群像の時代 動きはじめたメディアコンテンツ
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ISBN978-4-7808-0220-7 C0036
四六判 / 184ページ /並製
[2015年05月刊行]
印刷・製本●シナノ印刷株式会社
ブックデザイン 山田信也
内容紹介
21世紀、インターネットの登場で情報流通革命が起きた。
利便性が格段にあがり、既存のビジネスモデルに代替性が提供されてきた。
かつてはプロしか持てなかった機材を世界中の誰でも持てるようになり、消費者だった人間が自分でコンテンツを生産し発信する時代の到来である。
インターネットの流通革命は、いまや表現の革命段階に移行しつつある。
インターネットの世界で無数の表現者たちが生み出す無数のコンテンツ。
この群像の時代にメディアやコンテンツビジネス戦略はどう展開されていくのか。
放送、インターネットの海外動向を調査・分析してきた著者が、ここ数年の世界のメディア戦略の動きをレポートし、メディア・コンテンツの行く末を考えた。
目次
【目次】
第1章 はじめに インターネットのセカンドステージ……007
第1節 利便性を提供する「流通革命」……008
第2節 我々の手に戻る物語
第3節 消費者主権 Consumerization……011
第2章 ゲーミフィケーションとクリエイティブ……013
第1節 アドテクノロジーの息詰り……014
第2節 自動化される広告……016
第3節 LINE バブルにハマる嫁 リアルタイムなフィードバック……017
第4節 教育、販促、人事管理に利用されるゲーミフィケーション……020
第5節 ゲーミフィケーションの理論的背景……023
第6節 ゲーミフィケーションを利用したコンテンツ……024
第7節 インタラクティブ性を持った新たなエンタメジャンルを作る……026
第8節 のめりこませる技術……027
第9節 モノの価値ではなく、モノとモノの関係性……031
第10節 マーケティングやクリエイティブの新たな支柱……033
第3章 スマホ写真家の時代……035
第1節 夕焼けにスマホのカメラをONにする……036
第2節 直感的な伝達を表現に昇華させるには……039
第3節 機械による記録とメディアによる記憶……042
第4節 コモディティ化されるリアルタイムと共有……046
第5節 「モーメント」を伝えるのがメディアの役割……048
第6節 センサーが実現する「星新一」の世界……049
第7節 自然が時刻を開放する……051
第8節 開放された時刻、コンテンツはどう売るか?……054
第9節 リアルタイムをセンサーに、人力でモーメントを……056
第4章 ジャーナリズムを担うのはジャーナリストだけじゃない……059
第1節 オープン・データ:政治より行政を変えよう……060
第2節 人口は増えたのに部数は減った米国の新聞……062
第3節 売却される新聞社……063
第4節 アマゾンが買収したワシントン・ポスト社……065
第5節 NPOが担う調査報道……067
第6節 ジャーナリズムは新聞記者だけが担うものではない……069
第7節 ジャーナリズムに寄付する財団……070
第8節 啓蒙の終焉……072
第5章 ゲームが変えるコンテンツビジネス……073
第1節 コンテンツのビジネスモデルは3つしかない……074
第2節 タイム・ワーナーはメディアを売却して黒字が増えた……075
第3節 映像の「流通革命」の終焉でオリジナル制作競争へ……076
第4節 ゲーム機メーカーの憂鬱……078
第5節 作品からキャラクターへ ディズニーの新たな戦略……080
第6節 映画「後」のビジネスが10年で3倍になった……082
第7節 メディア・ウィンドウ戦略からキャラクター・レバレッジ戦略へ……083
第8節 ハードを制する戦略の終焉……086
第6章 ポスト・スマートテレビの衝撃……089
第1節 再定義されるテレビ市場……090
第2節 OSの無料化と機器で設けないプラットフォーム……093
第3節 ルールをチェンジするアメリカの電波政策……096
第4節 通信キャリアの狙うスクリーン戦略……100
第5節 グーグルが仕掛けるブラウザ主導の映像エコシステム革命……101
第6節 クラウドで進むメディアと表現の融合……105
