2008-12-11

図書館総合展雑感

随分と時間がたってしまったが、今年の図書館総合展の感想。

今回は時間の都合でフォーラムに参加できなかったので、図書館退屈男さんにご挨拶に伺い、あとは幾つか気になるブースを覗いてきた。

東京の自宅から2時間かけて出勤し、3時間勤務して、そこから3時間かけてたどり着いたパシフィコ横浜。到着したのはもう16:00頃だった。

主催者発表によると年々若干ずつ入場者は増えているそうだが、フォーラム参加者は増えても、出展ブースを見て歩く人は数年前と比べると減っているように感じられた。
恐らくフォーラム会場と展示会場が離れていたから、余計にそんな印象を受けたのだろう。出展者(スポンサー)にとっての魅力が減らないよう、出展者と参加者双方のニーズを汲んだ動線を考えるとか、会場に何か工夫した方がいいんじゃないかという気がした。

あまり時間がなかったので、図書館システム関連のブースを中心に見て回っただけだが、景気のせいか、ハードウェアは全体的に去年とそれほど変化がないように見えた。
それに対してソフトウェアは、今のネット社会に図書館をどう融合させようかと試行錯誤している感じがして、今後どうなっていくのか興味深いものもあった。

そんな中、残念ながらマイナスの意味で気になったシステムがあった。
館外の情報源に利用者を導く機能が、10年くらい前からまるで進歩していないのだ。
そういうシステムがまだ販売されていて、しかも結構普及しているというのだから驚く。
多くの図書館員がそれを選ぶのは、何を決め手としているのだろう。
システムに対する知識や関心が低いのか、システム選定に口を出せない状態にあるのか、それともそもそも図書館に司書がいないのだろうか。
ともかくこれでは、利用者に「図書館の情報サービスなんてこんなもんだよ」と思われかねない。

ひょっとしたらそのメーカーは、情報アクセス支援機能は図書館パッケージシステムの守備範囲外だという判断から、敢えてそうしているのかもしれない。
多くのシステムは、いかに利用者を外部の情報源に導くかに腐心する一方、外部リソースの活用から更に考えが一歩進んで、OPACへの導線をCiNiiやiGoogleといった外部に求める流れも話題を集めている。
そんな文脈から、横断検索で外からOPACが検索される際の検索漏れをどうするかといった話が出てくるなど、もうどんどん先に進んでいる。

確かに、普段使っている茨城県図書館情報ネットワークシステムの横断検索では見つからなかった資料が、個別の図書館OPACでは容易に出てくるケースがよくある。
以前はこれを、各館OPACの仕様の違いを吸収できない横断検索システムが悪いんだと思っていたが、iGoogleなどを考えると個々のOPAC側をどうにかしないとダメなんだということに、最近気づかされた。
旧態依然とした図書館サイト中心の発想から、外からデータを見つけてもらえるよう開放的なモデルに進化していくには、確かにここが1つの関門だろう。

レファレンス管理やAVブース管理のような、他の何かで代用できるものよりも、OPACを構築する各メーカーにはこうした部分こそ本当に考えて欲しい。

図書館システムといえば、今回一番気になっていたのがProject Next-L。
何とかフォーラムに行きたかったけれど、仕事の都合で泣く泣く断念した。
ああいったユーザーサイドからのボトムアップで仕様を決めていくプロセスは見ていて面白いと思う。
株式会社まちづくり三鷹が、Ruby言語で図書館システムを開発したというので説明会に行ってきた時にも感じたことだが、大メーカーのように過去の資産に縛られない、新しい設計思想が出てくるのは喜ばしい。

あとは、オンラインデータベースのブースを見ていてちょっと思ったことがあったのだけれど、それについてはもう少し考えて、[本]のメルマガ2009/1/15号に書いてみようと思う。