ドキュメンタリー作家 王兵 現代中国の叛史
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ISBN978-4-86642-011-0 C0074
A5判 / 320ページ /並製
[2020年03月刊行]
内容紹介
2007年公開の王兵『鳳鳴 中国の記憶』を3人の批評家が映像を見ながら徹底討論。
和鳳鳴の語りにこめられた中国現代の「叛史」を読みとり、ドキュメンタリー作家・王兵の全仕事を眺望する。
監督が幼少期から最新作までを語るインタビュー、カメラマンのメモ、気鋭の研究者の王兵論、批評も考慮した詳細なフィルモグラフィも収録。
王兵の映像と歴史に対する洞察を知る決定版!
目次
はじめに=土屋昌明
中国全図と王兵監督作品の撮影地
『鳳鳴 中国の記憶』に関連する中国現代史年表
第1部 王兵監督が/を語る
王兵監督インタビュー1 聞き手・文責=土屋昌明
『鳳鳴』『無言歌』から『死霊魂』への思いと映画の可能性
ドキュメンタリー撮影ノート ー 王兵監督との対話から=文平
王兵監督インタビュー2 聞き手・構成=樋口裕子
歴史の空白を描くことから、今、激変する中国を撮る
第2部 『鳳鳴 中国の記憶』を読み解く
映画『鳳鳴 中国の記憶』と中国現代史=山根貞男、土屋昌明、鈴木一誌
第3部 作品の核心に向かって
王兵という〈試し〉ーー『鉄西区』から『収容病棟』まで=藤井仁子
ワン・ビン作品における視線のポリティクスーー見る/見られるの非対称性を巡って=劉文兵
中国のインディペンデント・ドキュメンタリー=中山大樹
記憶の居場所ーー鈴木一誌
第4部 創作の軌跡ーーフィルモグラフィ=山口俊洋、土屋昌明
前書きなど
王兵の大作『死霊魂』が姿をあらわした現在、『鳳鳴 中国の記憶』が王兵の映画創作の核心にあったことが理解できた。いままで『鳳鳴』は、『無言歌』を作るための副産物と考えられていたが、むしろこの三部作の背骨となっていたのだ。この三部作は有機的に関連し合っていて、登場する群像はあちこちに顔を出し、そのたびに各作品のイマージュが観客の脳裏に想起される。北京電影学院の張献民が司馬遷『史記』の群像表現に喩えたが、確かにあれと同じ効果である。鳳鳴の語りに中国現代史が保存されているのと似て、映画『鳳鳴』には王兵の創作のすべてが保存されていると言えるのではなかろうか。本書によって、「中国の記憶」への理解が進むとともに、王兵作品の全貌とまでは言えないにしても、中心像は見えてくるだろう(「はじめに」より)
担当から一言
山形国際ドキュメンタリー祭大賞を3度受賞。カンヌ、ベルリン、ヴェネチアの三大映画祭での受賞も数多い王兵監督、およびその作品を徹底的に解読。
第1部では、2015年6月、2018年8月に行われた王兵監督へのインタビューを収録。
第2部では、王兵監督の初期におけるドキュメンタリーの名作『鳳鳴 中国の記憶』を鈴木一誌を進行役に映画評論家・山根貞男が映画論的な立場から、中国文学者・土屋昌明が歴史的な立場から読み解く。
第3部では、日本映像学の代表・藤井仁子、中国映画の第一人者・劉文兵の他、鈴木一誌、無名時代からの監督の友人でもある中山大樹が王兵監督の作品群を論じる。
第4部では、『鉄西区』(2003年)から『上海の若者』(2019年)までのフィルモグラフを収録。
王兵(ワン・ビン、WANG BING)
一九六七年中国陝西省西安生まれ。一四歳のときに父親を亡くし、当時の政策によって父親の職を継いで建設設計院に勤め、二四歳まで働く。そのあと、一九九二年に瀋陽の魯迅美術学院写真学科と北京電影学院撮影科で学ぶ。瀋陽の国営工場の倒産とそれによる生活の困難を撮った衝撃作『鉄西区』(一九九九─二〇〇三)、反右派運動と文化大革命の時代を生き抜いた女性の証言を記録した『鳳鳴 中国の記憶』(二〇〇七)、そして反右派運動で夾辺溝というゴビ砂漠の農場へ遣られて、辛くも餓死を免れ生還したもと右派の老人たちに取材した『死霊魂』(二〇一八)で山形国際ドキュメンタリー祭大賞を三度受賞。カンヌ、ベルリン、ヴェネチアの三大映画祭での受賞も数多い。二一世紀で最も重要な映画作家の一人。
著者プロフィール
土屋 昌明(ツチヤ マサアキ)
一九六〇年神奈川県生まれ。国学院大学大学院博士課程退学。専修大学国際コミュニケーション学部教授。中国古代文化を研究しつつ中国現代史・映像歴史学にも関心を持っている。編著に『目撃!文化大革命』(太田出版)、『文化大革命を問い直す』(勉誠出版)、共訳書に廖亦武『銃弾とアヘン』(白水社)など。
鈴木 一誌(スズキ ヒトシ)
文海(ブン カイ)
樋口裕子(ヒグチ ユウコ)
山根貞男(ヤマネ サダオ)
藤井仁子(フジイ ジンシ)
劉文兵(リュウ ブンペイ)
中山大樹(ナカヤマ ヒロキ)
山口俊洋(ヤマグチ トシヒロ)