私が公的機関に提言したいこと……51
「親に収入があると生活保護がもらえない」は大きな誤解……53
■ステップ2
障害者の支出には
何があるのか……57
住まいと食事の支出……58
障害者支援施設……58
障害者支援施設とは……58
障害者支援施設で暮らす場合、何にお金がかかるのか……59
障害者支援施設への寄付金……61
深掘りコラム●「法定代理受領方式」のメリットとデメリット……62
グループホーム……64
グループホームで暮らす場合、何にお金がかかるのか……65
グループホームに支払う金額はいくらか……66
障害者の一人暮らし……68
その他の支出……69
医療費……70
通信費……71
交通費……71
趣味交際費……71
保険料……72
成年後見人などへの報酬……72
■ステップ3
親亡き後に残す
金額の算出……75
①子の収入の月額を出す……75
わが子に収入がある場合……75
わが子にまだ収入がない場合……76
障害基礎年金による収入を予測する……76
就労による収入を予測する……77
手当による収入を予測する……77
生活保護による収入は加味しない……78
収入全体を予測する……78
著者の場合……79
②子の支出の月額を出す……79
障害のある子どもが独立している場合……79
障害のある子どもが親と同居している場合……79
生活水準を予測する……80
生活水準と住まいをかけ合わせる……82
支出全体を予測する……85
③親亡き後の期間を出す……85
親の平均余命の出し方……85
子の余命の出し方……86
親亡き後の期間を計算する……87
著者の場合……87
深掘りコラム●知的障害者や精神障害者の寿命が、
簡易生命表で求められない理由とは……87
親亡き後に残す資金を計算する……89
著者の場合……89
深掘りコラム●資金の目安だけ知りたい方は、
4パターンのサンプル表をご覧ください……90
■ステップ4
親亡き後の資金を
どう貯めるか……93
親自身の老後資金はいくら残せばよいか……93
支出(税金)を減らす……94
支払う税金の金額はどのように決まるのか……94
所得控除とは何か……95
人的控除とは何か……96
障害者控除とは何か……97
その他の控除とは何か……99
小規模企業共済等掛金控除……99
深掘りコラム●「小規模企業共済等掛金控除」以外の
その他の控除のデメリットとは……103
深掘りコラム●「所得」と「収入」の違いを知っておきましょう……104
収入を増やす……106
特別児童扶養手当とは何か……107
特別児童扶養手当の所得制限……107
所得制限を回避するには……109
深掘りコラム●特別児童扶養手当の申請の流れを押さえておきましょう……111
■ステップ5
親亡き後の資金を
どう残すか……115
財産を残す5つの方法……115
財産を残す方法を決めずに親が亡くなると……116
相続の基礎知識……118
「相続人」とは誰のことか……119
「誰にいくら相続する」はどうやって決まるのか……120
法定相続分……120
遺留分……121
遺産分割……123
家庭裁判所の調停と審判……125
財産を残す方法①遺言……126
遺言とは何か……126
メリット 誰に・何を・どれだけ残すか指定できる……126
デメリット 「毎月〇万円ずつ」は渡せない……126
遺言執行者の指定が肝心……127
遺言書は「基本の備え」と考えて……128
深掘りコラム●「どちらが家族の現状に適しているか」で、
作成する遺言の種類を選びましょう……129
財産を残す方法②信託……132
信託とは何か……132
メリット①自由度が高く家庭の状況に合わせられる……132
信託のしくみ……134
受託者になれる人は?……135
メリット②受益者(障害のある子)が契約手続きに関与しない……136
信託財産とは何か……137
メリット③受託者の監督・監視者を契約で設定できる……138
深掘りコラム●信託にはさまざまな商品やサービスがあります……139
財産を残す方法③贈与……140
贈与とは何か……140
贈与のデメリット……141
デメリット①障害者自身の署名押印が必須……141
暦年贈与(生前贈与)……141
デメリット②暦年贈与(生前贈与)の場合、障害者自身の財産が増えてしまう……143
デメリット③死因贈与より遺言のほうが汎用性が高い……144
贈与のメリット……144
負担付き贈与の場合、障害のある子どもの世話を義務に課せる……144
著者の場合……146
財産を残す方法④生命保険……148
保険のしくみ……148
保険の登場人物……148
保険料と保険金の関係……149
保険の種類……149
生命保険とは何か……150
損害保険とは何か……151
傷害疾病定額保険とは何か……151
生命保険のメリットとデメリット……152
