2012-01-22

お部屋2306/風営法と深夜喫茶

前回書いたように、暇ができたら改めて風営法を調べ直そうと思っていたのですが、あっさり警察庁保安局防犯課編『条解 風俗営業等取締法』(立花書房・昭和34)が出てきたので、ざっと読んでしまいました。また仕事が遅れたぜ。

この本は、この年大きく改正された風営法を解説したもので、やはり深夜喫茶が風営法の対象になったのは、この時の改正です。

しかし、深夜に営業する喫茶店すべてが対象になったわけではなく、喫茶店、バーその他の設備を設けて客に飲食をさせる営業で、「総理府令で定めるところにより計った客席における照度を十ルクス以下として営むもの」「他から見とおすことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの」が対象です。

こういう条項が出てきたことの背景のひとつは、『エロスの原風景』の「ノーパン喫茶」の章に書いてあります。昭和30年前後、「ヌード喫茶」等の各種喫茶店が出てきます。これが今のピンサロにつながると私は見ています。

この改正により、早い時間の営業でも照明を暗くした喫茶店やバーが風営法の対象になり、深夜の違反に対して特に処分が定められたわけですが、この段階でも各号の風俗営業に対して、深夜の営業を制限してはいません。申請を出し、規則を守れば営業をしてよかったわけです。

しかし、この改正以前から、条例によって営業時間に対する必要な制限を定めることができると第三条に書かれています。

この事情もこの本に書かれています。

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風俗営業取締法の制定以前においては、この種の営業に対する規制は、庁府県令によって規制されていたところであり、その内容には、営業の場所、営業時間、営業所の構造設備、営業主や従業者の遵守すべき事項等が含まれていた。営業に関するこれらの実質的制限は、このように庁府県令によって定められていた経緯もあり、また、このような営業のあり方に関する規制は、法律で一律に定めるよりも、各地方の実情に応じた規制を行うことが妥当であるとする趣旨に基づくものである。

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庁府県令は昭和22年末で失効。それを受けて制定されたのが風営法です。その経緯から、また、その方が妥当ということから、営業時間は各自治体の判断に任されたわけです。

今もこの方が妥当だと思うんですけどね。温泉街で接客のあるバーやクラブが朝までやっていたっていいじゃないですか。現実には、風営法の申請を出していない温泉街のスナックで、ママがボックスについて接客をしたところで、警察がすぐさま摘発することはないでしょうけど、警察の裁量が大きすぎる法律はない方がいい。

普段は摘発しないで見逃していて問題が生じないってことは不要な法律であり、申請しなくても摘発されないんだったら申請しない方がよく、律儀に法を守る店がバカを見ます。

これによってチクリも横行します。通報があったら警察も動かないわけにはいかない。警察と業者が癒着する余地も生まれます。

たいていの温泉街は客が減って厳しいですから、地元にとっては、できるだけ金が落ちる仕組みにした方がよく、風営法で一律に営業時間を決めない方が合理的です。

クラブも一緒で、全国一律に深夜営業ができなくする意味などないでしょう。騒音を云々する人たちもいますけど、ガンガン音を出しても大丈夫な場所もあるわけですし、騒音対策をやっているハコがやっていないハコのせいで深夜営業ができないのはおかしな話です。

そもそも騒音は風営法自体で規制するものではなくて条例です。あるいは騒音規制法でしょう。それらによって現に騒音が問題になるような店のみを規制すべきです。それでも規制しきれなかったら、条例を改正すればよくて、騒音が問題になっていない店まで深夜営業をできなくするのはムチャクチャです。

とりあえず、深夜喫茶と営業時間の規制については確認ができたので、ご報告しておきました。そのうち続きを書くかも。