2008-05-28

お部屋1519/あれやこれやの表現規制 4-8

先週はいろんな動きがありました。まずは与党案が出たことを見ておきましょう。

http://www.asahi.com/national/update/0522/TKY200805220318.html
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児童ポルノ、単純所持も禁止 与党PT案、厳罰化へ

2008年05月22日22時06分

 自民、公明両党の児童ポルノに関するプロジェクトチーム(与党PT、森山真弓座長)は22日、児童買春・児童ポルノ禁止法を厳罰化する改正案をまとめた。個人的に収集・所持する「単純所持」を原則禁止し、性的好奇心を満たす目的の場合は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」の罰則を定めた。

 一方的に画像が電子メールなどで送りつけられた場合などは処罰しない。罰則は施行1年後から適用するとした。

 インターネット接続業者には、捜査機関への協力や掲載防止措置を講じる努力義務を課す。一方、マンガやアニメなどの単純所持禁止や児童ポルノサイトへの接続を遮断する措置の導入は見送り、今後の検討課題とした。

 児童ポルノの定義変更を伴う改正案をまとめている民主党と同様に、与党側も今国会の提出を目指すが、両案には隔たりがあり、今国会の成立は難しい情勢だ。(勝亦邦夫)

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【一方的に画像が電子メールなどで送りつけられた場合などは処罰しない】【マンガやアニメなどの単純所持禁止や児童ポルノサイトへの接続を遮断する措置の導入は見送り】という点に配慮が少しはあるかもしれませんが、後者については【今後の検討課題】ですからね。とても評価できるような内容ではありません。

その数日前には、民主党案も骨格ができたと発表されてます。

http://www.asahi.com/politics/update/0522/TKY200805210324.html?ref=rss
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児童ポルノ「単純所持」、処罰対象を限定 民主が案

2008年05月22日03時02分

 民主党が児童ポルノの定義見直しなどを柱とする児童買春・児童ポルノ禁止法改正案の骨格をまとめた。個人で収集する「単純所持」にも罰則を設けるが、対象は「みだりに収集、または有償で取得した場合」に限定。今国会への提出をめざす。

 児童ポルノ禁止法は1999年に議員立法で成立。単純所持の処罰は当初から検討されたが、「プライバシーの侵害につながる」といった指摘から見送られた。ただ、児童虐待を防ぐ国際的な取り組みを呼びかける米国のシーファー駐日大使が今年3月、鳩山法相に単純所持を処罰対象にするよう協力を求め、与党も法改正を検討している。

 与党案は単純所持を一律に禁止したうえで「性的好奇心を満たす目的で所持した場合」に懲役1年以下または罰金100万円以下を科す方向。民主党は「恣意(しい)的な捜査や自白の強要につながりかねない」として、処罰対象を具体的な行為に絞った。両案の隔たりは大きく、ともに今国会成立は困難な情勢だ。

 民主党案では、児童ポルノの定義も見直す。「他人が児童の性器などを触る行為または児童が他人の性器などを触る行為に係る児童の姿態」との現行規定を「性器などをことさらに強調するなどして示す」ものに改め、「衣服の全部または一部を着けない児童の姿態」という規定をあいまいだとして削除する。

 法の名称も「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の前半を「児童の性的虐待及び性的搾取にかかる行為等」に変える。(秋山訓子)

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単純所持を【みだりに収集、または有償で取得した場合】に制限したことによって、図書館が対象となることはないってことでしょう。【有償で取得】は、法の施行以前に遡らないということなのでしょうから、すでに所有しているものも対象にはなりません。

しかし、一般の人については【みだりに収集】なのか否かをどう決定できるのか。なお、曖昧です。ここは再考が必要かと思いますが、民主党案のすぐれているのは、児童ポルノの定義を一から見直すことです。

【性器などをことさらに強調するなどして示す】と定義し直すことによって、少女ヌード、少年ヌードの多くは児童ポルノではなくなります。ここは私も賛成です。芸術か芸術でないかの線引は不可能ですから、物理的な線引をしていくべきです。

この法律を作った人々、あるいは今回改正をここまで主張してきた人たちは、「幼児が拉致され、レイプされて製造された児童ポルノ」を強調しながら、現実には本人の意思で出て、いまなおなんら後悔もしていないような17歳の単なるヌードやセミヌードまでを規制するという詐術を弄してきたわけです。

売れない17歳のタレントがセミヌードになったグラビア写真と、「幼児が拉致され、レイプされて製造された児童ポルノ」とはなんの関係もないべさ。深夜一人で歩いている人が殺された事例をもってして、深夜外出禁止法を制定するようなものです。

このあと具体的に見ていく予定ですが、現実に、児童ポルノとして摘発されているもののほとんどは、「幼児が拉致され、レイプされて製造された児童ポルノ」とは無関係です。

結局は、そういった犯罪の被害者を利用して、ポルノ総体を規制したいという欲望を満たそうとしているだけです。なんという浅ましさ、なんという猥褻さ。

だったら、「拉致され、レイプされたような例」にしぼって規制すべきであり、そうすることによってこそ規制すべき対象に集中して効果的な対策ができるはずです。

そういう話を今後ここで書いていく予定だったのですが、民主党案が出たので、先に触れてみました。

それでもなお単純所持の処罰化自体に反対するのか、児童ポルノの定義を見直して限定した範囲での児童ポルノの単純所持の処罰化に賛成するのかは迷うところではありますが、まだ自民党のサイトでも、民主党のサイトでも、これについてはアップされていないので、法案を確認したら、また論じるとして、これでやっと議論がやりやすくなるのではないでしょうか。

というのも、エロ漫画家やエロライター、オタクたちがこれにいかに反対しようとも、聞く耳を持たない人が多いのであります。存在自体軽視されていて、何も権威がありませんので。悲しい。

その点、民主党がこれを出したことによって、今までの自民党・公明党の主張、あるいはアグネス・チャンの主張がいかに杜撰で、いかに危険なものであるかを、権威が必要な人たちも見抜くことが容易になろうかと期待できます。

では、引き続き、自民党・公明党案を私なりに批判していくとします。