メリット①死亡保険金は「遺産」に含まれない……152
メリット②死亡保険金は分割で受け取れる……153
デメリット 障害者自身が手続きをおこなわなければならない……153
財産を残す方法⑤障害者扶養共済……154
障害者扶養共済とは何か……154
障害者扶養共済の加入要件……155
障害者扶養共済のメリット……156
メリット①公的制度で安心……156
メリット②掛金が安い……157
メリット③生活保護支給のうえで「収入」としてみなされない……158
メリット④掛金全額の所得控除……160
メリット⑤親が早く亡くなった場合に備えられる……160
メリット⑥もらえる年金は非課税……161
メリット⑦「年金管理者」の指定ができる……161
障害者扶養共済のデメリット……162
デメリット①実質的に掛け捨ての生命保険……162
デメリット②掛金総額 >年金総額となるリスク……165
デメリット③掛金の引き上げのリスク……166
著者の場合……168
5つの方法のうちどれを選べばいいのか?……169
深掘りコラム●障害者扶養共済の加入は掛け金の総額が、
安くなるタイミングをねらいましょう……171
■ステップ6
親亡き後の財産を
どう管理するか……175
財産管理のサポート①日常生活自立支援事業……176
日常生活自立支援事業とは何か……176
日常生活自立支援事業を利用するには……177
財産管理のサポート②成年後見制度……178
成年後見制度とは何か……179
法定後見と任意後見は何が違うのか……179
法定後見の3つのタイプ……181
3タイプの定義……181
3タイプの具体例……182
3タイプ別の権限……183
成年後見人などになれるのはどういう人か……186
成年後見人などに「なれない」人……187
成年後見人などに「なれる」人……188
成年後見人などを監督する人……189
監督人とは何か……189
任意後見監督人……191
「親族は後見人になれない」は明確な誤り……191
成年後見人などはどんな仕事をするのか……196
成年後見人の仕事①財産管理……197
成年後見人の仕事②身上監護……199
成年後見人の仕事③契約などの取り消し……200
成年後見人の仕事④死後事務……201
保佐人はどんな仕事をするのか……202
補助人はどんな仕事をするのか……204
任意後見人はどんな仕事をするのか……204
成年後見制度の利用にはいくらかかるのか……205
基本報酬と付加報酬……206
任意後見人の報酬はいくらか……206
成年後見の利用を助ける助成制度……208
成年後見制度を比較して検討する……211
法定後見と任意後見の比較……211
日常生活支援事業と成年後見制度の比較……214
信託と成年後見制度の比較……215
成年後見制度の問題点……218
成年後見制度利用者からの不満……218
著者の場合……220
深掘りコラム●法人後見はなかなか増えないのが現実です……222
■ステップ7
親亡き後の相談先と
ステップの実行……227
「親亡き後」を誰に相談すればいいか……228
障害福祉の専門家や専門機関……228
社会福祉士……229
精神保健福祉士……229
公認心理師……230
基幹相談支援センター……231
障害福祉の適切な相談先は……232
法律・司法の専門家や専門機関……233
弁護士……233
司法書士……234
行政書士……235
税理士……235
社会保険労務士……236
公証人……236
家庭裁判所……237
法テラス(日本司法支援センター)……237
法律・司法の適切な相談先は……239
「親亡き後についての相談」とは何か……240
ステップ1 ~ 6の実行……242
著者の場合……242
ステップ1 収入の予測をする……242
ステップ2 支出の予測をする……243
ステップ3 親亡き後に残す金額を計算する……244
ステップ4 親自身の老後資金をどう貯めるか決める……245
ステップ5 親亡き後の資金をどう残すか決める……246
ステップ6 親亡き後の資産をどう管理するか決める……247
■終章
障害のある子どもの
自立に向けて……251
就労の支援……252
福祉的就労ではどんな支援が受けられるのか……252
就労移行支援……253
就労継続支援(A 型・B型)……254
就労定着支援……256
住まいの支援……257
障害者支援施設……257
障害者支援施設の概要……257
障害者支援施設に入所するには……260
グループホーム……261
グループホームの概要……261
グループホームは全部で3種類……262
一人暮らし……263
公営住宅のメリット……264
公営住宅のデメリット……265
UR賃貸住宅のメリット……266
UR賃貸住宅のデメリット……266
