電子図書館・電子書籍貸出サービス 調査報告2015
希望小売価格:1,700円 + 税 (この商品は非再販商品です)
ISBN978-4-7808-0223-8 C0000
B5判 / 136ページ /並製
[2015年11月刊行]
印刷・製本●シナノ印刷株式会社
ブックデザイン 山田信也
内容紹介
電子出版制作・流通協議会(以下、電流協)が、日本図書館協会と国立国会図書館の協力を得て実施した、「公共図書館の電子図書館・電子書籍サービス」調査の2014年版に続く、2015年版。
今年は791館からのアンケートの回答を得た。
集計結果と考察に加え、電子書籍サービスをめぐる今日の状況を論考する。
全国の公共図書館で、電子図書館、電子書籍貸出サービスの状況はどうなっているのだろう。
日米の出版状況の比較と日本型電子図書館サービスのあり方についての考察、電子書籍を図書館で貸し出す法的根拠を聞いたインタビュー、電子書籍サービスのアクセシビリティ機能への期待と可能性、そして角川・講談社・紀伊國屋書店が始めた電子図書館サービスの紹介などを掲載。
目次
まえがき
第1 章電子図書館をめぐる今日の状況
1.1 日米の出版実務の違いから考える電子書籍・電子図書館の課題……吉井順一(IDPF理事/講談社)
1.1.1 日米の出版社のあり方の違い
1.1.2 米公共図書館における電子書籍の導入状況
1.1.3 敵味方という不毛の議論ではない「読書の場」の創造と再生産
1.2 電子書籍を図書館で貸し出す法的根拠……村瀬拓男(弁護士)
1.2.1 紙の本を図書館で貸し出せる法的根拠は?
1.2.2 紙の本と電子の本の法的な違いはなにか?
1.2.3 図書館が電子書籍を貸し出せる法的根拠は?
1.3 電子書籍サービスのアクセシビリティ機能への期待と可能性……野口武悟(専修大学教授)
1.3.1 図書館が寄せるアクセシビリティ機能への期待とその背景
1.3.2 図書館協力者依存モデルの現状と限界
1.3.3 電子書籍サービスのアクセシビリティ機能がもつ可能性
1.4 KADOKAWA・講談社・紀伊國屋書店が始めた、日本電子図書館サービス……山口貴(JDLS)
1.4.1 今年度内に数館が導入予定
1.4.2 現時点でのタイトル数は約6,500
1.4.3 貸出中でも見ることができる試し読み
1.4.4 音声読み上げは著作権者の許諾を得て実施
1.4.5 貸出回数や期間を限定した3 つのアクセスモデル
1.4.6 都度課金モデルで電子書籍の蔵書を増やす
1.4.7 紙の本の1.5 ~ 2 倍の値付け
1.4.8 今後の展望
第2章「公共図書館の電子図書館・電子書籍サービス等のアンケート」の概要と考察
2.1 調査の背景
2.2 調査の目的と方法
2.3 アンケートの主な結果と考察
2.3.1 電子書籍サービスの現況
2.3.2 図書館における「デジタルアーカイブ」について
2.3.3 スタートした「図書館向けデジタル化資料送信サービス」について
2.3.4 電子図書館サービス・電子書籍サービスの現状について
第3 章「公共図書館の電子図書館・電子書籍サービス等のアンケート」[2015 年5 月]集計結果
アンケート質問と集計結果
図書館の電子書籍に関する用語の説明
アンケート配布用紙
参考文献
電流協とは
著者プロフィール
前書きなど
本書は、電子出版制作・流通協議会(以下、電流協)が行っている「公共図書館の電子図書館・電子書籍サービス等のアンケート」をもとに、公共図書館における電子書籍貸出サービスについて、現状と課題、将来展望を取り上げたものである。
電流協では、電子図書館部会(部会長 山崎榮三郎)を中心にアンケート調査を2013年から実施しており、2015年4~5月に実施した調査で3回目となる。本書で扱うのは、この3回目の調査結果である。公共図書館の電子図書館サービスについては、公共図書館の基本調査として知られている文部科学省『社会教育調査』や、日本図書館協会『日本の図書館』においても調査は行われていない。このような中で、第1回となる2013年には、公共図書館360館を対象に、主に「公共図書館での電子書籍サービス」についての検討状況を中心に調査を実施し、折からの電子書籍ブームもあって注目されることとなった。2014年には、全国の自治体が設置するすべての中央館1,352館に調査対象館を拡大し、「電子図書館サービス」及び「電子書籍サービス」について調査を実施した。
