2008-06-07
お部屋1530/あれやこれやの表現規制 4-14
児童ポルノ法改正案が自民党の法務部会を通ってしまいました。
http://www.jimin.jp/jimin/daily/08_06/06/200606a.shtml
あとは民主党に期待です。世論が盛り上がらない限り、民主党だって力は入れないでしょうから、ともかく意思表示であります。
このシリーズ、スタートが遅すぎて、かつ取りあげるテーマが多すぎて、タイミングがズレてしまってますが、続いて、「世界日報」と同レベルの新聞社を見てみましょう。
「読売新聞」の社説です。
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子どもたちを犯罪被害から守るためには、法規制の強化を躊躇(ちゅうちょ)すべき
ではない。
児童買春・児童ポルノ禁止法の改正に向けて、与党のプロジェクトチームが検討作
業を進めている。
この法律は、1999年に議員立法として制定された。18歳未満の児童の「性欲
を興奮させまたは刺激する」全半裸の画像を提供することなどを禁止している。
与党チームは、児童ポルノを個人的に収集する「単純所持」についても新たに禁止
し、罰則を盛り込む方針を打ち出した。
「単純所持」の禁止の議論は法制定の際にもあったが、「所有者のプライバシーへ
の配慮」や「捜査権の乱用への懸念」から、見送られた。
しかし、インターネットの普及で児童ポルノの拡散が急速に進む中で、先進国は規
制の強化に乗り出している。「単純所持」を禁止していないのは、主要8か国(G
8)では日本とロシアだけだ。
シーファー駐日アメリカ大使は鳩山法相に「単純所持」禁止への期待を表明してい
る。
日本で「単純所持」が認められていることが、国際捜査協力を進める上で支障に
なっている。
(略)
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「被害」という言葉を聞くと、どうしてもイヤイヤであったと思ってしまいますが、現実に「児童ポルノ事件」の多くはそのイメージにそぐわないものであることはすでに指摘した通り。
また、ここでも「子ども」という言葉を使用してますね。児童ポルノ法の検挙例を見れば、その「被害者」の多くは女子高生ですから、「児童」を言い換えるのであれば、「女子高生」とした方がまだしも適切でしょう。冒頭の一文は【援交女子高生を犯罪被害から守るためには、法規制の強化を躊躇(ちゅうちょ)すべきではない】と書いてはどうでしょう。
結局、日本ユニセフ協会も、「世界日報」も、「読売新聞」も、自民党や公明党の議員たちも、「子ども」を利用して、表現潰しを狙っているだけです。
この構造は「第2章/セクハラ」で見ていくように、セクハラの範囲拡大と同じです。上司に「愛人になれ」と迫られ、拒否したらクビにされたような悪質なセクハラ事例をもって、エロ話をすることもできない社会にしようと目論んだ人たちがいるわけです。スキあらば表現や行動を規制しようとしやがる。
今回は報道機関までがこれに乗じて、恥も外聞もなく表現規制に乗り出しています。
すでに指摘したように、読売新聞社はかつて清岡純子の少女ヌード写真展を後援していたわけです。その写真を所持していることさえも犯罪にするような法律にこうも無批判に賛同できる神経を理解できません。それならそれで、自社が犯罪めいた写真を世に広げた責任をしっかりとるべきです。
そんな謙虚さをこの新聞社に求めるのは無理ってものですから、だったら、こちらから見限るしかない。最初からとってないけど。
当時の人たちができていたように、今の時代においても、その間に一線を引いて、禁止すべき児童ポルノなのか、そうではないのかを区別すればいいだけのことではないですか。なぜこうも児童ポルノの範囲を拡大し、犯罪の範囲を拡大しないと納得しない人たちがいるのか。
おそらく「読売新聞」のこの社説を読んだ人が「児童ポルノ」でイメージするのは、清岡純子の作品ではなく、「世界日報」が言うような【幼い子供をレイプするなど重大な犯罪と密接にかかわって制作される】ものだと想像できます。まさにそれを狙ったデマ記事と言っていいでしょう。
もし本当にこういったものを規制したいのであれば、たしかに現行法には不備があります。無闇に範囲を拡大するから、取締の人員や労力は拡散してしまうのであり、そういった例に絞り込んで法制化すべきです。なぜそれをやらないのか。子どものことなんて本当は何も考えていないからですけど。
さて、「世界日報」も、この「読売新聞」も、揃って日本ユニセフ協会の言う通りに、【「単純所持」を禁止していないのは、主要8か国(G8)では日本とロシアだけ】として、【日本で「単純所持」が認められていることが、国際捜査協力を進める上で支障になっている】と主張しています。
これをそのまま鵜呑みにしていいのでありましょうか。不思議なんですよね。こうも皆さん、このことを繰り返しておきながら、「どこの国がどういう基準で単純所持を禁止しているのか」をどのメディアも団体も明らかにしていません。自民党も公明党も明らかにしていない。
「ほら、見てごらんなさい、アメリカ様にもこんな法律があります。卑屈な我が国もその真似をしましょう」とやれば説得力が増します。これもなぜやらないのか。これをやったら、自分らがどれほどいい加減な法改正をしようとしているのかがバレるからです。アメリカの存在を利用しているだけなのがバレるからです。違うと言うなら各国の法律をだしてみろ。
続く。