2008-10-13

お部屋1678/ビックリマークはハッタリマーク!?【追記あり】

「でぶちんのデータ工房」に、新プロジェクトの作品第一弾がアップされました。

前回大げさな前振りをしてみましたが、簡単に言えば、計量文体学をコメントに応用したらどうなるかって試みであります。計量文体学では、本をまるごと一冊分、あるいは何册分もの文体を解析して、その作品ないしは作者の特徴を数値にし、「どういう特性のある文章か」「その特性に作者の何が表出されているのか」「誰の影響を受けているか」といったことを探るわけですが(よくは知らない)、言うまでもなく、これは文学に限らず使える手法ですし、個人の特性だけでなく、言語そのものの特性を知ることもできます。

どうしたって文章には癖が出ます。個人の特性であったり、ある集団の特性であったり。その癖は時に内面を反映しています。文章から透けて見える、このような情報を我々は、通常、印象という形で受け取っています。

3羽の雀さんとは、エルドラドの待合室で会ったことがあるだけで(私のくどい性格がここに透けて出ています)、どんな仕事をしている人なのかも私は知りません。しかし、推測はしています。3羽の雀さんの身元調査になってしまうので、具体的なことは省略しますが、あれだけの量を書いていれば、そこから読み取れる情報があります。言語的な情報だけではなく、癖からも情報が読み取れる。

このように、文章を読んでいくと、「勘」「印象」というレベルで、ある程度のことは見えてくるわけですが、より正確なことを見るためには数字があった方がいい。「勘」「印象」はぶれますので。

その印象を数値に置き換えられれば、書き手の世代、職業、性格、出身地まで容易にわかるかもしれない。また、こうすることによって、他者との比較もできますし、作者不詳の文章が誰のものであるのかを推測することもできます。筆跡というものが存在しなくなった時代には、ますますこのような研究は必要とされていくでしょう。

しかし、一定の文字数がないと、「ある言葉を漢字にしているか、ひらがなにしているか、カタカナにしているか」といったポイントを数値に置き換えることは難しく、よって文章が短いコメントでは、このような手法はほとんど使えません。使えるかもしれないですが、使えるかどうかのデータが我々にはないので、行き当たりばったりに計算して時間を無駄にはしたくない。時間を無駄にするのは私ではなく、でぶちんさんですが。

そこでビックリマークに着目しました。もし3羽の雀さんの言う【ビックリマークをむやみに多用するのは、根拠薄弱なことを強弁する人によく見られる傾向】が存在しているのだとすると、単純に数を出すだけで、その書き手の特性を見いだすことができるのではないか。

ビックリマークの多用は、根拠が強いか弱いかに限らず、「相手を圧倒したい欲望の表れ」「目立ちたい欲望の表れ」と見ることができそうです。こういった機能があるために、根拠が薄弱な時でも、このマークに頼ってしまうことになります。つまりは「ビックリマークはハッタリマーク」ってことです。

もちろん、すべてのビックリマークがそうだとは言えなくとも、多用する人は「ハッタリ度が高い」「自己顕示欲が強い」「論理ではないところで相手を威圧したい」とは言えるのではないか。

しかも、ビックリマークは、誰もが使い得る記号でありながら、使う人と使わない人の差がはっきり出る。調べる側にとっては大変都合がいい。

気になって、自分の原稿を確認したら、想像していたよりずっと使ってません。具体的に言うと、「マツワル」の原稿を検索したところ、100号あたり、ビックリマークを使用しているのは5本平均といったところ。

中を開いて見ると、引用文内に出てくるものと、固有名詞が含まれてます。「SPA!」とか「スカパー!」とか。イベントの告知をコピペした回もひっかかります。

例えば以下。

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★8/26(日)
紫ベビードールワンマンライブ!
「4.5th anniversary FESTIVAL!!!! 紫ベビードールがやってくる! in JAPAN リターンズ! —Boogie the Beer Park—」
@アサヒ・アートスクエア
17:00open 17:30start

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連発。イベント告知ではよくあることです。目立たせることが目的、注目されることが目的なのですから。