第7章 「時間」と「空間」のメディア論……109
第1節 ソト・メディア……110
第2節 ソーシャルメディア以前に、リアルが多様化してる……111
第3節 リアルタイムを巡るテレビとソーシャルメディアの争い……114
第4節 映像とそれ以外の表現にある送り手の「時間」強制力……115
第5節 手書きのギャグを「間」で表現する……117
第6節 他者の存在を意識させる 時間を内包するコンテンツ
第7節 テレビ三角論 「状況」「情報」を編集する自律的能力……121
第8節 「展示」と「提示」 テレビが三角空間を形成するためには……124
第9節 国境をまたぐメディア……126
第10節 「時間」と「空間」 スマートフォン時代に必要な概念……126
第8章 マルチエンディングからソーシャル・クリエイティブへ……129
第1節 デジタル時代の弘法大師……130
第2節 複製と服装の入り交じる空間で……133
第3節 熟成された記録の表現……136
第4節 コンテンツの絶対的価値と相対化……137
第5節 コンセプトだけが独立する現代アートの世界……139
第6節 作品は誰のものか?……141
第7節 表現をお金に代えるために……145
第9章 メディアは砂場か? 身体的表現の拡大……147
第1節 身体的田植え体験……148
第2節 味を取るか?お金を取るか?……149
第3節 食と映像市場……149
第4節 寄合にみる身体的合意形成……150
第5節 身体的読書部活……152
第6節 自産自消するコンテンツ……153
第7節 マインクラフト 創造性を掻き立てる砂場……154
第8節 砂場的メディアなのか?プラットフォームなのか?……156
第10章 映像の民主化 安価が高価を駆逐する……159
第1節 制約が生むクリエイティブ……160
第2節 ダイジェスト化する思考……161
第3節 実況動画にハマるキッズ……162
第4節 群像時代のテクノロジー……164
第5節 安価な映像が高価な映像を駆逐する……165
第11節 非中央集権化時代のコンテンツビジネス……167
第1節 巨大なクラウド出納簿 ビットコイン……168
第2節 ビットコインをコンテンツビジネスに利用する……169
第3節 大量のコンテンツにモバイル・ペイメント……170
第4節 モバイル・ペイメントの3タイプ……171
第5節 クラウド型スターバックスのモバイル・ペイメント……172
第6節 流通革命段階のモバイル・ペイメント……174
第7節 モバイル・ペイメント拡大とコンテンツ市場……176
第12章 次世代コンテンツビジネスのヒント コンセプトをつなぎ合わせるプラットフォーム……179
第1節 自動化という代替性の洗礼……180
第2節 表現からコンセプトへの移行……180
第3節 プロットを組み合わせるプラットフォーム……182
おわりにーーアジアの片隅で……184
著者プロフィール……186
前書きなど
【おわりにーーアジアの片隅で】
この本は2012年から2014年まで、世界を旅しながらメディアとコンテンツビジネスの行く末について考えたことをまとめたものである。
この15年、新たなテクノロジーはシリコンバレーから生まれ、それを日本に導入すれば、大きなビジネスになった。
だから自分の興味も欧米市場にあった。
しかし、タイムマシンビジネスだけでは飽きがくる。そんなとき、違法コピーや海賊版があふれかえるアジアの現状を目の当たりにした。
著作権と複製技術の独占によるコンテンツビジネスはそろそろ限界がきているのではないか? そう直感した。
とにかく、ビジネスと相容れない表現や作品で商売するにはどうしたらいいのか? 海賊版と正規版の蔓延がシンクロしてしまう世の中である以上、なにか違うことを考えなければならない。自分のなかでもやっと遠く光明が見えたにすぎないが、とにかく考え続けることが大切だ。
そんな考え続ける人にとって本書がなにかのヒントになれば幸いである。
著者プロフィール
志村 一隆(シムラカズタカ)
1991年WOWOW入社、2001年ケータイWOWOW代表取締役。
2007年情報通信総合研究所主任研究員。
放送、インターネットの海外動向の研究に従事。
2014年からヤフー在籍。
【著作】
『明日のテレビ』(朝日新書、2010)
『ネットテレビの衝撃』(東洋経済新報社、2010)
『明日のメディア』(ディスカヴァー携書、2011)