2008-05-02

お部屋1481/あれやこれやの表現規制 15

スポーツ選手や芸能人の写真の扱いについて、「報道写真として雑誌の中に使用するのはいいが、表紙や帯に使用するのはまずい」という話がよく出ます。

同じくパブリシティ権として、本のタイトルに著名人の名前を使うのもまずいという話も聞きます。『村上春樹論』という本は出せないのかって話になってしまうため、これには疑問があるのですが、芸能界を中心に、だんだんそういうことが主張されるようになってきてます。

裁判にはなっていませんが、雑誌の表紙に無断でスポーツ選手の似顔絵を出してクレームがついて、肖像権の使用料を払ったという話もあります。たしか30万円だったと思います。これも表紙だからこそです。似顔絵自体がダメだってことになったら、山藤章二は商売あがったり。

職務中の政治家には肖像権がない(権利主張ができない)と言っても、商品のパッケージや広告に使用するとさすがに問題になります。

これらは財産権の問題ですが(あるいは不正競争防止法にも抵触するかな)、無名の人であっても、広告や商品パッケージに使用されたら、文句をつけていい。デモに出ている写真は報道されてもいいとして、「汗をかいたらコカ・コーラ」といったコピーとともに、広告に勝手にデモに出ている写真が使われたら私も文句を言うかもしれない。長野の聖火リレーのスポンサーを降りたのは評価するとして、それとこれとは話が別です。

宣伝物については、程度は違えど、無名の人でも、財産権としての肖像権が発生するということなのか、報道と違って、肖像権行使を制限する条件がなくなるということなのか、どっちかよくわからないのですが(財産権がいきなり出てくるわけではないので、おそらく後者だと思います)、いずれにしても、別枠ということになります。

映画のパンフやチラシの場合、内容をそのまま紹介するものですから、一般の商品のパッケージや宣伝物とはまったく同じに扱うべきではないでしょうが(あるいは、内容をそのまま紹介する限りにおいて、一般の商品のパッケージや宣伝物と同じに扱うべきではないと言うべきか)、すぐに目につくパンフの表、チラシの表、ポスターについては許諾が必要という考えも、十分に理解できます。

しかし、このパンフの写真は、そもそも肖像権が発生するのか? わざとそうしたのだと思いますが、モノクロで陰影が強く、ドットを粗く処理してあります。4色カラーのパンフにもかかわらず。もしそのような処理をしていなかったら、もっとはっきり顔がわかったでしょう。あえてわからないようにしているのは、デザイン上の工夫ではなく、肖像権の配慮ではないかと推測できます。

顔全部を消したり、モザイクをかけなくても、目を隠すだけで肖像権に対する配慮があったということになります。だから、雑誌でもこれをやる。この写真も、目の部分は潰れていて、目線が入っているのとほとんど同じです。

私の知人は、写真自体は誰かわからないようにしてあったのに、キャプションで誰かわかるようにしていたために訴えられて、損害賠償金を払ってますから、「目さえ伏せておけば何やってもいい」ってことではありませんが、そもそもパンフのこの彼は特定されると困るとは思っていないようです。

制服を着てはいても、それが本物かどうかの判断はつきませんし、本物の制服だとわかっても、現役自衛官かどうかの判断はできない。にもかかわらず、有村議員はわざわざ国会で現役自衛官であることを公開しているのですから、特定されてもまったく問題がないと有村議員が認識していることがわかります。

特定されて困るのであれば、現役自衛官であることを出すはずがない。現実に特定されてなんらかの不利益が生じた場合は、有村議員こそ、その責任を負うべきです。誰かわからないようにしてあった映像や写真に、いわば「現役自衛官」とキャプションをつけたのが有村議員です。

特定されるかどうかではなく、ここに使用されたこと自体が不快であるということであっても抗議するに十分な根拠ではありますが、仮にこれに問題があったとしても、文化庁にいちいち文句を言うような話ではあるまい。一体有村議員や、それを支持する人たちは何を騒いでいるのでしょう。

もうちょっと続く。