2011-03-30
お部屋2186/チェルノブイリに学ぶ
最後は2186号「日本の予定 33」です。
これ以降の3回は、チェルノブイリの動画を観て、あそこで一体何があったのかを確認し、今の我々が置かれているところを照射しようという試みです。
「このまんまじゃチェルノブイリになっちゃう」と誰かが言うと、「チェルノブイリとは違う」と得意げに突っ込む人たちがいて、頭を抱えましたよ。そりゃ原子炉の型も事故の質も違いますが、「チェノルブイリになる」というのは、たいていの場合、あれだけの大規模事故になって、多数の人が亡くなるのではないかって意味でしょう。チェルノブイリという言葉だけで反応しやがって。犬の条件反射か。
放射性物質の漏出量で言えば、すでに5割とか6割という説まで出ていて、私はその真偽を判断できないですが、チェルノブイリ以上になる可能性があることくらいは想像ができます。飛散の仕方にもよりますから、すなわちそれがチェルノブイリと同じ被害とは限らないですが、それを超える被害が出ないとも限らない。
で、チェルノブイリの映像を改めて観て、実に参考になりました。当時、こういった映像を観て、「ソ連だから」「型が違うから」と納得していたのですが、今見直すとメッセージだらけです。
他の動画も各自チェックのこと。
以下、意味がわかりにくい段落は削りました。では、また私は「マツワル」に戻ります。
なお、今月の購読者募集は予定通り中止にしました。一人として問い合わせがなかったものですから。次回は7月です。
<日本の予定 33>
その後、YouTubeでチェルノブイリ関連の動画を観ています。
以下はドイツのシミュレーション。
なんだっけ、この番組。タイトルは忘れました。この中でも「放射能漏れ」と言っていて、そんなもんよな(注)。それを今まで誰も「非科学的」なんて言ってきませんでした。「放射能性物質」とも繰り返していて、それはどうかと思いますけど、意味上はそんなにおかしくもないか。
これは観なくてもいいですが、続くスイスのドキュメンタリーは観た方がいいです。
「チェルノブイリ原発事故その10年後」
このドキュメンタリーに出てくる人たちの多くも、因果関係を立証できないとして遺棄されています。実際、立証することは難しいケースの方が多く、だから表面化する数字は少ないわけですが。事故当時に作業していた「ヒーロー」たちだっているというのに。
死亡者数から考えて、放射線による死亡だと認定されたのは、急性の放射線障害を発症した人たちだけではなかろうか。散り散りになっているんでしょうから、追跡調査さえなされていないのかもしれない(別の映像によると、登録はあっても、補償が途中で打ち切られたらしい)。
この中に出てくる事故直後の映像はドキュメンタリーとしてまとまっていて、今から20年ほど前、私はこの映画の上映とビデオ化に関わってます。なのにタイトルは忘れちゃいました(追記)。資料もちょっと前に捨ててしまいました。こんなことがあるとは思っていなかったので。
監督はその段階ですでに亡くなっていて、他にもスタッフで亡くなってしたのがいたはず。急性障害に近かったのでしょう。
映像を見るとわかるように、作業をやっている人たちは、さしたる防御をしていないようにも見えます。後に見るように、炉心近くでは鉛のエプロンのようなものをつけてますが、監督よりさらに多量の放射線を浴びているはずです。そりゃ死ぬのもいますよ。
この中に出ている数字では、ベラルーシの被曝地域では、子どもたちの80パーセントが胃の粘膜が萎縮。23パーセントが白内障等で、すでに失明しているのもいる。84パーセント以上の子どもが不整脈。甲状腺癌以外の、これらの障害も因果関係が立証されないということで、なおカウントされていないのかも。
数字が高すぎ、これが正しいのかどうか確かめようもないですが、もうひとつ注目すべき数字が出ています。「1キロ当たり37ベクレル以上は食べてはいけない」と医者が子どもに言っている。実際には食べている子どもが多数いるようなので、さほど厳密な基準ではないのかもしれないですが、それにしてもです。
放射性のヨウ素はとうに消えているので、その数字を基準にできるくらいに放射線の数字は落ちているわけです。
