2008-05-17
お部屋1505/あれやこれやの表現規制 5-2
有村議員の質問を起こした産経新聞の原川記者は【有村氏が指摘した中で、映画が出演者らの承諾なしに映像を使用し、靖国神社の許可を得ずに境内で撮影されていた(善し悪しは別として、いかにも中国的!)事実は最も重要な点だと思います】と書いていたので、私としては、肖像権に絞ってここまで書いてきました。
【善し悪しは別として、いかにも中国的!】というのがどこにかかるのかわかりにくいのですが、おそらく「出演者らの承諾なしに撮影されていた」という点と「靖国神社の許可を得ずに境内で撮影していた」という点のどちらにもかかっているのでしょう。
しかし、中国こそ、撮影しているだけで公安がすぐにやってきて誰何されたり、連行される国ではなかったか。私の知人でも写真を撮っていただけで連行されたのがいます。たまたま軍事車両があったためらしい。この点で言えば、靖国神社の姿勢や、そのことを騒ぎ立てる人たちこそ中国的では?
あるいは著作権意識が希薄であるように、ルールを守らないのが中国的という意味かとも思われますが、それで言えば、肖像権のことを知りもせず、調べもせずに騒いでいる方々こそ中国的では? 肖像権というルールはそれなりに確立されているのですから、それに則った議論をしましょう。そう言えば、稲田議員も肖像権上のルール違反をしたと批判されていたそうですね。こちらにも「中国的議員!」と言っていただきたいものです。
原川記者は、「中国的」などというレッテル貼りをすれば批判した気分に浸れる人らしい。中国的新聞記者だな。意味なく私も真似してみました。「草の根的新聞記者だな」と言った方がいいか。
では、靖国神社の撮影許可を得ていないという点について検討しましょう。これについては「立川反戦ビラ事件」が参考になります。
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080412ddm041040131000c.html
————————————————————–
東京・立川の防衛庁官舎ビラ配布:有罪確定へ 市民運動に危機感 被告「司法に失望」
11日の最高裁判決で、防衛庁官舎への自衛隊イラク派遣反対ビラ配布が住居侵入罪に当たると認定された。憲法が保障する「表現の自由」を主張してきた被告の市民団体メンバー3人は「司法に失望した」と語った。ビラ配布に対する警察の摘発が相次ぐきっかけになった事件だけに、被告や支援者らは今後の市民運動への影響を危ぶんだ。【北村和巳、堀智行】
3人は東京・霞が関の司法記者クラブで会見。高田幸美(さちみ)被告(34)は「当たり前のようにやっていた表現活動が、警察の判断一つで犯罪になってしまうことに、最高裁はゴーサインを出した」と厳しい表情で語った。
大西章寛(のぶひろ)被告(34)は「民主主義が危機に瀕(ひん)している」と怒りを吐き出した。「政治弾圧は明白なのに、判決は形式論で切って捨てた。表現の自由を守るため声を上げ続ける」と決意を述べた。
大洞(おおぼら)俊之被告(50)は「悔しい」と苦渋の表情。事件を受け、神奈川県横須賀市などの基地反対グループが官舎へのビラ配布を控えたことを挙げ、「市民運動が萎縮(いしゅく)してしまっている」と訴えた。
(略)
————————————————————
自衛隊官舎にビラ配りをすること自体に共感はなく、「意味ないだろ」と思いますが、その評価とは別に、この判決は受け入れられません。
この判決は、立川テント村のみならず、あらゆる政治団体、宗教団体、私企業にも適用されます。報道機関もその例外ではありません。表現、報道も、住居侵入が適用されない「正当な理由」にはならないってことなのですから。
もちろん、個人の家の中まで入ることはそもそも許されないとして、この場合は、郵便配達、ピザやそばの出前、そのビラ配りのために、通常入ることが許されていると判断できる共有スペースです。ところが、表現のためであっても、要件を満たせば、住居侵入として逮捕されるってことになってしまいました。
続く。