2回目となる2014年のアンケート調査の報告に加えて、図書館基幹システムの現状、国立国会図書館、公共図書館、大学図書館における電子書籍貸出サービスの事例紹介、さらにサービスベンダー各社のシステムとサービスの現状を書き下ろし、昨年、『電子書図書館・電子書籍貸出サービス 調査報告2014』を刊行した。お陰さまで、電子書籍貸出サービスの導入を検討する図書館や出版業界、電子出版関係者だけでなく、広く図書館と電子書籍に興味と関心を持つ読者の間で、好評を持って迎えられた。
本書は、昨年の書名を引き継いでおり、その点では年鑑・白書としての役割も期待されるところであるが、次のように内容は一新されたものである。本書の構成は、電子図書館をめぐる話題を取り上げた前半と、2015年のアンケート調査結果の詳細について報告した後半に大きく分けることができる。
電子図書館をめぐる話題については、この一年間で浮かび上がってきた課題や問題点を中心に取り上げた。具体的な内容として、長年にわたり日本と米国の出版実務に携わり、出版ビジネスと電子書籍の現状に明るい吉井氏が、日本型電子図書館サービスのあり方について考察した。また、図書館関係者は、電子書籍を印刷書籍の枠組みでとらえ、あるいはその延長上で理解しがちである。実際には印刷物と電子データという形式自体が異なっているため、それを支える技術の相違に加え、法的根拠が大きく異なっていることを忘れがちである。そこで「電子書籍を図書館で貸し出す法的根拠」について、インタビュー形式で村瀬弁護士に聞いた。
さらに、第1回のアンケートを行ったときに注目されたこととして、図書館では電子書籍に対してアクセシビリティ機能に高い期待を寄せていることがある。そこで編者の一人である野口が「電子書籍サービスのアクセシビリティ機能」について解説した。最後に昨年版が刊行された時点ではサービスを開始していないものの、一昨年の設立発表当初から動向が注目されていた「日本電子図書館サービス(JDLS)」によるサービス紹介がある。[以下略]
「まえがき」より
著者プロフィール
植村 八潮(ウエムラ ヤシオ)
1956 年生まれ。専修大学文学部教授、博士(コミュニケーション学)。
東京電機大学工学部卒業後、同大出版局に入局。
出版局長を経て、2012 年4 月より専修大学教授。
同時に(株)出版デジタル機構代表取締役に就任。
同年取締役会長に就任し、2014 年退任。
著書に『アーカイブ立国宣言』(共著、ポット出版、2014)、『電子図書館・電子書籍貸出サービス:調査報告2014』(共編著、ポット出版、 2014)、『電子書籍制作・流通の基礎テキスト: 出版社・制作会社スタッフが知っておきたいこと』(編著、ポット出版、2014)、『電子出版の構図 ──実体のない書物の行方』(印刷学会出版部、2010 年)など。
野口 武悟(ノグチ タケノリ)
主に、図書館(特に公共図書館と学校図書館)サービスのあり方、情報のアクセシビリティなどを研究している。
著書に『多様性と出会う学校図書館:一人ひとりの自立を支える合理的配慮へのアプローチ』(共編著、読書工房、2015)、『電子図書館・電子書籍貸出サービス:調査報告2014』(共編著、ポット出版、2014)、『新訂 学校経営と学校図書館』(共編著、放送大学教育振興会、2013)など。
電子出版制作・流通協議会(デンシシュッパンセイサクリュウツウキョウギカイ)
関連リンク
●電子出版制作・流通協議会著『電子書籍制作・流通の基礎テキスト』●植村八潮、野口武悟 編著/電子出版制作・流通協議会 著『電子図書館・電子書籍貸出サービス 調査報告2014』