2007-09-28

お部屋1336/今日のマツワル52

自分で言うのはナニですが、このところの「マツワル」は面白いです。文字通り昨年の旅行記である「去年の旅」シリーズ(なぜいまさら昨年の旅行記なのかの事情は秘密です)を毎日配信していて、その合間に「歯ブラシ問題」「東村山セクハラ捏造事件」「愛煙家のための禁煙法」などを配信。

「愛煙家のための禁煙法」では、おそらく誰も言ってこなかったタバコの重大なメリットを指摘した上での禁煙法を確立しています。

先日、私は久々にタバコを吸いました。一日一箱かそれ以上吸っていたのですが、再度禁煙。これが全然苦ではない。今後は月に一回「タバコの日」を設けて、その日だけは吸うようにしようかとも考えてます。こんな器用なことができるのも、我が禁煙法のおかげです。

現在は、既存の禁煙法がいかに愚劣かを書いてます。

< <<<<<<<<<マッツ・ザ・ワールド 第1652号>>>>>>>>>>

< 愛煙家のための禁煙法23>

アレン・カー著『禁煙セラピー』(KKロングセラーズ)という新書が禁煙のための定番になっているらしい。そこで、このシリーズのためにブックオフで買ってきました。100円コーナーです。これでも高く、アマゾンでは1円で大量に出てます。それくらい安い内容というわけではなく、それだけ売れたってことです。

平成8年に初刷りが出ていて、私が購入したのは平成12年に出た104刷。おそらく今も売れ続けているのでしょう。

しかし、内容はひどい。どうして売れるのかまったくわからないし、これで禁煙する人の気が知れない。あまりに傲慢でくだらない内容のため、これを読むと、タバコを吸いたくなります。今まで出ていた禁煙の本と大差なく、「読むだけで絶対やめられる」といったコピーのはったりぶりが今までより強いってだけです。

この本はウソや間違い、思いこみに満ちてます。そのウソや間違い、思いこみは、今までもさんざん繰り返されてきたものなので、このわかりやすいインチキ本を元に、既存の禁煙のススメがいかにデタラメかを見ていくことにします。

著者は1日百本を吸うヘヴィスモーカーだったそうです。なのに、こう書いてます。

—————————————————————–

ほとんどの喫煙者は健康のことを考えて「病気になる前にはやめよう」と思っています。私も「このままでは死んでしまう」というところまでいきました。常に頭痛と咳に悩まされ、額を流れる血管がどくどくと波打つのを感じ、いつと脳いっ血てぜ死んでもおかしくないと感じていました。不安に怯えながら、それでもタバコをやめられなかったのです。
 もともと、タバコの味が好きだったわけではないのです。ほとんどの喫煙者は「タバコは美味い」という錯覚に陥りますが、私は一度もそんな幻想は持ちませんでした。タバコの味や臭いは嫌でたまらなかったのです。

—————————————————————–

常にそう感じられるわけではないにしても、どこかで「おいしい」と感じられる瞬間がある人のも方がずっと多いのではないでしょうか。この著者はそうではなかったってことでしょうが、そんな状態で百本も吸うこと自体おかしい。「狂っている」と言っていい。

ここで確認しておきたいのは、この著者は喫煙者の典型などでは決してなくて、非常に特殊、あるいは異常と呼んでも差し支えない喫煙者です。大隈の愛煙家とはまったく接点がないタイプの喫煙者だったのです。

タバコがうまいのは錯覚ではありません。これが錯覚なら、すべての味覚は錯覚です。事実、ほとんどの喫煙者はタバコの味覚でブランドを選択します。タールやニコチンの量、値段、近所に売っているかどうかなどでも選択しますけど、味も重要な選択の要素です。つまり、味の好き嫌い、「うまい/まずい」は確実にあって、それがないならエコーやゴールデンバットはもっと売れます。

この程度のことさえわからない頭の悪い著者によって書かれたのがこの本です。

この本では【ほとんどの喫煙者は健康のことを考えて「病気になる前にはやめよう」と思っている】という前提に貫かれてます。そりゃ、これだけタバコの害が強調されれば、「いつかやめようか」と考える瞬間もあるでしょうが、本気でやめようとは思っていない。

