2012-11-06

お部屋2459/風俗産業の危機と久田将義[追記あり]

長いです。用件は最後に書いているので、面倒な人は最後だけ読んでください。
 
 
誰も言ってくれないので、自分で言っておくと、私の読みは大変的確です。このところ、吉原のソープランドが売防法で摘発されたり、大阪のストリップ劇場が公然わいせつで摘発されたり、クラブだけではなく、性風俗関係の摘発も一層厳しくなってきています。ソープランドが売防法で摘発されることも、ストリップ劇場が公然わいせつで摘発されることも、「よくあること」ではあるのですが、その中身を検討すると、警察は一歩一歩着実に新しい領域に踏み込んでいることがわかります。

しかし、そこまで正しく見据えているメディアは皆無かと思います。ほんの一部とは言え、まだしもネットの方がましかもしれない。ネットに書かれていることの大半はいい加減だとしても。

性風俗関係の雑誌が成立していた時代には、書き手の層はそこそこ厚かったのに対して、今は手薄になっているとの事情もあるのかもしれないですが、浄化作戦が進行している頃も似たようなものでした。何が起きているのかをわかっている人がメディアにほとんどいない。とりわけ一般誌は、売れるからエロネタを掲載しているだけで、法についての知識を持っている風俗担当はほとんどいない。関心さえない。

私も風俗ライターはやめてしまったので、現状についてはよくわからないところがありますけど、この辺の分析は、今なおワシのメルマガがもっとも的確じゃないかな。その一部はFacebookにも書いているので、そちらをご覧ください。

今から6,7年前、浄化作戦で歌舞伎町が壊滅した時に、「これから浄化作戦は他の領域にも拡大する」と「ダークサイドJAPAN」(ミリオン出版)すが秀実・花咲政之輔編著『ネオリベ化する公共圏』(明石書房)に書いてました。当時は、全然相手にされなかったわけですが、それがすでに現実のものになってきているのはご存知の通り。

一昨年、アメ村から始まったクラブの摘発に対して、アメ村特有のものとして見る人たちが多かった中、浄化作戦の流れを見てきた私は、「これは所轄の警察の判断でできることではなく、警察庁マターであり、全国に広がる」と予想し、法改正しかないと言ってました。

この時点で、このことを真剣に受け取ってくれた人はほとんどおらず、このブログもほとんど読まれていなかったので、すっかりやる気をなくして、ブログに風営法のことを書くのをやめました。ワシの言うこと、そうも信憑性がないんかとガックリきて、メルマガに引きこもりました。

しかし、あとでわかるのですが、実はLet’sDANCE署名推進委員会の人たちの中に、私が出たネットラジオを聴いていた人やブログを読んでいた人がいました。それが署名にもつながっていくわけで、今になって考えても、私の指摘は正しかったなと。せめてもっと早く教えてくれれば協力もできたし、やる気も維持できたのに。

同時に「ライブハウスもまずいぞ」と言っていたわけですけど、これも半分くらいは現実のものになってきています。興行場法のこともあるので、ライブハウスはライブハウスで別の動きを起こした方がいいと思って、ライブハウスに絞った話をロフトプラスワンでやったりしたのですが、これはまったく広がらず。

興行場法ですぐに摘発されるようなことはないでしょうし、積極的に関心をもつライブハウスが皆無なので、ほっときゃええかと、すぐにやる気をなくしました。オーナーの平野さんを筆頭に、ロフトには関心をもっているスタッフがいるのですけど、あそこは反原連で忙しいので、力が分散するのはよくないし。

今私は何を言っているのかと言えば、「飲み屋の人たちも動け。さもないと店が存続できなくなるぞ」ってことです。クラブに関しては政治家も動いていて、うまくすると、風営法は改正されるかもしれない。しかし、小さいハコのクラブが深夜までできるようになったところで、飲み屋にはなんの関係もない。接待営業についての条文が改正されない限り、店の従業員と客がカラオケでデュエットしただけで摘発、ジックリ話し込んだだけで摘発ということが続きます。

今はまだ警察はクラブやガールズバーの摘発で忙しいわけですが、カウンターの店でも摘発されることはすでに確定ですから、この領域が拡大されていくことは必至です。

せっかく法改正の機運が高まってきて、議員も動き始めているのですから、飲み屋は飲み屋で自分たちの現状を踏まえた法改正を求めていった方がいい。じゃないと、二丁目もゴールデン街も、全国のバーやスナックも死んでしまう。

