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[第4章●デジタルな環境構築] 1… メールアドレスは変更したくない |
[2003.12.11登録] |
石田豊 |
いまさらここでメールの重要性を云々する必要はないだろう。もう電話と並ぶくらいのコミュニケーション手段になっているし、そしてその重要性は今後もますます増大していくと思う。 個人が社会とつながっているための「窓口」として、いままでから「住所」と「電話番号」が存在していた。住所があるから、そこで郵便を受け取ることができ、電話番号があるから電話での連絡を受けることができる。住所も電話もなければ、われわれは社会生活を送ることが、なかなか難しくなる。 メールアドレスもまた「窓口」のひとつだ。しかも、住所、電話番号といった「窓口」に比べると、非常に安全な窓口である。 社会に対する窓口がないと、われわれはまともな社会生活を送ることは難しくなる。しかし窓口を作ることで、さまざまのリスクを受け入れることにもなる。住所や電話番号を知られてしまったことで、大小の迷惑や被害を受けたという経験を持たない人はほとんどいないだろう。 メールアドレスも同じ。しかし、そのリスクは住所や電話番号といった窓口に比べると、非常に小さい。メールアドレスを知られたからといって、いきなり空き巣に侵入されるわけでもないし、深夜の電話に驚かされるわけでもない。せいぜい迷惑メールを受け取るくらいですんでしまう。 私は自営業者であるから、とくにそう思うのかもしれないが、メールアドレスは、大袈裟に言えば、社会に対する最後の橋頭保なのである。メールアドレスがあるから、シゴトの依頼も来るし、アソビの誘いも来る。何十年もつきあいの絶えていた旧友からとつぜん連絡があるのもメールあってこそのことだ。 メールアドレスはダイジなのである。できればずっと変えたくない。だのに、なかなかそうも言っていられない状況になってきている。 「アドレス変更って面倒だな」 10年も前なら、それだけのことだった。その頃はメールなんてもの自体を使っているのが少数であったから、その少数の中で自分と付き合いのあるひとたちに対し、アドレス変わりましたメールを出せば、それですむ。ただ、そうしたメールを打つのが面倒だった。いちどだけメールのやりとりをした相手にまで出すわけにもいかず、そうかといって、その相手から、この先一生涯メールを受け取りたくないわけでもない。どうしようか、なんて思い迷うことからして、面倒なのである。 最近のように、メールでのコミュニケーションが浸透してくると、単に面倒なんて言っていられなくなってきた。無闇にメールアドレスを変更することが、大きな問題を引き起こしちゃったりする。なかなかおいそれとアドレス変更ができなくなった。 しかし、それなのに、昨今はメールアドレスを変えざるをえない事情が、前よりは頻繁に発生するようになってしまっている。 私も以前はプロバイダから提供されたメールアドレスを使っていた。しかし、プロバイダ界(ってコトバがあるかどうか知らないが)は戦国乱世で、価格やサービスの競争はとどまるところを知らない。私は保守的な人間であって、多少の価格差があっても、いままでの贔屓をすてて、価格だけで右顧左眄するような男じゃないんだけど、ここまで激変すると、どうしても乗り換えを検討せざるを得なくなる。 接続方式も、どんどん新しいのが出てくる。ダイアルアップからケーブルテレビ、ADSL、光(FTTH)……。これからもどんなもんがでてくるか、わかったもんじゃない。今私はNTTのBフレッツを使っているが、同じ光でも東京電力のやっているのとか、有線放送会社のやっているのとかもある。価格やサービスの理由でもって、いつ、そちらへ移るかもわからない。 プロバイダ乗り換えで、心理的なネックになるのは、メールアドレスが変わる、ということだ。 私もメールアドレスを変えたくないばかりに、OCNエコノミーをずっと使っていた時期がある。月額三万円だ。ADSLがずんずんのしてくる状況を横目で見ながら、毎月三万円を支払い続けた。ADSLにすれば(当時)月額6,000円で、OCNエコノミー(128Kbps)を上回る速度(1.5Mbps)でのアクセスが可能になる。速度アップもさることながら、価格はなんと1/5だ。でもアドレスがなあ……。 こういう煩悶って、とってもキライ。なにが悲しくて、メルアドごときでクヨクヨしなくちゃならないんだ。 「メールアドレスの永続性」を真剣に考え始めたのは、そんな頃だった。 メールの重要性が増してくるにしたがって、同じメールアドレスをずっと使い続けるということの意味は大きくなる。今後もその構造はかわらない。しかし、プロバイダから支給されているアドレスを使い続ける限り、アドレスの「生殺与奪」権は他人であるプロバイダ業者に握られ続ける。なにも乗り換えってことを考えないでも、倒産もするだろうし、他の会社と合併したり名称が替ったりもするだろう。そのたびにメールアドレスの変更をしなくちゃならない。 私自身には無縁だが、会社から支給されているメールアドレス*だけ*でもって世間につながっている人でも、事情は同じだ。このご時世、会社のはかなさは言うまでもないし、会社内での個人のはかなさはその数十倍だ。つつがなくいっても、60になれば放り出されるのである。そうなったら、世間との接点を失ってしまうじゃないか。 「メールアドレスの永続性」を考えるなら、結局のところは、自分のドメインを持つしかない。自分のドメインを持っていたら、とうぜんなにがしかの費用は発生するけど、その費用を負担しているかぎり、メールアドレスは永遠である。 それまでもよく「イシダさんって、じぶんのサイト、なんで持たないの?」という質問はよくされていた。 「だって、世界に発信したいことなんて、何もない」 ってうそぶいていた(今も基本的には変わらない)が、自分のドメインを持つということは、なにも自分のwebサイトを持つということではなく、永続可能な自分のメールアドレスを確保する唯一の方法だということに気がついたのだった。 そこで、わたしは自分のドメインを立ち上げた。以来、私のメインのメールアドレスはyutakaishida@wakam.comであり、これは金さえ払い続ければ、いつまででも確保しつづけられる。そしてその金額というのは(自営業者だからなのかもしれないが)、決して高すぎるというほどのものではない。 そこで、「メールアドレスの永続性を確保するための独自ドメイン取得とその運用」。次回は具体的な金額と方法を。 |
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*匿名*さんより [2004-11-27] |
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