2004-08-17

お部屋810/日垣隆氏からの回答

751回「日垣隆氏への回答」に対して、1ヶ月以上経った8月11日、やっと日垣氏からのメールが届きました。

【下記のご案内をいただき、先ほど拝見しました。
遅くなって、すみません。
引用文は、なぜか不正確(転送された方が加えたのでしょう)ですが、それはともかく、松沢さんが引用された私の文章で、平均的な国語力の読み手に対しては、それ以上の追加的説明は必要ないと思いました。
松沢さんの推論結果が誤りであったことは事実ですが、大したことではありませんし、それ以上とやかく言うつもりはありません。】

他に私信に属すると思われる文章はありましたが、今回の件についてはこれだけです。
私は「公開を前提」とお願いしてますし、公開された文書にまつわるやりとりですから、私信と解する余地はなく、転載許可を待つことなく、日垣氏にはこの部分を公開する旨を通告しておきました。

【引用文が不正確】という指摘ですけど、確認してみたところ、751回「日垣隆氏への回答」で引用文として出した文章の最後についていた【—– 以上です。】の部分は、私に知らせてくれた人が「以上が、日垣氏が書いていたことです」の意味でつけていたものです。文意にはなんら影響がないのですが、たしかに「不正確」です。
そこで、お詫びの意味を含めまして、ここで改めて原文を出しておきます。

【同年齢で同業者の松沢呉一(くれいち)さんによる、俺批判。

《日垣隆・対談集『ウソの科学 騙しの技術』(新潮OH!文庫)にこんな言葉が出てきます。
[有村アナ:雑誌や本でも対談や座談会はたくさんありますが、対談者の一方がすべて文章化の作業に当たる、というのは初めての試みだといっていいのでしょうね]
 〔中略〕
 お坊ちゃま、お嬢ちゃま方は、下々の者がどんな苦労を日々しているのかも知らず、「初めての試み」などと胸張っていられるのですから、たいそうお幸せでいらっしゃる。私は私で、そういう仕事のやり方しかずっとしてこなかった人が存在していることを想像できていませんでした。マスコミ業界のとてつもないヒエラルキーを実感しないではいられません。
 たぶん彼らは自分でテープ起こしをするライターがいるなんてことも想像できないのではないでしょうか。原稿用紙1枚千円に満たない仕事があるとか、経費が自腹の仕事があるとか、ギャラを払ってもらえないことがあるとか、単行本の印税をごまかされるとか、写真使用料を払ってもらえないとか、単行本の原稿枚数も指定してもらえず、そのくせあとで文句だけ言われることがあるとか……》(<真実・篠田博之の部屋 松沢呉一の「創」編集長批判>第21回 2001年3月23日)

 このような、推量に基づく無根拠な批判をなさっておいでなのをもちろん承知で、今年1月24日に私が主催した「朝までライター・セミナー」のパネラーとしてお招きしたのですから、俺も太っ腹だと思っておいて。

 さて私がフリーになって、最初の正月を越すため知人に頼んでありがたくもらった仕事はテープ起こしでした。今でも、インタビュー・テープを自分でよく起こしますし、対談を引き受ける条件として、自分からそれを申し出ることさえあります。もちろん無料でね。

 貧乏自慢が芸の領域に達した感のある松沢さんは、単純な曲解をしているだけなのですが、その文章はしばしば思い込みだけで暴走してしまい、言うに事欠いて俺(日垣)らは《自分でテープ起こしをするライターがいるなんてことも想像できないのではないでしょうか。原稿用紙1枚千円に満たない仕事があるとか、経費が自腹の仕事があるとか》って、まさかそんなことを知らないって、ありうると本気で思ってるのかなあ。

 よく知っているからこそ、敢えて俺は原稿料や印税についてオープンに語り(これは松沢さんもやろうと試みてタブーの厚さに弱腰になってできなかったことでしょう。ご自身も別のところで書いておられるとおり)、くれいちさんを招いて原稿料や印税をめぐるシンポを開いたりしたわけですよ、ねえ。
 訂正してくれいち。】

以上の文章について、【平均的な国語力の読み手に対しては、それ以上の追加的説明は必要ないと思いました】ということですけど、現に私はこれに対する説明を求めているわけです。つまり、日垣氏は私には平均的な国語力がないと言いたいらしい。
日垣氏らしいですね。

知人のライターが以下のサイトを教えてくれました。
日垣隆メルマガ詐欺のページ
ここに挙げられている日垣氏に対する批判の多くについて私は同意できないでいて、特に著作権については批判する側に無理がありましょう。
法の問題ではなく、「公開されている公文書を有料のメルマガに転載する行為は道義的に許されるか否か」という問題はなくはないのでしょうけど、それにしたって、こんなん堂々対応すればよく、コソコソとメルマガの文言に手を加えたりするから、「詐欺疑惑」なんてものが存在しているかのように思われてしまう。なんでしっかり説明しないのでしょうね。

