2009-07-08
お部屋1898/『エロスの原風景』の裏庭風景 7・宮武外骨とプランゲ、ついでに私(下)
『エロスの原風景』が発売されてから一週間の数字は、アマゾンも書店もまあまあといったところ。半年で千部くらいは売れそうです。2940円という定価を考えると悪くはない。千部では赤字ですが、一年後にはなんとかパート2を出せるかも。
それまでずっとこのシリーズを続けるわけにもいかず、とりあえず、今回で「『エロスの原風景』の裏庭風景」は終了します。まだ書きたいことはあるのですが、このシリーズとは別に書くとします。
宮武外骨とプランゲ、ついでに私(上)
宮武外骨とプランゲ、ついでに私(中)
今に至るまで宮武外骨やプランゲの意思は十分にこの国に浸透しているとは思えず、国会図書館の役割もあいまいにされているところがあります。
すべての出版物をただひたすら収集し、保存するのが国会図書館の役割であり、町の図書館とは意義がまったく違う。少なくとも私はそう信じて疑いません。
対して町の図書館はただひたすら利用者の利便を考えればいい。ニーズのある本だけを揃えておけばよく、扱いや管理を楽にし、耐久性を高めるため、箱もカバーも全部捨てて、ビニールシートをベッタリ貼ればよい。それでも傷んだら捨てればよい。利用者のいない本もためらいなく廃棄してよい。読まれない本を置くのは無駄です。
しかし、国会図書館は、箱やカバー、帯、栞までを含めてすべてそのまま保存すべき場所であり、閲覧も最小限にすべきです。だから館外への持ち出しもできないことになっています。
つまり、同じ図書館でも、両者の役割はまったく違う。180度違うと言っていい。
そのはずなのに、呆れたことに、国会図書館の収蔵本を一般の図書館から借り出すことができるバカげたサービスをやっています。おそらくそのためもあるのでしょうが、国会図書館で調べると、リストにはあるのに存在していない本があります。そんなことをしたら紛失するに決まっています。愚劣です。一体誰がこんなサービスを考えたのか。どうして図書館員たちはこれに反対しなかったのか。国会図書館の意義を理解していないからですが。
また、国会図書館は使いにくいと言っている人たちもよくいます。使いにくくていいのです。保存こそが使命であって、閲覧は二の次、三の次でよく、使いやすさを求めるのなら、一般の図書館へ行けばいいだけです。10年後、100年後にもっとその資料を必要とする人が出てくるかもしれないのですから、できるだけ閲覧させない方がよく、たった1冊の本を見るだけで3日くらいかかってもかまうまい。それでも必要な人たちだけが利用すればいい。
このように、国会図書館でさえも、100年後のために資料を保存する意義を今なお十分に実践しているとは思えません。宮武外骨やプランゲがいかに偉大であったのか。誰も言ってくれないので自分で言っておくと、私もいかに偉大か。ただし、エロに限って偉大。
アメリカ人がすべてを記録、保存しようとするのは、歴史がないがために、記録の重みを強く感じているなんて説もあるようですが、すべてを分類する、すべてを記録する行為は、ヨーロッパにおいても見られます。したがって、とくにアメリカ人に限ったことではないのですが、この欲望はgoogleにも引き継がれているように感じます。
すべての情報をネット上に移植して、誰もがアプローチできるようにしたいとのgoogleの偏執的とも言える欲望がgoogleブック検索を実現させました。
大出版社が出した本、ベストセラーになった本、偉い先生が出した本だけでなく、私の書いたエロ話、グロ話、バカ話の本までが対象です。
これまで政府や軍部が独占していた衛星画像を誰でもがアプローチできるようにしたgoogle earthも、金と暇がある人しか現地で調べられない情報をいながらにして得られるようにしたストリートビューも、私には素晴らしく民主的なシステムだと思えます。
私は以前から「監視カメラに反対しても無駄。監視カメラはどんどんつけるがいい。ただし、その映像をすべて公開せよ」と言っていて、おそらくこの考えはgoogleと通じています。
しかし、googleと相容れないところもあります。エロをケアしていないことです。googleブック検索は、図書館にない本、それこそ、ビニ本や裏本までをスキャンして残して欲しい。一般に公開しなくてもいいので。
本は所有しているだけで金がかかります。そろそろ私も万単位のエロ本を維持することが困難になってきているので、全部スキャンしてくれないかな。そしたら、全部手放せます。
また、YouTubeがポルノを排していることも気に食わない。利用制限をムチャクチャ厳しくしていいので、ポルノも保存すべきです。googleが買収した段階でせめてこの点を改善して欲しかった。
先日、googleの社員に会った時に「今からでも遅くないから、ポルノを投稿できるようにせよ」と要求しておきました。googleの日本支社に決定権はないので、全然ダメだと思いますが。
追記:国会図書館の収蔵品をデジタル化する計画もあるらしい。賛成です。著作権切れのものは全文公開し、それ以外のものは全文検索できるようにした方がいい。検索できるようにすれば、無駄な閲覧が減ります。確実にその記述があることがわかれば、古本で購入しやすくもなります。これによって、閲覧を減らすことが期待できます。
松沢さんは、重要な知識人であり偉大な物書きです。それは、ラディカル・アナリシスができる人だからです。アカデミックな分析やサブカルの言説に対してラディカルな分析ができる優れて明晰な人だからです。しかも科学的でいながら、ユーモラスな文章がかける稀有な人です。だから松沢さんの著作は、取り上げられる内容もそうですが、松沢さんがそれを語る視点が面白いのです。公務員の仕事は、記録を保存し整理し管理することです。都合の悪い記録を破棄したり改竄したり、国会図書館の蔵書を貸し出したりと公的な倫理に欠ける行為は、嘆かわしいです。
おう、そう思うなら、『エロスの原風景』を買ってくれ。早くもアマゾンでの動きが鈍っているのだ。
松沢さんのセールストークに乗せられて、購入してしもうた。
6畳間で親子三人が、ひしめいていた頃、押入れに隠して? あった親父のエロ週刊誌をこそりと眺めていたような懐かしさを思い出しました。
Tomatotic-jellyさま
ありがとうございます。
Tomatotic-jellyさんのスタイルがはっきりしてきていて、いいカンジです。細かな分析は他の人に任せて、気づいたことをどんどんアップし続けてください。って人のことを言っている場合ではないですが。
ところで、エロ週刊誌ってなんだろ。ウソ告白満載の三流実話かな。通称、「土方雑誌」。これについては『エロスの原風景』パート2に出てくるはず。
> エロ週刊誌ってなんだろ
たぶん<ウソ告白満載の三流実話> あたりだと思いますが名前までは記憶にありません。 なにぶんに お子ちゃまのことですので、エロエロ・マンガ(昨今のものとは趣が違うような)が お気に入りだったようです。
その手の三流実話雑誌にもエロ漫画は出てましたけど、エロ漫画専門誌かもしれないですね。
[...] ◎『エロスの原風景』の裏庭風景 『エロスの原風景』の裏庭風景 1・エロというもの 『エロスの原風景』の裏庭風景 2・黙殺される存在 『エロスの原風景』の裏庭風景 3・見えない歴史 『エロスの原風景』の裏庭風景 4・チンコ展 『エロスの原風景』の裏庭風景 5・宮武外骨とプランゲ、ついでに私(上) 『エロスの原風景』の裏庭風景 6・宮武外骨とプランゲ、ついでに私(中) 『エロスの原風景』の裏庭風景 7・宮武外骨とプランゲ、ついでに私(下) [...]
[...] (続く) [...]