外道の家 中 【復刻版】
希望小売価格:3,000円 + 税 (この商品は非再販商品です)
ISBN978-4-86642-022-6 C0979
函入 278ページ /函入
[2023年08月刊行]
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内容紹介
月刊バディ2008年3月号増刊でとして発行された『外道の家』中巻を復刊
入婿の寅蔵は新婚初夜に新妻の眼前で義父に犯され、その日から陵辱を受け続ける日々に。
そして家人も次々に陵辱に加わっていく。
寅蔵が無限地獄に陥った外道の家の物語。
2022年度・フランスのPrix Sade賞(サド賞)受賞作。
大地主の美しき一人娘、萩乃は、夫・寅蔵の子を身ごもるが、そこには愛情などひとかけらもなかった。
絶対的な権力を持つ惣右衛門をはじめ、天井裏に潜む妖婆、腹黒い下男、下女の夫婦によって、入婿の立場から性処理の道具へと身を落とされていく寅蔵。
家族からも見放され、逃げることもできず、やがて寅蔵は…。
目次
前書きなど
『外道の家』の頃 〜復刻版あとがきにかえて〜
二〇〇七〜八年にかけて「月刊バディ増刊号」という形で世に出た『外道の家』単行本全三巻、雑誌コードでの出版という特殊性と部数の少なさから、長らく絶版状態であり復刊リクエストも多かった作品を、このたび無事に再出版することができ、待望していた皆さまはもちろんのこと、何より作者自身がとても嬉しく思っています。
何しろ私がゲイ雑誌で長期連載した最後の長編ですし、二〇一〇年にはスペイン語版が、二〇二一年にはフランス語版も出版され、それぞれ現役の単行本でありつつ、フランス語版は二〇二二年度のPrix Sade(サド賞)BD/Manga(コミック)部門も受賞した作品でありながらも、長いことオリジナルの日本語版が入手不可能だったことは、私としてもとても残念かつ心苦しく思っていましたので。
今回の復刊にあたってご尽力くださった、ポット出版プラスの沢辺均さんには、この場を借りて改めて御礼申し上げます。そして、復刊リクエストの声を上げ続けてくださっていた、読者諸氏の皆様にも。
さて、この『外道の家』は「月刊バディ」に、一九九九年から二〇〇七年にかけて連載した長編マンガです。連載期間が八年にも渡ったのは、私からお願いして一回十六ページの隔月連載にして貰ったからです。同誌での前の長編連載『銀の華』が完結した後、すぐに「次の連載を」という依頼はいただいたのですが、当時の私は別雑誌「ジーメン」を立ち上げ、企画編集に参加しながら毎月表紙絵を描き、マンガも連載して小説も書くといった状況でしたので、それらと並行して『銀の華』のように毎月の連載を手掛けることは、もう体力的に限界だったというのが理由でした。
幸いにして「バディ」誌は私の無理をきいてくださり、無事連載がスタートしました。開始にあたって当時の担当編集氏に「何かリクエストとかある?」と訊いたところ、「前の『銀の華』では玉菊という女性キャラが人気だったので、今回も女性を出して欲しい」と言われたことを覚えています。その昔、私がデビューしばらくして「さぶ」誌に描いたマンガで、女性を一コマだけ出したところ、読者から「女を出すな」という抗議の手紙が来たことがあります。ゲイ雑誌を読むことで、現実世界から逃れて男しかいない夢の世界に浸りたい、そういった感覚の方々がいらしたのでしょう。そんな時代を知っているが故に、編集部からの「女性を出してくれ」というリクエストには隔世の感がありました。
しかし前の版のあとがきにも書いたように、私はこのマンガでは「ジャンルフィクションの枠を壊す」ことを目標の一つにしていたので、編集部からのこのリクエストは渡りに船でした。まず試しに萩乃の扱いを大きくして、それが好反応だったので次はお松、そして大刀自様といった具合に、「バディ」誌の気風に合いそうなキャンプ感覚も意識しながら、物語に絡む女性キャラの度合いを、気兼ねすることなく深めていくことができました。