こういったものを除き、自分でつけているものに限ると、100号で1号程度です。マツワルは1回ざっと4000文字です。つまり、40万字で1回くらいってことです。1号で複数回使用しているものがあるので、実際にはこの倍くらいになりましょう。つまり単行本1册でひとつあるかないか

全部中身をチェックしたわけではないですが、使用しているのは会話文が多いようです。例えば、ラッパーの会話という設定の文章で、「Hey!」「Yeh!」「Yo!」と繰り返しています。あるいは、英語の挨拶の例として「Hey! Susie」「Hi! John」と書いてます。これは挨拶に見られる言語の特性の例として出したもので、もとはと言えば外来記号ですから、英語の会話にはさして意味なくビックリマークをつけてしまいます(ビックリマークが日本で使用されるようになる経緯についてはいずれ調べてみたいと思います)。

それ以外で使っている例。

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「マグロがピンチだ!」なんて騒ぐから、皆がまた食いたくなって値段が上がります。

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強調の典型的な例ですが、これも仮想の文章です。

以下は私自身のものとしてビックリマークを使っている例。

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ママ「一日で六十三万やったかな」
!
麗子「うん、正月な。ごはん食べる暇もなくて、階段でおにぎり食べてましたもん」

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これは、大阪飛田の女のコたちやおばちゃちゃん、ママによる座談会です。麗子というのは私の知り合いで、伝説的な記録をもつコ(「コ」と言っても当時30代後半)です。

1日で63万円を稼ぎ出したというので、私が驚いて絶句したことをビックリマークひとつで表現しています。なお、これは売り上げですけど、通常の料金では物理的にあり得ず、この数字には正月のご祝儀が含まれています。

以下は一度に複数個使った例。

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ブックオフの若い店員は買い取り値を私に告げました。208円!!!!!!

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一度に六個。ブックオフに本を売りに行った際、その安さに驚いたことを表現してみました。めったにビックリマークを使わない私が、こうも使えば、どれだけショックを受けたかわかろうというものです。こういう記号は使うべき時のために乱用はしないというのが私の考え(今考えた。この記号について意識はしていなかったです)。

自分自身の文章で言えば、的確にビックリマークを使用していて、過剰に使用しているようには思えません。六個は過剰ですが。

商業誌に書いた原稿もチェックしたのですが、よく使っているのはやはりインタビューや座談会です。「えっ!」「ウソ!」といったものです。これはつけますね。話し言葉ではビックリマークが増えるわけです。

自分が書いたものでは見つからなかったのですが、記事のタイトル見出しキャプションなどではビックリマークを多用する傾向がありそうです。これも目立たせることが必要な文章です。また、文字数があれば、「何がどうすごいか」を言葉で説明できますが、少ない文字数で説明しようとすると、十分に説明ができず、「すごい!」と表現したくなる。告知文のようなキャッチコピーもまた目立たせたいのと同時に、文字数の制限という条件が関わっているかもしれない。

文字数が制限される場でビックリマークが増える傾向は、漫画のネームにも見られます。しかも、話し言葉です。

コメント欄もたいていは文字数が制限されていますから、この法則が働いて、一般の文章に比べるとビックリマークが使用されやすいと言えそうです。また、かしこまった文章よりも話し言葉に近い分、頻度が高まりそうです。

したがって、コメントは、ビックリマークが使用されやすい条件が揃っていると言えるのですが、この条件は誰でも同じです。それでも使用しない人はまったく使用しない。使用する人は大量に使用する。ここに個性が出やすい。個人の数値を出すものとしては絶好の記号です。

なおかつ、「多用している」というだけで内面を表出している可能性があるのですから、これほど条件の揃った対象はないでしょう。

サンプルになったコメントを確認することで、そこにどんな傾向があるのかを見いだすこともできますので、この試みによって「ビックリマークの多用にはどんな意味があるのか」をさらに明確にすることも可能です。

