2008-04-19
お部屋1462/あれやこれやの表現規制 11
http://www.asahi.com/national/update/0418/TKY200804180326.html?ref=rss
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「駄作」「労作」…右翼系団体の活動家ら「靖国」試写会
2008年04月18日21時09分
上映中止で話題の映画「靖国」をめぐり、主に右翼系団体の会員向けの試写会が18日、東京都新宿区のライブハウス「ロフトプラスワン」で開かれた。試写後、参加者らは「駄作」「労作」「靖国を理解していない」「反日とは思えない」など賛否の意見を交わした。
主催側のロフトによると、全国から活動家ら約150人が集まった。試写する機会を設けたいという右翼・民族派団体幹部らの要望や相談を受ける形で企画したという。呼びかけ人の一人、木村三浩・一水会代表は「右翼が上映を中止させたかのような間違った言われ方をされていたから」と説明した。
同血社の河原博史会長は「個人としては、日本民族に根ざした信仰心を侮辱するものを感じた」としながら、「意義ある会だった。右翼が反社会的というイメージは違う。だれもが(映画を)見もせず抗議するわけでもない。大事なのは表現者同士のガチンコ(勝負)。そういう意味では映画館が屈してしまったのは問題だと思う」と話した。
試写後は、会場で活発な意見が交わされた。文化庁の公的助成に納得できず「返還を求める訴訟を起こす」という声が出ると、「我々も助成を受けて親靖国映画を作って反論すればいい」。「別になんということもない作品なのに、メディアが注目をあおった」との意見もあった。
(略)
一水会の鈴木邦男顧問は「試写会を開き、建設的な議論ができたのはいいことだ」と話した。
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ホントにいいですね、この試みは。
見もせずに、思いこみで批判するような連中ばかりで、ほとほと私も呆れてましたが、これでもう少しまともな議論が出てくるのではないかと期待できます。
「別になんということもない作品なのに、メディアが注目をあおった」という意見は正しくて、この場合のメディアというのは、まずは「反日映画」だと決めつけた「週刊新潮」であり、続いてそれを煽ったのが稲田議員ですが、それらの言葉から、ものすごい映画を期待すると確実に失望します。
しかし、靖国神社に関するなんということもない映画でさえ日本人が誰も作らなかったことの意味は考えるべきでしょう。「駄作」「靖国を理解していない」と言うなら、実際、助成金をもらって「親靖国映画」を作ればいいんですよね。
もう二十年近く前になると思いますが、鈴木邦男にインタビューした際、「右翼には表現の場がない」と言うものだから、「街宣車に一千万円もかけておいて何を言っているのか。その金で雑誌を出せばいいではないか」と反論しました。街宣車に金をかけられるほどの金のない一水会の代表(当時)の鈴木さんも「その通り」と合意してました。
今はそういう努力をしている右翼は少なくないですが、とっくに一水会は「レコンキスタ」を出していて、だからこそ、表現をすることの厳しさをわかっているのでしょう。街宣車で恫喝することに比べて、出版や映画は大変な作業です。それを規制し、制限するようなことにはいちいち抵抗をしていかないと、右翼だって困ることになります。
つうわけで、肖像権。人格権としての肖像権とはどういうものであり、どういう場合に問題となるか、おわかりいただけたと思います。
肖像権と表現を互いに成立させる境界線として、ここまで書いたようなところが妥当なラインであり、これ以上の肖像権の主張は認めるべきではないと考えます。さもないと、表現は簡単に潰されます。
例えばマイケル・ムーア監督の作品を潰したいライフル協会や医療業界は、潤沢な資金をもとに、背景に写り込んでいる人たちを探し出して肖像権侵害で訴えさればいいわけです。
それができるのであれば、マイケル・ムーアの作品はとっくにすべて潰されてましょうから、アメリカでは、このような主張はまったく成立しないことがわかります。もちろん日本でも同じです。
違うのは、日本においては肖像権および表現の自由の意義が十分には(「まったく」か?)理解されておらず、これをわざわざ国会で取りあげる議員がいて、それを支持してしまうメディア関係者がいて、その言葉にまんまと騙されて、映画を観てもいないのに鬼のクビをとったかのようにネットで騒ぎ立てる人たちが多数存在することです。
では、この人たちは、なにをもって「肖像権が守られてない」と断定するのでしょうか。なーんも考えてないべ。ただもう「靖国 YASUKUNI」は「反日映画」だから、中国人の監督だからイチャモンをつけたい。それだけとしか思えません。
前振りが長くなったので、今回はここまで。
4月19日午前4時ごろの段階で、まだ、この『靖国』上映後の民族派による討論会の再放送が見られます。必見です。とにかく面白いです。
こちら(http://www.ohmynews.co.jp/news/20080417/23606)
で、再放送というところをクリックすると見られます。
あの中で民族派パネラーの中で最長老とおぼしき山口申氏が述べていたことが、私には印象的でした。
「東京大空襲を経験した自分としてはあの映画を見て(共感して?)泣けた」「中国人の監督が、中国の資本も使って撮ったのだから、南京虐殺のイメージはいれざるを得なかったのではないか(だから、それを責めるのは気の毒?)」「我々の世代は、いいか悪いか?、より敵か味方か?の方が重要だと教わった(この中国人監督を山口氏は味方と感じて、肖像権だなんだ、という善悪の議論をする若い右翼をいさめている?)」以上、( )の中は、勝手な私の感想ですが、興味深い発言の数々が聞けてありがたかったです。
何か、あの戦争を経験した世代と全く知らない世代では、愛国も靖国も同じ言葉でも全く違う意味をもっているような気がします。
もしかしてこの中国人監督が撮った『靖国』は香港や韓国ではともかく、中国本土では「中国人監督が撮った親靖国映画」として上映禁止になっているんじゃないかしら。
観ました。面白いですね。考えるところが多かったので、これについては、本日分のエントリーで書きました。