2008-06-02

お部屋1523/あれやこれやの表現規制 4-10

そもそも被写体が撮影時に18歳であるのか、17歳であるのかを正確に知ることは非常に難しい。写真を見てわかりにくいだけでなく、撮影する側だってわからない。

児童ポルノ法が制定されて以降、いくつかの雑誌やAVメーカーが同法によって摘発されていますが、私の知る限り、その多くは、出版社やAVメーカーが「騙された」と言っていい。16歳や17歳が、18歳、19歳だと偽っていたことに気づかなかったのです。姉の免許証を使っていたり、学生証を偽造したりしますから。

つまり、「誘拐」だの「レイプ」だのとはなんの関係もないし、「幼児」でもない。結婚だってできる「青年」に属する世代が小遣い稼ぎにやったことです。

数年前、雑誌だけで30誌以上に出ていたモデルが16歳であったことがわかって、エロ出版業界が震撼としたことがあります。彼女は自分にそっくりな姉の免許証を使用していたため、プロダクションもAVメーカーも出版社も、誰一人気づいていませんでした。

姉は20歳です。16歳が20歳だと偽っていたら気づいてもよさそうだと思う人たちもいるでしょうが、本人としか思えない写真のついた免許証を持ってこられたら、普通は疑いません。そうじゃなくても、化粧をして、それらしい格好をしていたら、20歳に見える16歳はいくらでもいます。

この時はいくらなんでも少女が悪質だったということなのか、プロダクションとAVメーカーが摘発されただけでしたが、プロダクションとAVメーカーだって災難です。

児童ポルノ法第九条にこうあります。
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(児童の年齢の知情)
第九条 児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第五条から前条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。

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この条文を見ると、被写体に騙す意思があったことが歴然としていて、なおかつ使用する側がなんらかの形で年齢確認をしている場合は「過失なし」とすべきだと思うのですが、写真入りの免許証、学生証を確認していてもなお確認が不十分、つまりは過失があったとされてしまうことがあります。ひどいです(このようなケースでは書類送検にならない、あるいは不起訴処分となることが増えているような印象もあって、警察や検察はいくらかは考慮するようになっているかもしれない)。

それでも新聞やテレビは裏をとることもなく、16歳、17歳とわかっていて使っていたかのような報道をします。

数年前、私も仕事をしている雑誌が、児童ポルノ法違反で摘発されました。風俗嬢のヌードを掲載したところ、彼女は16歳だったのです。店が摘発されたことによって、雑誌もその煽りで摘発。

この店の経営者を取材したところ、彼女の自己申告を信じたまま、身分証を確認しないで雇い入れていて、繰り返し「身分証をもってこい」と言っていたにもかかわらず、彼女はのらりくらりと逃げているうちにこのような事態に。

現に身分証明書の確認をしていなかったのですから、摘発はやむなし。雑誌も同じく身分証明書のチェックをしていなかったため、摘発もやむなしとは言えますが、いずれも18歳未満であることをまったく知らないでいたのは事実。

しかし、そんな事情は新聞でもテレビでも一切報じられず、それどころか、風俗店と雑誌が共謀したかのような報道までしていました。出版社に電話一本すればわかることなのに。

さらには、児童ポルノ法に抵触する内容の記事を書いていた新聞まであります。

出版社が摘発され、警察はどの雑誌のどの号かまでを発表し、それを新聞が報じたことで読者も初めて気づき、どの写真がそうであるのかまで推測できてしまいました。その16歳の少女を探し出して取材をしたところ、この報道によって彼女は「あれはおまえだろ」と疑われたと言ってました。

この時の新聞報道は児童ポルノ法の第十三条に抵触します。

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(記事等の掲載等の禁止)
第十三条 第四条から第八条までの罪に係る事件に係る児童については、その氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌等により当該児童が当該事件に係る者で あることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならない。

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当時、警察にも問い合わせましたが、これは掲載した新聞の問題としていました。号数を発表した警察は責任がないと。

十二条「捜査および公判における配慮」という条文もありますが、あくまで捜査と公判に関する規定であり、たしかにこの事例の場合、警察の責任が問われるようなものではないでしょう。メディアが検証するためには、そこまで警察は発表した方がよく、問題はそのまま号数を報道した新聞だと言えそうです。警察発表を右から左に書き写すだけが新聞の仕事ではないだろうに。

新聞も自分とは無関係の法律と思い込んで、条文も読まずして児童ポルノ法違反が疑われる記事を堂々と出して児童ポルノに抵触することをやっていたわけです。「エロ雑誌だから」「児童だから」と、安直な姿勢で報道しているから、こういうことになる。

さらには、今回、単純所持禁止を支持している新聞まである。つうか、はっきり反対している新聞なんてないのか。

続く。

このエントリへの反応

  1. お久しぶりです。
    私も、15~6年前のことですが、某AVメーカーで営業兼制作を担当していた時、17歳の女子にひっかかって児童福祉法違反でY署にいじめられました。
    私が担当した作品の監督が19歳の姉の看護師の資格証と住民票を持ってきた妹に面接でだまされたのです。
    しかも彼女に面接して採用を決定したのは監督だったのですが(いい作品を作る監督で彼には気の毒でしたが)彼女は何を勘違いしたのか意識的にか、私が面接、採用したと言い張ったらしくて上司とともにY署へ呼び出されポリにいじめられました。
    その時、彼女にだまされた何社かのAVメーカーの担当者や出版社がY署でいじめられたらしいですが、怒鳴って机をたたきまくるポリを前に平然としていたのは私くらいだったようでそのことが、なぜかヤクザご出身の某巨匠AV監督の耳に入ったらしく、彼の会社に呼ばれてほめられました。(別にうれしくもなかったですが)
    その後、事件のほとぼりがさめ18歳になってから、彼女が母親に連れられてまたエロ出版社回りをしていると聞いた時には唖然としましたけど。

  2. すいません、このブログはコメントがついた時に気づきにくいものですから、返事が遅くなってしまいました。

    そういう経歴があれば、いかに16歳、17歳の小娘の中に悪質なのがいるのかよーくおわかりかと思います。遊ぶための小遣い稼ぎで、メーカーや出版社は逮捕です。

    ところが、報道を見ても、そんなことはこれっぽっちもわからないですからね。

    その現実を見ようともしない人たちが、児童ポルノ改正を狙っているってことですが、こいつらは「被害者」のためだと言いつつ、被害者を利用するだけの極悪人ですぜ。

    でも、警察や検察の中にも、事情をわかっている人たちもいて、いたって友好的な取り調べだったという人もいますし、「君は全然悪くないな」とまで言われた編集者もいます。