しかし、飲み屋の人たちにその実感はほとんどなくて、「クラブの人たちがなんかやっている」「一部の悪質なゲイバーやメイドカフェがやられているだけ」「女子中高生を雇っている店が摘発されている」としか思っていないのが現実でしょう。すぐそこまで事態が迫っていても、なお自分たちの問題になっていない。

そこで、先週、飲み屋対象のレクチャーを磯部涼とやりました。店の人たちが来やすいように、時間を平日の夕方にしていたのですが、来ていた飲み屋は2軒だけ。その場で、すでに東京では深夜営業の届けを出している飲み屋に対して、「無許可での接待営業まかりならん」という趣旨の説明会が開かれているることが判明。ということは警察はさらに踏み込む気でしょう。

そのレクチャーの場で「交通費とメシを出してくれればどこにでも説明に行く」と言ってしまったのですが、よくよく考えれば、こんなん、インターネットで法の条文を見て、『踊ってはいけない国、日本』を読んで、報道をチェックすればわかることでありまして、なんでワシがそこまでやらねばならんのかなと悲しくなってきました。

以下を読んでください。

風俗文化研究の第一人者・松沢呉一が解説する「風営法は“善良な市民”の不安をつぶすための法律だ」

タイトルがヘン。「風営法は善良な市民の不安をすくいあげる法律だ」「風営法は善良な市民の不安が後押しする法律だ」とでも言いたかったのかな。私はこんなことを言ってません。編集部がつけたものです。タイトルは編集部の領域なので、文句をつけなかったですけど。

Facebookでリアルタイムに書いてましたが、これは「塞翁が馬」みたいな話。「瓢箪から駒」かな。ようわからんけど、トラブルから始まってます。

浄化作戦の時も、積極的にこの問題に疑問を投げかけていた雑誌は「週刊プレイボーイ」「ダークサイドJAPAN」、あとは風俗誌の一部くらいじゃなかろうか。他の雑誌にも提案しても全然相手にされず、自分の連載に無理矢理入れ込んだりはしてましたが。

その点で、「週プレ」には一目置いていて、今回もまた繰り返しクラブ摘発について取り上げています。その中で、コメント取材を受けていて、この記事はネットに転載されています。雑誌の記事をネットに転用するのはよくある話で、聞いてはいなかったとは言え、それについては文句はない。どんどんやっちゃってくれ。

しかし、そちらで使わなかった内容までを改めてインタビューをしたかのように出されたため、さすがに驚きました。内容のチェックをしていませんから、不正確な記述が出てしまっていました。雑誌の方のコメント料ももらっておらず、どんだけ貧乏ライターを利用し尽くすんだって話ですわ。この件についてはどんどん利用してくれてもいいけど、原稿チェックはさせて欲しい。

誌面に出た時のライターに聞いたら、彼もまったく知らなかったとのこと。編集者によると、素材をウェブ担当に渡していて、そちらで新たな記事にしてしまったようです。担当が別になっているため、最近は、こういうトラブルが多いみたいっすね。メール一本くれればいいんだけどな。

この落とし前として、私は「文章を書き加えさせろ」と要求して、6000文字ほど加えたのが現在出ているものです。前半は『踊ってはいけない国、日本』に書いたことに、クラブの床面積の基準である66平米が戦前からの規定をなぞったものらしいことなど、その後わかったことを加えただけですが(国会図書館の本を片っ端から調べてやっと見つけました)、後半はメルマガで念入りに論じていたものです。「新住民」を敵視したって解決にならんぞと。

ノーギャラでさらに原稿を書いて「週プレNEWS」に貢献するのは理不尽とも言えますが、これは私にとってはとてもありがたい。

そうは思われてないのかもしれないと最近疑うことがよくあるのですが、私はライターです。しかし、風営法についての原稿依頼はこれまでに『踊ってはいけない国、日本』のみです。まったくワシの原稿は求められておらんのです。メルマガ、Facebook、ブログに書いても、すでにわかっている人にしか読んでもらえないので、人目につくところで意見を言うためには、こうでもするしかない。

おかげで、この「インタビュー」はムチャクチャ読まれています。このページに出ているTwitterやFacebookの数字を見ていただければ一目瞭然。雑誌に書くより読まれているでしょう。ここに書けたのでもういいや。満足した。

