2008-04-25
お部屋1473/あれやこれやの表現規制 3-5
オリコンが予約数をカウントしているという話は、「所詮オリコン」という暗黙の了解を土台にした「本当かどうかわからないもの。しかし、業界内ではそれなりには流通してしまっているもの」だったのではなかろうか。
それをそのまま雑誌でコメントしたことに烏賀陽氏のミスがあったのかもしれないですが、そもそも「出荷枚数がカウントされる」「予約もカウントされる」といった話が出てしまうのは、信頼度が低いと思われても仕方がないオリコンのやり方にも原因があります。
烏賀陽氏の言う「集計方法」というのは、さまざまな世論調査、意識調査、市場調査の報告書に添えられているようなもののことでしょう。サンプルが何人で、どのようにそのサンプルを選び出し、男女比・年齢分布、地域がどうなっていて、「記入」か「対面の聴き取り」か、といった条件を明示する。
それがない限り、数字の意味も正確にはわからず、検証することもできない。
烏賀陽氏が言っているのはおそらくそういうことであって、その立場から言えば「集計方法をほとんど公開していない」という指摘は間違っていない。CDのチャートで言えば、「出荷枚数なのか、実売なのか」「その枚数をそのまま集計しているのか、別の数字に置き換えているのか」「各店の順位をポイント化して集計しているのか」などが明示されていれば、そもそもそんな情報は流れない。少なくとも流れにくい。
これでは、さまざまな憶測が出てしまうのは当然であって、本当に信頼のある数字であると言うのであれば、すべて公開して困ることは何もない。むしろ信頼度は高まる。それを選択してこなかったオリコンが、「社会的信頼が低下した」と言ったところで説得力がない。
しかし、オリコン自身に「所詮オリコンはこんなもん」という意識しかないので、話が噛み合うはずがない。サンプル店を挙げて、期間を開示しておけば、集計方法を十分に公開しているとオリコンは考えている。かつてはそれさえなかったのですから、「ずいぶんオリコンもオープンになったものであることよ」と。
オリコンは「いい加減だけど」「所詮業界誌だけど」という通常で言えばあまり好ましくない暗黙の了解を抱えたまま、ここまで成長してきたわけですから(私にはそそう見える)、実のところ、烏賀陽氏のコメントはそれにダメージを与えるようなものではない。世間一般には「所詮オリコン」という認識はさほどないのかもしれないですけど。
烏賀陽氏のコメントを読んだ時に、どこかで「不粋」という印象が生じていまうのも否定できない。「いまさらそれを言ってもさ」といった感覚です。「だって、オリコンだよ」と。
それをわざわざ訴えたオリコンは、それ以上に「不粋」って話にしかならない。「所詮オリコン」として成長してきた前提を自らひっくり返してしまった。
音楽業界の人たちがそんなことをオリコンに求めているのかどうかって問題はあるにせよ、「所詮オリコン」から脱したいのであるならば、烏賀陽氏の指摘を受けて「だったら、すべて調査方法をオープンにしよう」と決断すべきでした。それができない事情があるのなら、そこを改善すべきでした。
業界的お約束の上に立つのでなく、社会的により信用される企業になる絶好のチャンスを潰して、オリコンは自ら「いい加減だけど」「所詮業界誌だけど」という暗黙の了解のもとで語られ続けることを選択した上に、「自分に批判的な者に対しては裁判を起こして恫喝する会社」と言われ続けることをも選択しました。
その望み通りに語り続けるまででしょう。SLAPPオリコン!
※今後こそ、「第3章/SLAPP」はこれでいったん終了。どうせすぐに次のSLAPPが待ち受けてましょうが(書きたいSLAPP企業がすでにあるのですが、事情により、もう少し先にします)。
これから長野にそばを食いに行ってくるので、明日はお休みです。