2008-05-20

お部屋1508/あれやこれやの表現規制 5-5

立川反戦ビラ事件の判決に従えば、マスコミがマンションや団地の敷地内に入って取材することもまた同様に住居侵入になり得るってことになりますが、判決では、自衛隊の立川宿舎は【一般に人が自由に出入りするところではない】と認定していて、一般に人が自由に出入りするところであれば、ビラ配りも取材も今のところは問題はないってことかと思います。もちろん、その場で退去を命じられたのに、出ていかなかったというのなら別として。

では、本題。靖国神社が撮影許可を出していないことを理由として、「靖国 YASUKUNI」の監督とアルゴピクチャーズに映像の削除を通知しており、当初の抗議文を見ても詳細がわからなかったのですが、5月1日付けで公開された文書「映画『靖国 YASUKUNI」に関する回答(一次)について」「映画『靖国 YASUKUNI」に関する通知書(二次)送付について」でやっとその詳細がわかってきました。この詳細がわからないのに議論しろというのが無理な話です。

「御神体」については判断がつかないのでパスするとして、肖像権については、撮影されている人たちの肖像権を侵害していることがあるとすれば削除することを求めており、また、靖国神社の広報課長が撮影を拒否しているのに、そのシーンが使用されている点を問題にして、この削除も求めています。

撮影されている参詣者たちについての肖像権は問題にならないことはすでに指摘してきた通り。また、これについては靖国神社が削除を求めるようなものではないでしょう。権利者と映画製作側が個別に交渉すべきことです。その交渉を権利者が靖国神社に委託したというのなら別ですが。

続いて、広報課長については、さらなる議論があっていいかと思います。たしかに拒否している様子が映像にも残っていたように記憶していますので。言葉を発していたのでなく、手で示していただけだったと思いますが(ここは正確な記憶ではないです)。

ここでは、広報課長は宗教法人を代表して対応していて、プライベートの様子を撮ったものではなく、なおかつその宗教法人は社会的なテーマとして広く認識されています。また、うろ覚えですが、拒否の意思表示をして以降は、顔を写すことはしていなかったようにも思えます。どうだったでしょうね。

たとえば創価学会にアポなしで取材をかけて、その際に広報担当が撮影を拒否したところまでを公開するのが適切か否かって話です。ここは肖像権と公益性のすり合わせってことになりましょう。

「靖国神社は、社会的に重要なテーマであること」「宗教法人であること」「その法人を代表する存在として、そこに登場してきていること」の三点から、私としては肖像権の主張は難しいだろうも思えますが、元の映像の記憶が薄れてきていることでもあるので、ここははっきりとした答えは出せないです。

この場合、仮に肖像権状問題があるとしても、モザイクをかけるだけで肖像権保護は可能ですから、なにも削除を求めることはないでしょう。

続いて撮影許可については、3度にわたって申請が出されており、その申請において、この映画の撮影であることが示されていなかった点と、許可していない場所での撮影があった点の二点が問題とされています。

靖国神社の映像の大半を占める8月15日分の撮影に関しては、報道関係者名簿への記載のみで処理されていることは靖国神社も認めている通り。【靖国神社の許可を得ずに境内で撮影されていた】などと、あたかも一切の許可を得ずに撮影したかのようなデマを垂れ流した方々は訂正した方がよろしいでしょう。

では、問題とされている部分について、削除しなければならないような問題があるのかどうか、国会議員が国会で取りあげるような問題なのかどうかを次回さらに検討するとします。