クラブにもライブハウスにもほとんど行かないし、酒も飲まない私が、求められてもいないのに一所懸命になるのが馬鹿馬鹿しくなりました。飲み屋関係、ライブハウス関係で、あるいはストリップやハッテン場など、公然わいせつ関係で、積極的に行動しようという人が出てきたら協力しますけど、あとはまたメルマガで地味にこの問題を取り上げていくことにして、しばらく私はまた引きこもります。

なんでこうも私はやる気をすぐになくすかというと、浄化作戦で歌舞伎町を潰された時の挫折感が強いのです。メディアの人たちは相手にしてくれず、読者の支持も得られず、みすみす風俗店が潰されていったことの悔しさが今なお拭えない。まったく関心を抱かなかった世間の人々への恨みはなお消えていない。

磯部君が『踊ってはいけない国、日本』で引用しているように、「エロが潰されていいんだったら、おまえらも全部潰されろ」と私は呪詛の言葉とともに風俗ライターを廃業しています。それをなんとかしようとする人たちには、かつての私を見ますから協力できるのですが、いまなお無関心でいる人たち、何もしようとしない人たちを目前にすると、当時無関心だった人々と重なって、「あなた方が望んだ社会が来てよかったですね」って思ってしまう。そんな連中は望み通りに潰されればよい。この揺れ幅がでかいんですよ。

あの時の挫折感が強すぎて私はまっすぐ進めないので、磯部君のような存在が出てきてくれたのは本当によかったと思っています。私はクラブ自体に詳しくないので、当初から「歴史豆知識」担当と自認してまして、クラブを経営している人たち、そこで働いている人たち、利用している人たちが動かないとどうしようもない。利害のある人たちが無関心なのに、利害のない人たちが関心を持つわけがない。クラブは動きが始まってますけど、ライブハウスも同じ、飲み屋も同じです。

磯部君はもちろん、あの時も今もちゃんと記事にしている「週プレ」には敬意がありますし、裁判で闘うことを決意した大阪のクラブ「NOON」の金光さんにも敬意があります。自ら動こうとする人たちのためなら私も協力しますけど、あとは知らんわ。

で、「ダークサイドJAPAN」の編集長だったのが先ごろミリオン出版を退社した久田将義です。「こいつはアホか」と思うことも多々あるんですけど、こういう点については敬意があります。どこもやろうとしないことをちゃんと彼は拾うし、自身、関心も知識もあります。

クラブの摘発についても、久田君は「浄化作戦の流れでしょう」と早くから見ぬいてました。ともにあの時代をつぶさに見ていただけのことはあります。

つうことで、11月11日(日)に、以下のイベントがロフトプラスワンで行われます。いろいろ書いてみましたが、この告知をしたかったのであります。「11.11反原発1000000人大占拠」のあとはロフトプラスワンへどうぞ。久田君に上野の60代の街娼をあてがった話など、バカ話やエロ話がメインになると思うので、風営法や性風俗の規制についての話はあまり出ないと思いますけど。
 
 
久田将義&吉田豪のハードコアトーク〜久田さん退社記念スペシャル!〜

テレビ東京『ゴッドタン』でもお馴染みのゲーセワコンビ・久田将義&吉田豪による激ヤバトークライブ、久々の開催! 今回は久田さん退社記念スペシャル! ゲストに、久田将義の過去をよく知る男たち、久田氏が師と仰ぐ松沢呉一氏と、元直属の部下に当たる和田義彦氏(ワニマガジン)が登場! 今回もニコ生・ustなし! 久田&豪による「ここだけの話」。今回も聞き逃すな!

【出演】久田将義、吉田豪
【Guest】松沢呉一、和田義彦(ワニマガジン)

OPEN 18:00 / START 19:00
前売¥2000 SOLD OUT!/ 当日¥2300(共に飲食代別)

 
 
追記:吉原のソープ摘発についても、「週プレ」に協力しました。「週プレ」には協力しますよ。浄化作戦の時にちゃんと記事を出していたことは忘れないです。でも、ネットに出す場合は、原稿チェックさせて欲しい。さもないと、そこにつけこんでまた書くぞ。

追記2:「週プレNEWS」のトラブルについては、ライターもまったく知らず、あくまで編集部の問題ですので、その旨書き加えておきました。で、これについては、ここにある通り、私はむしろラッキーと思っていて、全然遺恨はないのですけど、ネットに出す旨の説明とそのチェックを希望するかどうかを記入する紙一枚用意して、取材者に持たせた方がいいのではなかろうか。私のように加筆されせばいいという人ばかりではないだろうし。

追記3:前売りはSOLD OUTとなりました。当日券は17:30から整理券配布です。