連載期間が八年にも及ぶと、その間にはいろいろなことがあります。最も大きな出来事は、連載も終盤にかかった頃、私が「ジーメン」誌から身を引くことになったトラブルの発生でしょう。当時の私は、ゲイ雑誌を主軸にした日本のゲイ文化、特にマンガやエロティックアートの文化を育てることに人生を賭けるくらいの思いでいたので、身内だと思っていた人物の裏切りによって、ホームグランドだと思っていた雑誌から離れることになるという事態からは、大きな精神的な傷を受けました。具体的に言うと、それから約半年の間、絵が全く描けなくなったほどでした。物心ついてからこのかた、暇さえあれば絵を描き、暇でなくても絵を描いてきた自分だというのに。
しかしそんな状態でも『外道の家』の連載は続きます。この時期の数回分は、無理やり気力を奮い立たせて描いているような状態でした。いま見ると、作者にしか判らない程度かも知れませんが、いささか筆が荒れているのが見て取れます。しかし振り返ってみると、このことも強制的なリハビリのような良い効果があったように思われます。『外道の家』を何とか無事に完結させようと頑張ったことと、その終了後間もなく、パリのギャラリーから依頼されてオリジナル作品を制作し、それを持参してのパリでの初個展が大成功であったことが、自分が再び絵を描けるようになり、先に進むための切っ掛けになった実感がありますので。
ともあれ、このトラブルとそこから立ち直って以降、私の意識は大きく変わりました。ゲイ雑誌やゲイ文化といった「全体」のために何か頑張ろうという気持ちは、それらのために自分が築き上げ、同志として信頼してきた者からも裏切られた以上、きれいサッパリ消え失せました。これからはもっと自分のことに集中し、自分の作品の可能性だけを追い求めようと思うようになりました。
それからの私はゲイ雑誌にこだわることなく、どんな媒体でもお声掛けがあれば、そして自分がそれを面白いと思えば、積極的に活動の場を拡げるようになりました。性器修正の必要がない海外をメインに、個展や企画展、雑誌や画集などに作品を提供したり、全く描いたことのないジャンルのマンガに挑戦したり。初めて一般のマンガ雑誌で、非エロティックなマンガ『弟の夫』を連載したのも、こういった活動の延長線上にあります。その意味でも『外道の家』は、自分の作家活動の一つの節目になった作品であることは確かです。
『外道の家』終了以降も「バディ」誌とのお付き合いは、同誌が休刊する二〇一八年まで続きました。数年に渡る長期連載というのは、もうやりませんでしたが、読み切りや短期集中での長編連載などを続けながら、最後までレギュラーでマンガを描き続けられたのは、嬉しくも懐かしい想い出です。
二〇二三年二月十八日 田亀源五郎
担当から一言
この、『外道の家』〈上巻〉は2007年11月30日、〈中巻〉は2008年1月30日、〈下巻〉は、2008年3月31日に、テラ出版から発行されたものを、ポット出版プラスで復刊した。
それぞれのポット出版プラスからの復刻版発売日は、〈上巻〉は2023年7月15日、〈中巻〉は2023年8月15日、〈下巻〉は、2023年9月15日。
著者プロフィール
田亀 源五郎(タガメ ゲンゴロウ)
ゲイ・エロティック・アーティスト。
1964年生まれ。多摩美術大学卒業後、アート・ディレクターをしつつ、1986年よりゲイ雑誌にマンガ、イラストレーション、小説等を発表。
1994年から専業作家となり、ゲイ雑誌『G-men』(ジープロジェクト)の企画・創刊にも協力。
同時に、日本の過去のゲイ・エロティック・アートの研究、およびその再評価活動を開始。
また、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツなどのゲイ・メディアでも活動開始。
2006年『G-men』企画より離脱。
2015年、『弟の夫』で第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。
2022年、フランスPrix Sade賞(サド賞)
●マンガ
『嬲り者』(ビープロダクト)
『柔術教師』(ピープロダクト)
