2010-10-13
お部屋2105/続・「週刊ポスト」掲載「懐かし昭和の『エロス雑誌』大全」のデタラメ
急に決まったイベントなので、人が来るのかどうか不安で、再度プッシュ。
http://www.loft-prj.co.jp/lofta/schedule/lofta.cgi
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緊急開催!!!!
「ありがとう東京三世社!〜総天然色の夢〜」
エロ本業界で燦然と輝いていた巨星が堕ちる!!
ありがとう東京三世社!!
全国の同志よ集え!
みんなで大画面で「千人斬り」のベスト傑作選を拝もうではないか!
【出演】
松沢呉一(性風俗研究家、日本で一番エロ本を持っている男)
安田理央(フリー編集者、ライター)
福田光睦 (Modern Freaks Inc.、元ワイレア出版)
福原豊(フリー編集者、元東京三世社)
あらいたつる(細々と漫画&官能小説家、元東京三世社・バイト)
他、鋭意交渉中!!
【スペシャルゲスト】
末井昭(白夜書房編集局長)
【司会】
雨宮まみ(ライター)
OPEN18:00/START19:00
前売¥1,500/当日¥1,600(共に飲食代別)
前売チケットは阿佐ヶ谷ロフトA下記ウェブ予約、電話予約にて受付中!!TEL:03−5929−3445
※このイベントは過激な映像の投影が行われますので、条例により18歳未満の方の入場はできません。
当日入場の際に身分証(免許証、学生証、社員証、パスポートなど公共機関が発行する証明書)の提示が必要となります。
http://www.loft-prj.co.jp/lofta/reservation/reservation.php?show_number=517
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前回取りあげた「週刊ポスト」10月15日号の特集「懐かし昭和の『エロス雑誌』大全」は、打ち合わせから帰って目立つところだけをピックアップしたものなのですが、改めて読んで改めて呆れました。
本当に薄っぺらなのです。適当に入手した雑誌から適当な記事をピックアップして文字を埋めている。それらの雑誌の位置づけや、その中の記事の意味なんてまったく考えていないでしょう。
これも文字数を稼ぐためなのか、それらの雑誌にはいちいち定価が記載されているのですが、当時の物価がわからないと意味はなく、それより版元を記載すべきです。見たことのない雑誌でも、版元を見ればどういう雑誌かある程度の推測ができますので。
古本屋やネットで、さしたる根拠もなく当てずっぽうに購入した数十冊の雑誌をもとに、エロ出版史や風俗史の知識も愛情もない著者と編集者が、それらについて書かれたさまざまな本に目を通すことなく、購入した雑誌の記事さえロクに読まず、ネットで調べた記述を書き写したものだと断じて間違いないでしょう。
この件についてツイッターで書いたところ、たくさんの反応がありました。ライターの橋本玉泉氏も、私に続いてこの記事を批判し、私が指摘していなかった点も挙げています。橋本氏が言うように、おそらくこの筆者は赤線のなんたるかも理解していないと思います(実際、赤線の定義は難しくて、よく言われる「警察が売春を黙認した地域」というのは厳密にはおかしい。なにしろ売防法ができるまで、売春自体は合法であり、黙認するもなにもないわけで)。
橋本氏は【「深く突っ込まずに軽く触れる」ということと、「思い込みでいい加減なことを書く」というのは、まったく別のこと】とツイートしていて、「週刊ポスト」の記事は後者でさえない。薄っぺらな知識さえない著者が書いたものです。
トルコ風呂の第一号は一般には「東京温泉」と言われていて、拙著『エロスの原風景』で詳しく論じたように、この定説には疑問があります。蒸し風呂としてのトルコ風呂は戦前からありましたし、セックスつきのトルコ風呂さえ「東京温泉」以前からあったことはほぼ間違いない(フランス、上海が有名ですが、日本にもあった記述が残ってます。ただし、詳細は不明)。
これもツイッターで教えられたのですが、「中国網日本語版」に「1951年に日本の銭湯で働く湯女」という記事が出ています。元は1951年のLIFE誌の記事らしい。
ここで紹介されているのは「東温」という「銭湯」。おそらく原文はTOONになっていて、一点目の写真に「東温ニュース」とあるため、「東温」としたのでしょう。これぞ「東京温泉」です。
1階は喫茶室と軽食堂、3階は洋食という文字が見え、女性客がいることも写真でわかります。これ以外に理容室などがあり、バンド演奏なども行われていました。
写真が多数出ているミストルコと呼ばれた女性たちはマッサージをするだけです。つまり、「東京温泉」は今の健康ランドのようなものであり、銭湯という表現は正しい。
この「東京温泉」はオープン前から大々的な宣伝を行い、そのために、のちにトルコ風呂の第一号と誤認されたと私は見ています。
では、「東京温泉」以降、最初にエロサービスを始めたのはどこか。これは『エロスの原風景』には収録されていませんが、以前、「実話ナックルズ」で詳しく書いたことがあります。結論を言うと、「不明」です。
当初トルコ風呂は警察が厳しく指導していたため、エロサービスは厳禁。しかし、やがてミストルコの中から、チップをもらってそのようなサービスをするのが出てくるのは必然。あちこちの店で同時多発的に始まっているので、「週刊ポスト」の記事の百倍の時間と労力を費やしても、どこが起原かを特定するのは不可能なのです。現実というのはわかりやすいものばかりではありません。
いずれにせよ、個人サービスが始まったのは売防法全面施行の前であることは間違いなくて、その点でも、「週刊ポスト」の記事は間違いと言っていい。
ということなのではありますが、「東京温泉」が多数の類似施設につながり、その中から個室でオスペ等のエロサービスをする業態に発展していったことを踏まえると、また、それ以前のトルコ風呂についての詳細がわからないことを踏まえると、「東京温泉」を元祖とするのもやむなしかと思います。あるいは店単位でそれを容認したという意味では、「トルコ風呂のエロサービスが始まったのは売防法以降」とするのも間違ってはいません。
そのような記述であるなら、「深く突っ込まずに軽く触れる」記事としてはありでしょうが、「週刊ポスト」の記事はそれさえも知らないライターが、ネットの記述を劣化させたものとしか思えません。
何度も言いますが、ひどいです。
こういう話は「マツワル」でも今はほとんど書いていないのですが、こういうことを指摘し続けないと、エロをバカにしたメディアが無知な書き手によるデタラメを平然と掲載するので、しばらく「週刊ポスト」の記事を正しく解説していこうかと思わないではないです。すべてが突っ込みどころですから。