一般賃貸のメリット……267
一般賃貸のデメリット……267
将来の心配のない暮らし方はあるのか……268
部屋探しのサポート……268
住宅入居等支援事業……269
住宅セーフティーネット制度……270
一人暮らしを続けるためのサポート……271
居宅介護……272
重度訪問介護……274
自立生活援助……275
死後の事務のサポート……277
死後の事務にはどんな課題があるのか……277
親の死後の課題……277
障害者本人の死後の課題……279
人が亡くなった後にはどんな手続きがあるのか……280
障害をもつわが子の死後を誰に任せればよいか……284
施設に入居または入院している場合……284
一人暮らしの場合……284
親自身の死後を誰に任せればよいか……285
死後事務委任契約とは……286
■あとがき……289
わが家の「いくら」がわかる計算シート……293
用語解説……297
巻末資料……303
前書きなど
●はじめに
・「親亡き後に備える7 つのステップ」 はどのようにして生まれたか
私には、重度知的障害の子どもがいます。
3 歳になるころ、主治医から診断が下されました。
診断が下されるまでの私は、わが子の発達の遅れから目を背けていまし た。
知的障害であれ発達障害であれ、3 歳になるまでは確定診断が出にくい と聞いていましたし、健常児を育てる親御さんの「うちの子どもも、言葉 が出るのは遅かったから大丈夫だよ」などのはげましの言葉にすがったり もしていました。
1 歳半検診の前から発達の遅れを心配し、いろいろと動いている妻の姿 を見ながらも、わが子の障害に向き合うことを避けていたのです。 このような私も、子どもが 3 歳をむかえるころには、ようやくわが子の 発達の遅れを受け入れるようになりました。主治医の確定診断が出たのも ちょうど同じころです。 それからは療育手帳や特別児童扶養手当の申請、障害者扶養共済の申し 込みなどの手続きを一気におこないました(児童扶養手当や障害者扶養共済 については、のちに詳しく紹介)。
わが子の障害から目を背けることができなくなった私が真っ先に考えた のは、「私たち両親が死んだあと、この子はどうやって生きていくのだろ うか ?」ということです。 この問いに対する答えを求めて、障害者の親亡き後に関する書籍、セミ ナー、インターネットなどで情報を集めました。
その結果、障害者の親亡き後の備えのために役立つ法制度がいくつかあ ることがわかりました。これらの法制度については弁護士という職業柄、 すぐに理解できました。
しかし、いくら情報収集をしてもよくわからなかったことがあります。 それは、次の 2 点です。
(1)私たち親が死んだあと、本人が亡くなるまでに、どれくらいお金が
必要なのか。
(2)障害者の親亡き後の備えは、何から手をつければいいのか。
障害者の親亡き後に関するセミナーや講演の質疑応答で、私と同じよう な疑問を講師に投げかけている人をよく見かけました。ですので、私のよ うな疑問を抱いている人は決して少なくはないのでしょう。
調べてもわからないのであれば、自分で考えるしかありません。その結 果として生まれたのが、本書で紹介する「障害者の親亡き後に備えるため の 7 つのステップ」です。本書は、私が抱いた 2 つの疑問に対する、私な りの回答です。
具体的には、次のようなステップとなります。
(1)障害者の収入には何があるのかを明らかにする
(2)障害者の支出には何があるのかを明らかにする
(3)障害者の親亡き後に残す金額を算出する
(4)障害者の親亡き後の資金をどう蓄えるか決める
(5)障害者の親亡き後の資金をどう残すか決める
(6)障害者の親亡き後の財産どう管理するか決める
(7)障害者の親亡き後のプラン(1 ~ 6 のステップ)を実行する
先に「弁護士という職業柄、親亡き後に役立つ法制度についてはすぐに 理解できた」と書きましたが、反対にいうならば、わが子の存在がなけれ ば障害福祉に関する法制度について、ここまで詳しくなることはなかった だろうと思います。 弁護士を生業にしている者ですら(もともと障害福祉を専門にしていない 限りは)そうなのですから、いわんや専門家でもない方にとっては、法律 や制度を自分で調べて理解するのはハードルが高いことだろうと思いま す。
そのため本書では、制度の難しい言いまわしや、法律の条文をそのまま 引用することは避け、私自身の言葉で言い換えたりかみくだいたりしなが ら説明するように努めました。法律の条番号も基本的には記載していませ ん。
一部、読者のみなさんの参考になるだろうと思ったものについては、法 律の要旨を掲載したり、条番号や資料名を記載したりしています。
・障害をもつ子の親は、
死ぬまで 「障害者の親」 でいなければならないのか ?