このサイトにリンクされている「日垣隆、公文書有料配信事件を追う」で、日垣氏は相手を【基地外】【坊や】【小学2年生】【ストーカー】などと罵倒。私もよくやっているように、ナンボ人を罵倒したっていいと思いますが、ここでは「ボランティアを自称する人(日垣氏)が、不要な経費を税金から出させたのではないか」との疑惑に答えないために相手を貶めようとしているとしか思えません。
やましいところがなければ、これも罵倒する前に、あるいは罵倒すると同時に説明すればいいのではないでしょうか。

今回のことにおいても同様で、私の推論が間違いであるのなら、その推論の根拠となった日垣氏の発言についても訂正されるべきであり、それを放置したまま、私を批判し、訂正を求めたのが日垣氏ですから、【平均的な国語力の読み手に対しては、それ以上の追加的説明は必要ないと思いました】なんて言葉で済む話ではないのです。
そもそも【平均的な国語力の読み手】というのがどういうもんか私にはよくわからないのですが、私が平均的な国語力がない読み手であることを指摘したところで、説明する必要がなくなるはずがないでしょう。

【無根拠な批判】【単純な曲解】【思い込みだけで暴走】などとして訂正を求めておいて、それに私が回答したところ、今度は【大したことはない】ですってよ。
いまさら何を言っているのでしょう。大したことがないなら最初から言わなければいいだけです。【それ以上とやかく言うつもりはありません】というのなら、「どうぞご勝手に」ということですけど、現に言った以上は、大したことであろうとなかろうと、その発言に責任をもつのは当然であり、「大したことか否か」について、日垣氏の主観をここで開陳されても、私にとっては何の興味もありません。

「両者の意見を出し合って、あとは読者が判断すればいい」という考え方には私も賛成しますよ。しかし、【「新ガッキィファイター」の読者にもわかるように、リンクするように要求しておきます】と私は申し入れているにもかかわらず、これも無視です。私自身、日垣氏による私への批判は、私の読者にも知らせておくべきと思い、ここに引用しているわけですけど、日垣氏は一方的に書いて済ませ、読者に判断させることさえしたくないとしか思えません。

この問題が済んだら、続いて私は日垣氏に質問をする予定でした。
これについても責任をとれるような人ではないと判断するしかないのですけど、念のために、ここに出しておきます。

【これは松沢さんもやろうと試みてタブーの厚さに弱腰になってできなかったことでしょう。ご自身も別のところで書いておられるとおり】というのは、なにを指しているのでしょうか。推量と明確にわかるように書いていることに対しても訂正を求める日垣氏ですから、これは日垣氏の推量ではなく、はっきり私はこのようなことを書いているらしい。さて、どこで書いたかのかな。

具体名を入れて、仕事をしている全雑誌の原稿料を一度に公開したことは今に至るまでありませんが、印税についてはすべて公開し、部数についてもすべて公開しているかと思います。
また、『メディア・アクセス・ガイド2』(現代人文社)でも具体的な出版社名とともに原稿料を書いています。匿名になってますが、誰が書いているのかバレるだろうと思いつつ引き受けたもので、事実すぐさまバレました。
それ以外でも、かなりまで原稿料や経費の有無、経費の内容や金額を公開しています。
つまり、あのセミナーで話した程度はすべて繰り返し書いていることでしかありません。

では、なんで全雑誌の原稿料を並べたことがないかというと、タブーとは無関係な事情からです。
前に、400字1300円の連載があることを書きましたが、この時も雑誌名を出すかどうか迷いました。
でも、これを出すと、編集者が同業者にいろいろ言われかねないだろうと思って伏せました。これは編集者なり出版社との関係からです。
また、「400字1000円しか出せないが、松沢に原稿依頼すると公開するので、今回は見送ろう」という事態を避けたいという計算もあります。これもタブーではなく、個人的な事情です。

日垣氏がどの程度原稿料について公開しているのか知りませんけど、この文章を読むと、私以上のこと、つまりは出版社名や雑誌名を出した上で、仕事をしている全雑誌の原稿料を公開するようなことまでやっておられるのだと思われます。
けっこうなことですが、私が全雑誌の原稿料を雑誌名入りで出したことがないのは、個別の事情があるためであって、【タブーの厚さに弱腰になって】公開しなかった記憶はありません。
一体何をもってこんなことをお書きになったのか説明していただけますでしょうか。
今回同様、説明できないのであれば、今後は記憶でいい加減に書くことをお控えいただきたいものです。

751回とともにこの回も出しっぱなしにしておきます。