『獲物』(ジープロジェクト)
『銀の華(上・中・下巻)』(ジープロジェクト)
『PRIDE(上・中・下巻)』(ジープロジェクト発行、古川書房発売)
『田亀源五郎短編集 天守に棲む鬼/軍次』(ジープロジェクト発行、古川書房発売)
『田亀源五郎[禁断]作品集』(ポット出版)
『ウィルトゥース』(オークラ出版)
『君よ知るや南の獄(上・下巻)』(ポット出版)
『外道の家(上・中・下巻)』(テラ出版発行、技術と人間発売)
『髭と肉体』(オークラ出版)
『童地獄・父子地獄』(ポット出版)
『田舎医者/ポチ』(ポット出版)
『筋肉奇譚』(オークス・コミックス)
『銀の華 復刻版(上・中・下巻)』(ポット出版)
『冬の番屋/長持の中』(ポット出版)
『エンドレス・ゲーム』(ポット出版)
『奴隷調教合宿』(ポット出版プラス)
『嬲り者〈復元完全版〉』(ポット出版プラス)
『弟の夫(1〜4巻)』(双葉社)
『僕らの色彩(1〜2巻)』(双葉社)
「GUNJI」(H&O Éditions/フランス)
「ARENA」(H&O Éditions/フランス)
「Goku - L’île Aux Prisonniers (3 volumes)」(H&O Éditions/フランス)
「Racconti Estremi」(Black Velvet/イタリア)
「LA CASA DE LOS HEREJES 3 volumes」(Ediciones La Cúpla/スペイン)
「VIRTUS」(H&O Éditions/フランス)
「VIRTUS」(Ren Books/イタリア)
「The Passion of Gengoroh Tagame」(PictureBox/アメリカ)
「Endless Game」(Bruno Gmünder/ドイツ)
「Gunji」(Bruno Gmünder/ドイツ)
「L’inverno del pescatore」(Ren Books/イタリア)
「Fisherman’s Lodge」(Bruno Gmünder/ドイツ)
「Cretian Cow」(Massive/アメリカ)
「The Contracts of the Fall」(Bruno Gmünder/ドイツ)
「Passion of Gengoroh Tagame: Master of Gay Erotic Manga (expanded edition)」(Bruno Gmünder/ドイツ)
「아우의 남편」(Imageframe 길찾기/韓国)
「Le mari de mon frère」(Akata/フランス)
弟之夫 (臉譜出版/台湾)
Der Mann meines Bruders (Carlsen/ドイツ)
My Brother’s Husband ด้วยสายใยรัก (Dexpress/タイ)
O Marido do meu Irmão (Panini Brazil/ブラジル)
Chồng Của Em Tôi (Sky Books/ヴェトナム)
El marido de mi hermano (Panini Mexico/メキシコ)
El marido de mi hermano (Panini España/スペイン)
●小説
電子書籍Kindle版『デカとヤクザとニンジンと 田亀源五郎小説作品集』(Bear’s Cave)
電子書籍Kindle版『田亀源五郎小説作品集SINGLE 工事現場の夜』(Bear’s Cave)
●評論
『ゲイ・カルチャーの未来へ』(Pヴァイン)
●画集
『日本のゲイ・エロティック・アートvol.1 ゲイ雑誌創生期の作家たち』(ポット出版)
『日本のゲイ・エロティック・アートvol.2 ゲイのファンタジーの時代的変遷』(ポット出版)
『日本のゲイ・エロティック・アートvol.3 ゲイ雑誌の発展と多様化する作家たち』(ポット出版)
「THE ART OF GENGOROH TAGAME」(H&O Éditions/フランス)
Gengoroh Tagame Sketchbook(Massive/アメリカ)