ここまで、7 つのステップが生まれたきっかけについてお話ししまし た。 本書全体を通しての私の考え方についても、まえがきでふれておこうと 思います。
障害をもつ子どもを育てる親御さんからは、
「わが子が亡くなった後に死にたい」
「子どもより一日だけでいいから長生きしたい」
という声を聞くことがあります。私の妻も似たようなことを言っていました。
まさにわが子の「親亡き後」への不安・心配からの言葉でしょう。私も同じ立場として、そう思ってしまう気持ち自体は理解できます。
しかし同時に、違和感も覚えるのです。
これが、健常者の子どもをもつ親だったらどうでしょうか。
おそらく「子どもが亡くなった後に死にたい」と思う人は少ないと思います。
むしろ「子どもが一人前になって、自分の力で生きていけるようになるまでは死ねない」と考える親が一般的だと思います。健常者の親たちは、子どもを死ぬまで世話し、面倒を見るという考えを前提にしていないから
です。
つまり、一人の子どもの親であるという立場は変わらないのに、たまた まわが子が障害をもって生まれてきたというだけで、障害者の親たちは死 ぬまでわが子の世話をし、面倒を見ることが一般的にもまかり通っている し、本人たちの中にも当然だと思っている方がいるということです。 これは、とてもおかしなことではないかと私は思います。
私は、自分が死ぬまで「障害者の親」としてわが子を世話し、面倒を見 るという未来を望んではいません。 私たち親がいなくても、うちの子はなんとか人並みに生きていけそうだ と安心して死んでいきたいです。 そしてできることなら、自分が元気なうちにわが子の世話や介護から解 放されて、第二の人生を妻とともに楽しめたらと思っています。
こうした未来をただの夢物語で終わらせないためには、親の手をかりな くても子どもが生きていける準備をととのえなければなりません。 そのために必要なのが法制度の活用です。「親亡き後」を考えるという のは、自分たちが死んだ後の話だけではなく、自分たちが生きているあい だに子どもを一人立ちさせることにもつながるのです。
本書では、ステップ 1 からステップ 7 をとおして、障害をもつ子どもが 自立して生きていけるための法制度を取り上げて、そのメリット・デメリ ットを検討していきます。 制度の利用方法などの細かい情報や、対象と
なる読者が限られる話題は「深堀りコラム」にまとめました。 また★ページからは計算シートを掲載しています。みなさんのご家庭の 親亡き後に必要な金額がいくらかを具体的な計算式で導き出してながら、 親亡き後の準備について考えていきましょう。
さらに、各ステップの結びには参考としてわが家の例を挙げ、さまざま な法制度の中からわが家に適しているものは何か、なぜそれを選んだかを 解説し、プランの立て方を示しました。本書が法制度の理解だけではな く、具体的にどう現実に落とし込むかという点でも役立つものとなればう れしいです。
そして願わくば読者のみなさんが、健常者の親と同様に、わが子が成人
をむかえたら「障害者の親」を卒業し、親は親自身、子どもは子ども自身
の人生を歩んでいく未来を思い描けるようにと思います。本書がその一助
になれば幸いです。
●あとがき
本書でふれられなかった今後の課題
障害者の親亡き後の備えは、いったい何から手をつければいいのか ?
親が死んでから、障害をもつ本人が亡くなるまでに、どれくらいお金が 必要なのか ?