「初期のガンです。タバコをやめないと余命は半年です」と医者に宣告されたら、ほとんどの人はその瞬間にやめようと思い、事実やめるでしょう。しかし、今、やめていないのは、本気でやめる気がないからです。そうなったらやめればいいと思っている。

このことをもって喫煙者を攻撃する人もいます。かつてはヘヴィスモーカーだった知人と久々に会ったら、彼は禁煙のために高い金を出して入院して、そこでこんなことを言われたそうです。

「“死ぬまでタバコを吸う”と言っている人たちでも、いざ入院してしまえばまずくてタバコなんて吸えなくなる。死ぬまで吸うことなんてできないのだ」

この言葉で彼も禁煙する決意を固めたらしいのですが、どこまでバカかと。金を出してまで禁煙することもバカですが、こんなことを言われて信じるのもバカです。だったら、他のあらゆる人間の楽しみもやめるべきですし、生きることもやめた方がいい。

車の運転が好きな人も、仕事が好きな人も、セックスが好きな人も、旅行が好きな人も、食い物が好きな人も、酒が好きな人も、死にの至る病で入院したら、それぞれ実行はできなくなります。ゼロにはならなくても、制限はされる。だからといって、「やる意味がない」と言っていいなら、すべてをやめるべき。それどころか、「どうせ死ぬのだから、生きていともしょうがない」ということにもなります。とっとと死ね。

論理になっていない、くだらねえ論理ですが、『禁煙セラピー』もこれに限りなく近い愚論に満ちてます。

この人がタバコをやめられなかったのは、以下の理由。

—————————————————————–

 それでもタバコを吸えばリラックスできると思ってましたし、自信もつくと信じていました。

—————————————————————–

なんだよ、ちゃんとメリットがあったんじゃねえか。そのくらい自分で見つめろよ。

タバコにはメリットがある。そこから始めないと事実とかけはなれたデマになります。このことをわかっているくせに、そんなものはまったくなかったことにして、滔々とタバコの害を説き、禁煙を勧める。

本書の始まり近くで、こう宣言してます。

—————————————————————–

 私はこれからタバコには何も利点がないことを証明していきます。

—————————————————————–

結局のところ、ここまでさまざまな禁煙本が指摘してきたことのコピーを延々とやってといるだけで、この本にはオリジナルらしきものがありません。本当にひどい本なのです。

こんな本で禁煙をしようと思う人間はことごとく死ねばいいと思います。ごく近いところにもそうしようとした人間がいて驚きましたが、一度はやめつつ、結局彼は今もタバコを吸ってます。そんなもんでしょ、この本の効果なんて。

『禁煙セラピー』は悪質な詐欺本です。こんな本が売れたというだけで絶望的な気持ちになります。

なのに、どうして売れたかと言えば詐欺だからです。普通の神経をしていれば決して書くことのできない【読むだけで絶対やめられる】なんてフレーズを大書し(これは日本の出版社によるものなのかもしれませんが)、本の冒頭で【世界中の喫煙者にタバコをやめさせてみせる】と豪語しておきながら、その逃げ道もちゃんと用意してあります。

【あなたの方法は私には効かなかった】
という苦情がよくあることを紹介して、【私の指示に半分も従っておらず】と予め言い逃れてます。宗教の教祖が、「悪いことが起きたのは、まだ信仰が足りないためだ。もっと寄付しろ」というのと一緒です。「オレは間違ってない、お前のやり方が間違っている」というわけです。

これがありなら、どんなことでも言えます。「この本を読んで幸せになれなかった人はいない」「この本を読めば不老不死になれる」などなど。もはや詐欺なんてこの世から消滅です。詐欺が消滅していないこの社会においては、まさにこの本は詐欺と言っていい(続く)。

< <<<<<<<<<マッツ・ザ・ワールド 第1652号>>>>>>>>>>