今回、ゲイ&レズビアン・ブックの選書をするにあたって、bk1の検索を利用したのだが、「同性愛」「ゲイ」「レズビアン」といったキーワードを入力するだけで、多数の関連書籍が瞬時に画面に表示されるというのに驚いた。そしてそのこと自体が、現在のレズビアン&ゲイの置かれた時代状況を反映しているようにも思えた。
思春期の私が自分のセクシュアリティについて理解したいと切望した、今から20年前(!)では、まず、同性愛に関して言及している本を探すのが難しかったし、実際、それを中心テーマに据えたものはほとんどなかった。図書館や書店で必死に探しても、異常心理学のたぐいの翻訳書にたどり着くのが関の山だった(当時、そういう本を読んでかえって暗くなってしまう当事者も多かった)。
そんな中、私を勇気づけたのは、大学の図書館で見つけたモートン・ハント『ゲイ――新しき隣人』(河出書房新社、1982)という翻訳書だった。同性愛に肯定的なストレートの男性によって書かれたもので、アメリカのゲイ状況を紹介した一冊だったと記憶する。今になってみれば、その本にもどうかと思うような記述もあったのだが、当時の私にとっては、自分のセクシュアリティ(その言葉自体、80年代にはまだ一般に用いられてなかった!)を否定したり、治療の対象とするのではないというだけで、救われたような気がした。言葉が人の「生」を深く支える、という意味で、書籍の役割はきわめて重要だろう。
けれども、本当のところ当時のリアリティでは、肯定的だろうが否定的だろうが、同性愛について触れていてくれるのなら、それらはすべて救いになっていたかもしれない。なぜなら、世間はそれ以前に、同性愛者の存在などないものとしていたし、「ホモ」や「オカマ」は書籍でまともに取り上げるような対象ではありえなかったからだ。
あれからおよそ20年の時を経て、今日では、「選書」しなければならないほど同性愛の関連書籍が市場に流通している。この間ずっと、そうした本の出版動向に注目してきた私も、今改めて振り返ってみると、その変化に目を丸くするばかりである。1992年に出版された『別冊宝島・ゲイの贈り物』(宝島社)のリストと比較してもよくわかるのだが、とりわけ人文や社会の分野での出版点数の増加は圧倒的だ。かつて同性愛の情報にとにかく渇望していた時代を考えると、夢のような状況だと言える。
これらのリストを眺めるだけで、現在のゲイやレズビアンの自己肯定感と、社会における相対的な認知度の上昇が、そうした書籍による情報効果に関っている、というのが容易に推測されるだろう。当事者と、そのサポーターの努力によってなされた同性愛の「革命」が、ここにもあったのだ。私自身、こうした出版におけるムーブメントに微力ながら参加できたことを、非常に誇りに思う。
そして今後、さらに多くの人たちが「読者」として、この言説における実践に合流していただければ願う。それによって私たちは、より充実した知の財産を継続的に享受することができるはずだ。
ぜひとも、この冊子を参考にして、書店で、今の貴方に必要な一冊を見つけてほしい。そうした出会いがまた貴方を、人生の新しい可能性に導いてくれるに違いない。
●レズビアン&ゲイ・ライフ
●セクシュアル・マイノリティ
●同性愛の歴史
●クィア・カルチャー
●レズビアン&ゲイ・スタディーズ
|