本書は、重度知的障害をもって生まれたわが子を育てる過程で、私自身 がぶつかった 2 つの問いに答えることをテーマに書いたものです。ここま で、計算式や数値を具体的に示しながら 1 から 7 までのステップを踏んで 解説してきました。私の抱いた 2 つの問いについては十分に答えられたと 思います。
また、終章では障害者の自立についてふれ、福祉のサポートを受けなが ら障害者が自分の力で人生を歩んでいく方法についてもお伝えしました。
ただ、本書にはいくつか足りない部分もありますので、今後の課題を明 らかにするためにもこのあとがきでふれておきます。
1 つ目は、障害者の終のすみかになり得る住まいについてです。 信頼できる障害者支援施設やグループホームの見つけ方・入り方は障害 者を家族にもつ家庭にとっては大きな課題です。一人暮らしの場合も、重 度訪問介護事業者の見つけ方・確保の仕方が問題になります。
これらについては、お住まいの地域によって話が変わってくるため、ポ イントをひとくくりにして解説することが難しかったり、現状としてどう するのが適切か確実なことがいえなかったりするため、本書ではふれられ ませんでした。
2 つ目は、ステップ 6 で紹介した法人後見についてです。既存の法人後見では望むサービスを受けられないときに、障害者の親やきょうだいが法人を設立して、望むサービスを自分たちで提供するやり方があるとお話ししました。しかし、具体的な方法については複雑かつ膨大になってしまう
ので、本書で説明することは避けました。
3 つ目は、これは本書に限った話ではありませんが、いくら親亡き後に 関する書籍を読み、セミナーを受けても、専門知識をもっていない人が自 分で適切なプランを作ることは難しいというそもそもの限界があります。 ステップ 7 でも述べたように、専門家への相談は重要です。
私が現在おこなっている情報発信と、 検討中のサービス 本書でお伝えしきれなかったこれらの点については、何か違うかたちで私のもっている知識やアドバイスをみなさんに提供できないか検討しているところです。
以下は、現在私がおこなっている、親亡き後についての情報発信です。
● Web サイト「法律相談 .jp」
● YouTube「障害者家族サポートチャンネル」
先ほど挙げた 1 つ目や 2 つ目の点については、これらをとおして、おい おい情報発信していきたいと考えています。
最新情報を知りたい方は、メルマガ登録またはチャンネル登録をお願い いたします。
また 3 つ目の点をカバーする方法として、現在検討中のアイディアがあ ります。「親亡き後のプラン提供サービス」です。 これは何かというと、情報シートを提出するだけで、親亡き後の備えに ついての最適なプランを提供するというものです。
障害をもつ子ども(またはきょうだい)の世話や介護で日々の生活に追 われている方の中には、複雑な法制度を勉強する時間的・精神的な余裕が ないという人も少なくありません。また、先にも書いたように専門知識を もっていない方が、その家庭にとっての最適なプランをゼロから作ること は難しいです。
そこで、障害者やその家族に関する情報、障害者本人や家族の意向を、 チェックシートや簡単な質問に答えるかたちで記入してもらい、その情報 にもとづいて最適なプランを提供することができればと考えています。 ご自身でプランを立てるにしても、そのあと専門家に相談するにして も、ゼロから考えるより、提供されたプランを叩き台として考えるほうが 効率的です。
まえがきに書いたとおり、私の願いは、将来うちの子が福祉のサポートを受けながら、なんとか人並みに生きていけること。そして子どもが成人したら、できれば自分が元気なうちにわが子の世話や介護から解放され、
第二の人生を妻とともに楽しむことです。
それを実現させるのもまた「親亡き後」の準備であると、読者のみなさんにはここまでの話でおわかりいただけたかと思います。
紹介してきたように、親亡き後を考えるうえではたくさんの法制度が出 てきます。はじめはとっつきにくく感じられると思いますが、それらの法 制度があることを知り、適切に利用することで、障害をもつわが子に自立 の道を歩ませることもできるのです。 もちろん、お子さんが成人したあとも自宅で介護を続けるというのも、 大事な一つの選択です。
それでも、もしも「自分は一生、わが子を介護し続けなければならな い」「障害者の親だから、もう自分自身の人生なんて送れない」と考えて いる方が、「健常者の親と同様に、子育てからの卒業を思い描いてもいい のかもしれない」「子どもが成人したら何をしようかな」と少しでも思え るようになったとしたら、これほどうれしいことはありません。
最後になりましたが、出版を快諾してくださったポット出版の沢辺均さん、編集担当の本多さんと松村さん、沢辺さんとの縁をつないでくださった作家の伏見憲明さん、そして本書が生まれた何よりのきっかけであり、
いつも支えていてくれる妻子に感謝を捧げます。
著者プロフィール
前園 進也(マエゾノ シンヤ)
弁護士(埼玉弁護士会・サニープレイス法律事務所所属)。
1974 年生まれ。2011 年に弁護士登録。わが子が 3 歳の時 に知的障害と診断されて以降、障害分野に特化した弁護士 と し て 活 動 中。
ホームページ(https://legaladvice.jp) や YouTube チャンネル「障害者家族サポートチャンネル」な どで、知的障害児の親である弁護士としての視点から、障 害者の親やきょうだいが知っておきたい法律や制度につい て幅広く情報を発信している。
著書に『誰も教えてくれな い障害者扶養共済』(Amazon Kindle 、2021)。