以上、丁寧に説明したのは、このデータの意味を正確にわかっていただくためです。これは仮説と仮説をカップリングしたような試みにすぎません。瀬戸弘幸のような人間であれば、すぐさま「ビックリマークを多用しているから、こいつはハッタリ人間だ」と決めつけましょうが、ああいう人と私らはちょっと違います。

現状では「その可能性がある」という程度です。ただし、今後の展開次第では、「その可能性が高い」というところまで行き着けるかもしれません。手作業になってしまうので、時間がかかりますけど、驚きを表現しただけの用法を外し、ハッタリ用法としてのビックリマークの使用頻度を出すと、真の「ハッタリ野郎」を決定できるかも。

で、第一回目のデータ「BQ値」であることに注意してください。ビックリマークとクエスチョンマークの総計です。それにちなんで、今回はタイトルにも「!?」をつけてみました。

B値とQ値との相関関係、つまり、「クエスチョンマークを多用する人はビックリマークも多用するのか」といったテーマについては追々見ていくとします。私自身で言えば、クエスチョンマークはビックリマークの数十倍使用していて、両者の間に比例関係はなさそうです。

コメントの回数を基準にしていますので、長文のコメントで一回使用した人と、単文で一回使用した人との扱いは一緒です。また、引用文は排除できていないので、他者のマークもカウントされてます。

「ビックリマークだけに限った方がいいのではないか」「文字数を基準にした方がいいのではないか」と考えた方々もいらっしゃいましょう。ご安心ください。その程度の計算はすべて終了しています。もちろん計算はでぶちんさんです。

それどころか、でぶちんさんは、すでにコメント以外の文章にも進出し、BQ値以外の数値も出し始めてます。休みなし。

本日、でぶちんさんから届いていたメールでは、私も考えついていなかった視点が提示されていまして、グーの根も出ません。

「デタおたプリンス」「デタおた界の企画部長」は、「自殺か他殺か」「りんごっこや多摩レイクサイドがどうしたこうした」といった薄汚い話とは無縁の「データの国」に旅立ったと思ってください。帰国は3年後を予定してます。
 

  
【追記】コメント欄で、URLさんから、【お願いです!!!! ビックリマークといわず、エクスクラメーションマークと言ってください】とのご意見をいただきました。

長くなるので、こっちで答えておきます。

URLさんも同様の意図のもとで書いているのかもしれないですが、「ビックリマーク/クエスチョンマーク」という名称については私にも若干の違和感があります。「ビックリマーク」自体に違和感があるのでなく、「感嘆符/疑問符」「エクスクラメーションマーク/クエスチョンマーク」「ビックリマーク/はてなマーク」のどれかに統一した方が美しいって話です(すべてナカグロは省略してます)。

私にとってはどれでもよくて、これは「同一文中では基準を合わせる」という問題です。ライターや編集者以外でもこういう感覚を持つ人は多いでしょうが、校正の段階で直されることがわかっていることは先にやっておくようになってしまうものでありまして、その感覚が内面化して、基準が不統一であることに対しての落ち着きのなさを感じるようになります。もちろん、個人差もあって、気にしない人は気にしないでしょうが。

今回は、3羽の雀さんの「ビックリマーク」から始まってます。私は「感嘆符」と書くことの方が多いのではないかとも思うのですが、それを引用した場合、「表記を統一したい」という思いから、その引用をした私も「ビックリマーク」に揃えます。これ以降、私はずっと「ビックリマーク」です。

ところが、この言葉は微妙なところがあります。なんの制限もない場では「感嘆符/疑問符」→「エクスクラメーションマーク/クエスチョンマーク」→「ビックリマーク/はてなマーク」という優先順位で私は統一するでしょうが、単体の場合は「感嘆符」→「ビックリマーク」→「エクスクラメーションマーク」、「クエスチョンマーク」→「疑問符」→「はてなマーク」という優先順位だったりもします。

単体の時の優先順位にズレがあるのは、「エクスクラメーションマーク」の文字数が多いためです。校正用語としては「雨垂れ」という名称も使用しますが、これも長い名称を避けるためでしょう。

