2010-10-16

お部屋2108/東京三世社の歴史的意義(のさわり)

本日、10月16日、阿佐ケ谷ロフトで開かれる「ありがとう東京三世社〜総天然色の夢〜」の宣伝のため、昨日の深夜、ネイキッドロフトに行ってきました。あんまり人が入っていなかったので、効果はなかったかもしれないですが。

自分の企画でもないのに、なんでこんなに一所懸命なのかと言うと、日本のエロ出版を支えてきた存在を見送る会に人が全然来ないと悲しいじゃないですか。

これだけ長い期間、エロライターをやっていれば、たいていのエロ出版社とは多かれ少なかれ接点があるってものですが、すでに書いたように、私は一度として東京三世社と仕事をしたことがありません。あっちはこっちを屁とも思っていなかったのでしょうが、こっちはあっちに敬意を払ってます。その歴史に対してです。

東京三世社と聞いても、唐沢俊一の連載をしていた「熱写ボーイ」のアホな版元としか認識していない人もいるでしょうが、日本のエロ出版史、あるいは日本の出版史において、少なからぬ役割を果たした出版社なのです。

この話は本日のイベントの第一部で詳しく語りますし、以前、「実話ナックルズ」でも書きましたが、東京三世社のルーツは、昭和6年まで遡ることができます(会社自体がつながっているわけではなく、戦後になって雑誌ないしは出版社の権利を買い取ったとの説が有力。なにしろ当時を知る人がもうないので正確なことは不明)。三世社になってから半世紀以上、東京三世社になってからでも40年以上の長きにわたって出版活動を続けてきました。

三世社時代は実話雑誌と大衆小説雑誌が中心で、仙田弘著『総天然色の夢』によると、吉行淳之介が働いていたこともあるらしい。吉行淳之介は長らく新太陽社「アンサーズ」「特集読物」の編集者でしたが(後者は編集長)、新太陽社は経営が苦しかったため、三世社でバイトでもしていたのかもしれない。

東京三世社になってからは、エロがメインとなり、ここから司書房、サン出版が誕生し、さらに三和出版も枝分かれしています。暖簾分けというより、もっと生々しい話だったりするわけですが、今現在のエロ出版の基礎を作った会社と言っても間違いではない。

また、一時は漫画の出版にも力を入れて、エロ漫画だけでなく、ニューウェーブの時代の一翼を担ったことも忘れるべきではないでしょう。

その出版社が店じまいをするというのに、報道したのは新文化くらい。エロに対するこの国の主要メディアの扱いはこんなもんです。

しかし、理論社が会社更生法の適用を申請したニュースはいろんなところに取りあげられていました。さんざん負債を作って迷惑をかけまくり、果ては法に頼ってなお再建を目論む会社に比べ、「関係者に迷惑をかけられない」と会社を整理する東京三世社の方がずっと私は尊敬できます。

ちなみに、理論社は我がライター人生において、一番か二番に失礼なことをした出版社ですから、「ざまあみろ」としか思わないです。

メディアの扱いの違いは、一般の人たちの意識を反映していて、エロ本の出版社が潰れたところでなんとも思わない人がほとんどです。だからこそ「週刊ポスト」あんな記事を出して恥じることはなく、一部の変わり者以外、それを批判することもない。

この世の中、そんなもんだとわかってはいるのですが、せめてワシらだけでも、東京三世社の終わりを惜しみ、その歴史を振り返りたいと思うのであります。

本日の第三部で語られるように、今後、さらにエロ出版社が消えていくことでしょうけど、白夜書房、サン出版、ワイレア出版などの関係者、元関係者が一同に介して語り合うことはもうないのではなかろうか。三和からも誰か呼べばよかったかな。

http://www.loft-prj.co.jp/lofta/
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緊急開催!!!!
「ありがとう東京三世社!〜総天然色の夢〜」

エロ本業界で燦然と輝いていた巨星が堕ちる!!
ありがとう東京三世社!!

全国の同士よ集え!
みんなで大画面で「千人斬り」のベスト傑作選を拝もうではないか!

【出演】
松沢呉一(性風俗研究家、日本で一番エロ本を持っている男)
安田理央(フリー編集者、ライター)
福田光睦 (Modern Freaks Inc.、元ワイレア出版)
福原豊(フリー編集者、元東京三世社)
あらいたつる(細々と漫画&官能小説家、元東京三世社・バイト)
青木隆介(元東京三世社)

他、鋭意交渉中!!
【スペシャルゲスト】
末井昭(白夜書房編集局長)
【司会】
雨宮まみ(ライター)

OPEN18:00/START19:00
前売¥1,500/当日¥1,600(共に飲食代別)

※このイベントは過激な映像の投影が行われますので、条例により18歳未満の方の入場はできません。

当日入場の際に身分証(免許証、学生証、社員証、パスポートなど公共機関が発行する証明書)の提示が必要となります。

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このエントリへの反応

  1. 東京三世社の皆さん、お疲れ様でした。
     ワタシの友人の友人(女)が漫画家で(K・Oとしとく)
     三世社で本を出してもらうことになり編集部を訪れドアを開けたら
     どうみてもヤクザの事務所で、編集さんもヤクザばっかりに見えて
     『ああ、わたしこの部屋を出るときはきっと全員にまわされてズダボロに
     なってでていくんだわ』と覚悟を決めた、という話を聞いたことがあります。
     でも実際はそんなこともなく本も出してもらえて良かった、とか。
     「猟奇王国」も三世社でした。りっぱな本でした。
     ありがとうございました。

  2. エロ本出版社の編集者って、どっからどう見ても、ヤクザっぽくないと思いますよ。チンピラっぽくはありますけど。彼女の願望が投影されたのではなかろうか。
    「猟奇王国」はマイコミックスっていったかな、ハードカバーのシリーズですね。