2008-04-24

お部屋1471/あれやこれやの表現規制 3-3

インターネットって便利ですね。前回をアップした直後に、ライターの橋本玉泉さんが「オリコン裁判」の判決文を送ってくれました。「金が欲しい」と書いたら金を送ってくれる人がいるとなおのこと嬉しい。

ざっと読みましたが、コメントをした人間に責任があるというオリコンの主張およびそれを認めた判決については、実のところ、私はあまり異論はないです(それだけを訴えたSLAPPとしての問題は別です)。私も時にコメントの内容を批判しますが、名前入りで発言している以上、その人の発言として批判するしかない。

新聞社など、コメントを事前チェックさせてくれない媒体もありますが、自分の納得できないコメントを出されるのがイヤなら、断ればいいってだけのこと(ここは「期待権」にも関わりますかね)。したがって、コメントをした人間が訴えられることもあるのは無理からぬところでしょう。

ただし、オリコンの主張および判決では、ゲラチェックをしたことによってコメントした側に責任が生ずるかのようで、だったらゲラなんてチェックしない方が責任逃れができるってことになりかねない。

ゲラをチェックしようがしまいが、名前を出してコメントした人間の責任は問われる場合があると考えます。「コメントしてないことを書かれた」という場合は、その旨、弁明すればいいことです。

それはそれとして、やっぱりこの判決はとうてい納得できない。恫喝のための訴訟が受け入れがたいのはもちろん、その判決も納得しがたい。被告の主張をバッサバッサと切り捨てる印象の判決文でありまして、これは綿引穣裁判長のキャラってことなのでしょうか。

たしかに根拠が脆弱と思われる点もあって、その点についてのみ被告の瑕疵を認めるのであればまだしもとして、コメント全体としては十分に根拠のあるもののように思われます。

控訴審では、さらに決定的な証言、証拠を提出するしかないのでしょうが、この判決で面白くなったのではないでしょうか。つまりは、反撃の時間をさらに得たってことです。

橋本さんに聞いて知ったのですが、この裁判以降、オリコンの株価が下落しているんですってね。これについては、烏賀陽氏自身が書いてました

ここに引用されている日経のケータイ・サイトの文章にあるように、安直で、品のない訴訟をやらかしたオリコンは、裁判で手に入れられるかもしれない百万円の比ではない損害を被ったようです。まだまだこれが続くってわけです。

前々回、つい私はSLAPPを法で禁ずべきといったことを書いてしまいましたが、明かな訴権の濫用については、現行法でも一定の制限がなされさていて、新たにSLAPPを禁ずることは実のところ難しくもあります。訴える権利は企業にも、金持ちにも、政治家にも、オリコンにもあるわけで、そういった存在だから、不当な不利益を甘受しなければならないってことはない。

現実に、名誉毀損で5千万円などという損害賠償請求が認められることはないのですから、被告が裁判を維持するための負担を減らすために、損害賠償請求金額を制限するくらいのことしかできないのではないか。

これに限らず、ひどい裁判、ひどい判決が多いわけですけど、法廷以外の場で、合法的に反撃することはできます。この件で言えば、どんな裁判であるかを伝えることでオリコンがどういう会社であるのかを人にわからせることはできます。

むしろ私としては、なんでもかんでも法で規制するよりも、言論でSLAPPを抑制していく方が健全のようにも思います。そのためにもとことん言論は守られるべきであり、一人一人がこういう問題に明確な考えを持つことが必要でしょう(怖いのは、自分で判断せず、人の意見に簡単に流されて、いやがらせ電話をするような人たちが多いことです)。

具体的には言論によってこんなバカげた裁判をする会社の評価を落とす。結果、株価を落とす。市民やジャーナリストを訴えるような東村山市議を選挙で落とす。うまくオチたようで。

※もう一回続く。いつになったら、「肖像権」や「セクハラ」に戻れるのやら。