一般にも「エクスクラメーション」という言葉自体が日本語として今なお馴染んでいないので、Googleで調べると、「エクスクラメーションマーク」(55,100)より「ビックリマーク」(1,610,000)の方が30倍くらい使用されています。「エクスクラメーションマーク」より、「感嘆符」(115,000)の方がまだしも使用されている。

言葉は多数決ですから、その点でも、ここは「ビックリマーク」でよいのですが、となれば、「?」は「はてなマーク」で統一すべきでした。

ところが、私はふだん「はてなマーク」という言い方をほとんどしないため、でぶちんさんへのメールで「クエスチョンマーク」と書いてしまっているのですね(どこからこうなったのか、さっき調べた)。そのために、でぶちんさんも、それに合わせて、「クエスチョンマーク」と「ビックリマーク」にしたものと思われて、このまんま定着してしまいました。

「瀬戸弘幸の言動にはつねに疑問符がつく」といった言い回しがあるにもかかわらず、Google調べによると、「疑問符」(751,000)よりも、「はてなマーク」(801,000)の方が使用されていて、「クエスチョンマーク」(146,000)は少数です。「クエッションマーク」(17,900)という表記を合わせても、全然勝てない。

その意味でも「ビックリマーク/はてなマーク」に統一するのがよかったのでしょうけど、いいんじゃないですかね、ここには校正マンもいないことだし、これは個人の感覚、美学、趣味の問題であり、「正しいか否か」の問題ではないことですし。

と言いながら、息抜きの指摘に、こんなに説明してしまっているくらいで、本当は気になるのですが、表記を気にし出すとキリがないので、気にしなくていい場面では、できるだけ気にしないようにしています。

つうことで、ご理解いただきたい。

このエントリへの反応

  1. うちの環境では、でぶちんさん の おうちが、見られません(涙)
    だれか 邪魔してるんでしょうか。
    Sは、優柔不断なので「?」多用です。

  2. なんで? 図表が表示されないってだけじゃなく? 工作? 

    クエスチョンマークを多用してみました。私もよくクエスチョンマークは使ってまして、クエスチョンマークの使用頻度は誰でも同様の数値に落ち着くと思います。問題はビックリマークであります。まさか、こんなところを探られるとは誰も想像していませんから、無防備に内面を晒している可能性があるってわけです。

  3. 原因! 分かりました!
    RSSが、読み込めなくて、PCフリーズしたのは、
    うちの回線とPCが、のろまな亀 だったせいです(涙)
    しかし、!だらけの某新聞は埋もれて、どれが!だか?です

  4. お願いです!!!!
    ビックリマークといわず、エクスクラメーションマークと言ってください。
    深い意味はないですが、ちょっと息抜きしたいんで、書いてみました。
    (さくじょしてくださっても、かまいません)

    PS.
    少々お聞きしたいことがあるので(マジ)メールくださると助かります
    ↑瀬戸の花嫁(w)についてです。

  5. ついに削除入りました。
    せめてもの救いは、こちらの投稿をリアルタイムで
    2chに乗っけておいたことでしょうか。

    http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/siberia/1222864013/
    です。

    夜まで待とうと思います。
    では、取り急ぎ用件のみで失礼します。

  6. >URLさま

    ビックリマークについては長くなるので、追記で書きます。

    あとは電波にて。

  7. [...] 3羽の雀さんが書いていた笑いの表現(「(笑い)」や「www」)についても、「データの国」にいるでぶちんさんにすでに指令を出してあります。 [...]

  8. [...] このまま私は「データの国」で生きて行こう、数字に囲まれて幸せな家庭を築こうと思っていたのですが、この曲を聴いて、「そうだ、私には瀬戸弘幸という大事な友だちがいるのだ、もう少し遊んであげなきゃ」と思い直しました。 [...]

  9. [...] 図画工作員Sさんは、名前、住所、電話番号などの必須事項を除く肩書き、略歴の文字数をカウントする「名刺何文字プロジェクト」に動き出して、「デタおた」ではないと言っていた彼もまた「データの国」に旅立ったかもしれない。 [...]