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[第4章●デジタルな環境構築]
6… 短縮形単語登録はしないというウソ
[2005.08.05登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

すみません。ぼくはずっとウソをついておりました。謝ります。ガバっ。(←平伏の音)

日本語漢字変換システムの単語登録に関して、ぼくは著書や記事のなかで、10年以上の長きにわたって、入門者向けに「勝手に単語を短縮して、それでもって単語登録しない」ことの重要性を書き続けてきた。

「勝手に単語を〜」とは、たとえば「甘南備高原」を「KANNABIKOUGEN」変換とタイプするのが面倒だからといって「かこ」で単語登録するような行動をいう。コンピュータを(またはキーボードを)始めたばかりの人は、キーのタイプが思い通りの速度にならない。キーを打つのがもどかしい。だもんで、えてしてこういう登録の仕方をしがちである。

これはやめましょうね、というのがぼくのアドバイスだった。

理由はいくつかある。まずその最大のものは、キーは打てば打つほど(しかも思いのほか短時間で)打鍵速度が向上するからという理由である。

最初は雨だれ式タイプであっても、そのうち考える速度と遜色ない速度でタイプできるようになる。そのためには練習がなにより必要であって、その練習のためにも、発音通りにタイプするということを、少なくともしばらくの間は自分に課した方がいいと思うのだ。

それにむやみに短縮形で単語登録すると、どんな単語をどんな短縮形で登録したか、わからなくなってしまう。甘南備高原は「かな」だったかな「かんこ」だったかななどと、文章をタイプしている最中に別のことを考えなきゃならなくなる。これはとても非効率だし、考えの流れを妨げる要因になる。

短縮登録は、辞書のゴミにもなる。「内蔵」を「内臓」と誤変換しても、自分も読み手もなんとなくわかる(カッコわるいことはわるいが)し、元の形に戻す作業も比較的容易である。しかしたとえば「どうかこの子を」というフレーズを、辞書がなにをとちくるってか「同甘南備高原の子を」と変換してしまったらどうだろう(つまり「かこ」を「甘南備高原」に変換しちゃったわけですな)。この誤変換から、元の形を想像できる「他人」はおそらく存在しないだろう。えてして自分だってわからなくなるはずだ。こういう誤変換を修正するのは、自分自身でもストレスがたまり、時間がかかる。他人にはほぼ不可能だ。

それに、短縮登録を多用すると、短縮登録依存症にかかってしまう。そうした辞書がなければ、文章がかけなくなるのだ。つまり、短縮登録がドバっと登録されている自分のコンピュータ以外では、文章を入力できなくなる。人のマシンとか、買い替えたばかりのコンピュータではイライラするばかりで、短い文章もタイプしづらくなる。コンピュータはいきなり壊れることもあるわけだから、わざわざ自分をスペシャルな方向に(あるいはニッチの方向に)進化させるのはよくないんじゃないかとも思うのだ。

そういう理由で、妙な短縮登録はやめたほうがいいですよ、と言い続けてきた。数ヶ月辛抱したら、べつに短縮に頼らなくても、ちゃんとタイプできますから、と。

もし、そんな登録にいそしむだけの時間と意欲があるなら、タイピングの講習に通ったらどうですか。数日間のトレーニングでみるみる上達しまっせ、と。

ただ、「普段使っている言い方での短縮登録はまだ許される」原則というのはある。たとえば「文部科学省」を「もんかしょう」、「静岡東高校」を「ひがしこう」、「トレーシングペーパー」を「とれぺ」などというのはいい。それが自分がコトバの上で日常的に使っている短縮形であれば。

頭の中では「文科省の今度の決定はあかんなあ」という具合に発想しているわけだから「もんかしょう」が「文部科学省」に変換されても、脳内のプロセスを乱してしまうようなことがない。言文一致に近いタイピングで「文部科学省の今回の決定にはいくつかの問題が存在する」となる。

こうした考え方は、原則として今でも正しいと思っている。しかし、これはあくまで原則であって、ほかならぬぼく自身が、この掟を破った短縮登録を行っている事実がある。これはいかんなあ。ずるいなあ。謝っておこう、というわけだ。

掟破りその1は、ぼくの携帯電話の番号だ。「けーたいばんごう」変換とすると「080-***-****」という自分の携帯電話の番号に変換される。これはいつまでたっても自分の番号が記憶できないことへの苦肉の対応なんだけど、ま、掟破りであることには違いない(でもとてつもなく便利なのだが)。

この便利さにひきづられて「じたくじゅうしょ」で住所が変換されるようにもしている。半角数字やハイフンまじりの文をタイプするのは面倒だしね。

このふたつよりもっと多用しているのは、「HTMLタグの短縮形登録」である。

ぼくはHTMLをタグ付きで手打ちしている(Webページ作成ソフトを使っていないという意味)。それについての説明は長くなるので機会を改める。タグをエディタで直接文章内に書き込んでいくのは、慣れれば、まったく難しいことではないのだが、半角全角の切り替えが頻出するとか、シフトキーを押さなきゃ出ない文字がいっぱいあるなどのことから、いささか面倒であることは否めない。

そこで、恥ずかしながら、いくつかのタグを短縮形登録しちゃっているのだ。

たとえばリンクのためのタグ<a href="">〓</a>を「あはれふ」で、引用のためのタグ<blockquote></blockquote>を「ぶろくお」で登録しているのである。まず「あはれふ」変換としてからURLやページタイトルを書き込むという手順を取る。

ウソをついていたとは、おもにこういうこと。やるな、といいつつ、自分がやっていたということを指す。「ぶろくお」が短縮形なんだろうかとかという言い訳はあるものの、いずれにしても言行不一致をとがめられても、致し方ないかもしれない。

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アキトさんより
ご意見いただきました

[2005-08-08]

htmlの短縮はやっております

りんく、だんらく、いんよう、りすと、と意味を対応させる類と、おl、みたいに音対応の二種類でやってます

石田 豊さんより
ご意見いただきました

[2005-08-09]

仲間がいてうれしいです

アキトさん。仲間がいて嬉しいです。
ぼくは「日常語と読みがダブらない」ということを最優先しています。「いんよう」などで登録すると、通常の文章をタイプしているときに、うっかりタグに変換してしまい、かつ、うっかり確定してしまい、チ、ということになりませんか?

NTJ会長さんより
ご意見いただきました

[2005-08-29]

短縮登録よりも…

通りすがりの者ですが・・・
短縮型登録の最大の問題点は、「同甘南備高原の子を」に尽きると思いますねぇ。
つまり、「かこ」なんて「平仮名の言葉」を読みにするのがいけない。
短縮型登録するのなら、記号化登録をお勧めします。
「まず普通は使い得ない読み」にする手法ですね。

あたしのお勧めは、読み「q」です。
ここへ非常に使用頻度の高い文字列(名前やら住所やら)を登録してみてください。
誤変換はほとんど発生しない上、高頻出文字列がワンキーで入力できますので、相当に便利ですよ。

・・・逆にあたしは、それ以外の登録はほとんどしません。
はい、HTMLタグも全部平打ち・・・

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