対して、現在の日本の暫定基準はヨウ素で2000ベクレル/kg、セシウムで500ベクレル/kgです。37ベクレル/kgよりずっと高い数字が出ていても、毎日食べ続けて大丈夫だと言われている。
37ベクレルという数字は間違いではないかとも思うのですが、現にさまざまな病気が出ているがために、そういった基準を出しているのかもしれないし、日本だって、ふだんはこんな数字は出ないわけです。うーん。
結局のところ、明確な閾値などないわけですから、どこで線を引くかは任意です。そういう意味ではどこで線を引いても間違ってはいない。ただ、少なくともこの映像の時点でのベラルーシは、今の日本よりずーっと厳しいってことです。
中に、避難したくても金がないという話が出てきます。もともと貧しい国の貧しい地域なのですね。そういう場所では、皮膚に異常が出ているのに「放射能なんてデタラメ」と言う人たちがいる。「そんなものは存在しないのだ」と。典型的な合理化です。ここから出ていけないので、なかったことにしようってわけです。
私も長い間、原発をそういう扱いにしてきました。なかったことにできなくなった今、そのツケが一気に来ています。あの老婆も、そのうちツケを引き受けなければならないのでしょう。
だから、私はあの老婆を笑えない。そうは貧しくなく、そうは無知でもないのに、今この国にもそういう人たちがたくさんいる。個人にツケが回ってくるのは自業自得、しかし、このツケを受けるのは多くの場合、彼らではない。次の世代です。
被災認定者は250万人。事故処理に関わったのは80万人。この人たちがずっとメッセージを送っていたのに、私はなかったことにしていたんだなと今さらながらに思います。
事故処理に当たった作業員の数さえ把握できていないようで、以下の「サクリファィス」では100万人になっています(80万人はWHOの数字らしい)。
こちらでは鉛のエプロンが見えますが、現場の過酷さがよくわかります。数字をごまかされて働かされる。80万人という数字から考えてもわかるように、これは原発労働者たちだけではありません。一般の市民も動員された。おそらく報酬もなく、その場で感謝状をもらっただけ。一時的には感謝されても、あとは厄介者として遺棄されていく。
他のドキュメンタリーと同じ映像が出てきますが、1991年にははあんなに元気そうだったヒゲの男は、1999年にはやせ衰えて、車椅子の生活に。あれで38歳なのか。それでも生きているだけましで、その仲間たちはすべて亡くなっている。
そして、2001年には彼もこの世にいない。生きながらにして細胞が崩壊。急性被曝にも似た症状が時間をかけて起きるようで、同じ症状の人が他にもいる。さらには、彼の娘と息子にも異常が。お父さんがこんなことになってしまって、その心労や貧困もありましょうから、これも原因は何かわからんですけど。
80万人ということはないにせよ、福島原発がでこのまま沈静化したとしても、大量の人が必要です。のべ万単位の人が必要になるのかもしれない。日当40万円がもし本当であるなら、今現在、いかに人が集まらないか、いかに多数の人が必要かってことです。、
すでに入れ替わり立ち替わりですから、その人員を東電は直接は把握していないでしょうし、下請けは責任を負いたくないはず。放射線業務従事者は登録センターに記録が残ると思いますけど、登録センターや電力会社以外の機関が追跡をできるような体制を作っておいた方がいいかも。
仮に放射線によって亡くなる人がいたとしても、どこかの国で「あの悲惨なフクシマでさえも死んだ人はいない」などと言われることになるかもしれない。(続く)
注:「アエラ」もそうでしたが、放射線あるいは放射性物質の意味で「放射能」と言うと、いちいち突っ込むのがいてうざいという話を前に書いてます。もとは誤用であっても、誤用が定着していて、いたるところにこの誤用が使われています。東電も行政も使っています。そのことはテレビ番組を観ればよくわかります。それをまあ鬼の首をとったように指摘する。他に言えることがないんだろゔけど。まずは行政や東電に文句言え。
追記:このドキュメンタリーのタイトルは「チェノルブイリ・クライシス」でした。読者が教えてくれました。