2009-05-11

ポット出版●Googleの書籍デジタル化への集団訴訟和解案について

Googleの書籍デジタル化への集団訴訟和解案について、ポット出版の見解をお知らせします。

■01 和解案と経過など

●「和解案」の内容は、Googleサイトや、日本書籍出版協会のサイトなどに詳しいので、そちらを見てください。
Google ブック検索和解
日本書籍出版協会

●ポット出版は絵と写真を中心とした発行物をのぞいて、現在もGoogleブック検索に書籍を提供して、スキャニング・検索対応の了解を与えています。絵と写真を中心とした発行物を除外している理由は、そのページを見てしまうだけで終わってしまい、販売の増加につながりにくいのではと考えているからです。
さらに、Googleブックサーチが、言葉によって検索している以上、絵と写真ではブックサーチという目的と合致していないとも思っています。
ポット出版は、自社サイトと版元ドットコムサイトでの書誌情報(できるだけ詳細な)ページで、立ち読みとして、そのブックサーチにリンクを張っています。

■02 「和解案」に対するポット出版の考え方

●ポット出版は、ポット出版が発行した書籍の全文を対象にした検索が実現することを歓迎します。

・すべての人が、書籍の書誌情報(タイトル・著者名など)だけでなく、その全文にたいして一定の言葉の存在を検索できることは、その人にとって有用な書籍を「発見」する手だてを格段に増やし、そのことで、社会全体でさまざまな知の共有が前進すると思うからです。
・「発見」する手だてが増えることは、ポット出版の発行物の発見も増やすことにつながり、販売の増加が見込めると判断するからです。
・発見→販売増大は、現時点で可能性があるという範囲だと思いますが、少なくともそうした実験はされるべきだと思います。
・もし実験がおおきな失敗をしたとしたら、その実験から離脱しようと考えています。
・これらは、すべての発行物で一律に判断する意思はありません。例えば辞書のように、発見→販売増大に結びつかない可能性があるものも考えられます。
したがって、基本は提供ですが、それぞれの書籍によって例外的に、提供しないという判断もあり得ます。

●著作権者と出版社に合理的な範囲での経済的な利益を生み出すシステムを組み入れることが、すくなくとも現時点では必要だと思います。

・著作権者には、死後50年などといった一定の条件の範囲で、その使用料という形で経済的な利益を提供すべきです。
著作物が生まれることで、我々の知がより豊富になるし、そのためにはそれらを生み出す著作権者に、経済的な利益があるほうがそれを加速させると思うからです。
・ポット出版もそうした知の豊富化を、出版事業というかたちで実現していると自負しています。従ってその経済的な利益の一定部分を受け取ることができると思います。
また、そうでなくては、事業として成り立ちません。すくなくとも、こうした知の豊富化への対価は不要という合意が社会にできるまでは、事業として成り立たせたいと思っています。

●従って、ポット出版は「和解案」に参加します。
・今回の「和解案」は上記のポット出版の考え方を基本的にカバーしていると思います。
そのため、この「和解」に参加します。

●著作権者が、「和解案」からの離脱を希望し、Googleに通告することも歓迎します。
・ポット出版の発行物は個別に著作権者から販売する権利を受けて発行しています。その発行物=著作物のオオモトの権利である著作権はそれそれの著作権者に帰属しています。
・この著作権者が、「和解案」に合意する意思がない場合は、当然その著作権者の意思が優先されると考えます。
したがって、著作権者が「和解」からの離脱を希望するして、Googleに個別に意思表示することを全く妨げません。
・ただし、ポット出版の現在の契約書では、二次使用・オンデマンド出版・オンライン・二次的使用の運用の委任欄があり、個別に著作権者が選択して委任する覚え書きを付属させています。これらの契約書を取り交わしている著作権者が「和解」離脱を希望する場合はご相談の上、対処を決めたいと思っています。

■03 著者の方へ
・著作権者の方々に、このことに関する個別のご連絡はしません。
・ご連絡に関する事務処理作業が、許容量を超えると判断するからです。
・また、このことが、個別著作物に一つ一つに求められているのではなく、世界の全著作物に求められたものであり、メディアを通じて知っていただく機会があると思われるからです。
・さらに、和解後であっても、検索・表示対象から外すといった申し入れがGoogleに対してできるからです。

■04 参考資料
ポット出版の現行「出版許諾契約書」のひな形
・Googleによるポット出版発行物の掲載状況
ポット出版が提供したもの  59点(2009.5.11月・時点)
Googleがアメリカの図書館などから入手してスキャニングしたと思われるもの 3点
2009年1月5日までに発行したポット出版の発行物 115点

このエントリへの反応

  1. [...] 5月11日(月)に公開したGoogleの書籍デジタル化に関する弊社の見解についてのおしらせ「ポット出版●Googleの書籍デジタル化への集団訴訟和解案について」がIT総合情報ポータル「ITmedia」で記事になりました。 [...]

  2. [...] ポット出版が「Googleの書籍デジタル化への集団訴訟和解案について」を公開しました。ITmediaでも取りあげられて、一方的にGoogleを悪者に仕立て上げようとする勢力に対する異議申し立てとも言える内容で、この問題に一石投じることになりましょう。 [...]