2008-03-06
お部屋1421/今日のマツワル81
今週は久々に1日2本から3本配信していて、その上、毎日のように「黒子の部屋」を更新していたので、疲れました。
このあとしばらく転載はないです(たぶん)。
誰もが触れるタイムリーな話題に触れないようにしている私としては、mixiの件からそろそろ撤退して(はや)、著作者人格権の主張ができないという規約があっていいものかどうか、あっていいとしてそれが有効なのかどうかにテーマをしぼって、このあと考えてみようと思ってます。
mixiに対して私が腹立たしく思っているのは、圧倒的に財産権より人格権の方で、当初はmixiだけがとんでもないと思っていたら、すでに同類の規約があちこちにできているのですね。いいんかな、これ。
以下は本日配信したものです。冒頭の訂正はすでに「黒子の部屋」とmixiの日記には入れておきましたが、念のため、もう一回ここに晒しておきます。私が書いたことを真に受けて、そのまま書いてしまった方は訂正しておいてください。
繰り返しますが、皆さんも、著作権法を読んで、自分自身で考えて、事の是非を判断しましょう。自分で考えたがために間違えることもままありますけど。
この件についてのすべてを「黒子の部屋」に転載しているわけではないので、意味不明の箇所があるかと思いますが、気にしないでください。
< <<<<<<<<<マッツ・ザ・ワールド 第1880号>>>>>>>>>>
< パクリのリスク48>
まずは訂正です。
「利用規約第十八条絶対反対」のコミュで、規約の6条の規定から、メッセージは公開できないと指摘されました。
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1 弊社は、電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第4条に基づき、ユーザーの通信の秘密を守ります。
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電気通信事業法第4条は以下。
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第四条 電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。
2 電気通信事業に従事する者は、在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても、同様とする。
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この「秘密」にはメールの内容が含まれますので、メッセージについては、公表できないってことになります。私のミスでした。すいません。慌てて書くとロクなことはない。
「限定された友人のみに公開した日記も秘密だ」という主張もありましょうが、以前書いたように、「mixiの日記のどこまでが公表された著作物か」については確定した説はないはずで、どれほど限定されていようとも、個人の秘密であるとの主張は無条件には認められそうになく、公表されてしまう可能性はあると見ておいた方がいいでしょう。
続いてまたまたポットの日高君からのメール。
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404 Blog Not Found:News – mixiはblog化するのか?
> しかし、私が言いたいのはそれではなくて、mixiはSNSではなかったのか、ということだ。SNSの世界において、ユーザーコンテンツは公開によって価値が生じるのではなく、非公開によって価値が生じるのではなかったのか。誰にでも見せたければblogがある。そこから代価を取りたければ、有料メルマガなどの手段もすでに存在する。しかしSNSの価値は、「見せたくない人に見せなくていい」にあったのではないか。
> >
> > ところが、mixiの新規約は、「誰に見せるかはユーザーではなくプロバイダーである我々が決めますよ」と読める。むしろ私にはこの「mixiの非SNS化」の懸念の方が、よほど大事に感じる。それこそ自らの価値の否定ではないのか。
……ということで、松沢さんと突っ込みポイントがほぼ同じですね。
脊髄反射でメールしたとはいえ突っ込みが浅かったワタシは恥じ入るのみです。IT屋のくせに。トホホ。
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そこはmixiのヘヴィユーザーである私(いつから?)と、めったにログインしていない日高君との違いですね。
この文章の前半にある条文についての話は、もっぱら「書き方」の問題で、mixiの規約も、決して「著作権をmixiが得る」という内容ではありません。あくまで権利者である利用者が「許諾する」ということです。
しかし、「著作権がmixiのものになる」「利用者に著作権がなくなる」といった指摘が多数なされているところを見ると、たかが書き方によって受け取り方が大きく違ってくるのもまた事実で、mixi事務局が下手であったことは間違いない。
他社は使用目的や範囲を限定しているのに対して、mixiはそれがなかった点も迂闊ですけど、それより書き方の印象の方が大きそうです。だから、mixiも、ここを手直ししようとしているのでしょう。しかし、それだけの問題ではない。
この引用部分にあるように、SNSというクローズドなメディアにおいて、運営者が範囲を制限せずに著作物を利用できるとする規約は命取りです。
利用者とは違って、SNSはクローズドなメディアなどではあり得ないことを運営者はよーくわかっているってことでしょうし、その本音を露わにしたがために反発されたと言ってよさそうです。
「あんたは友だちだけが見ていると思って書いているんだろうけど、大間違いだぞ」という当たり前の事実を突きつけた途端にビビる人がいますからね。
以前書いたように、SNSはクライアントに性別、年齢、居住地域、職業などの顧客情報を提供できるために、広告価値が高いメディアです。紙媒体や放送媒体が危機に追い込まれるわけです。
私のように、デタラメな情報を書いているノイズ利用者が混じっているにしても(海外に在住する90歳のデータがあってもはじかれますし)、多くの人が、この部分は本当のことを書いているために、クライアントにとっては自社の広告をどういう層がクリックしたのかがわかる。
個人情報が含まれない数値という形で提供するだけでしょうが、データとして利用者を見ることに慣れてしまうと、利用者の感覚を見失うのでしょうね。ブログで通用している規約だから、SNSでもやっていいだろうと。
さらに、美神さきおが教えてくれたのですが、広告は外部の企業が出していることがあって、クリックすると、情報がそちらに直行します。これはmixiのプライバシーポリシーに書かれてます。広告で言えば大変開かれたメディアなのです。
今回のことで、SNSがクローズドで安全なメディアだなんて幻想が壊れるのは歓迎すべきことでしょう。そのために、皆が皆、海外に住んでいる90歳の老人になったら、mixiの商売は上がったりですが。
このように、SNSという特性を踏まえて的確な指摘をしている人がいるかと思えば、ひどいコメントも多数見られます。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080304-00000001-jct-sci
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インターネット事情に詳しい小倉秀夫弁護士はJ-CASTニュースの取材に対し、こうした規約が作られ承諾して参加する以上、ユーザーは規約に従うのが当然、としている。ただし、不当と思われる事態が起きた場合は、訴訟に持ち込む事が可能で、
「勝訴できるかどうかはケース・バイ・ケース。もっとも、他にもSNSは多く存在しているから、(ミクシィが)イヤなら辞めればいい」
と話している。
ITジャーナリストの井上トシユキさんは今回の規約変更をこう見ている。
「キワドイ書き込みが増えているため、発見したものを勝手に削除することを強化したいのではないか」
「ミクシィ」では盗撮画像掲載や、飲酒運転の告白、援助交際、クスリの販売など様々な「事件」が取りざたされ問題になっている。また、「ミクシィ」の悪評もコミュで展開され、そうしたことが株価に悪影響をもたらしている、との見方も出ているのだそうだ。だから、パトロールと、該当箇所の削除・変更を強化する必要に迫られているのではないか、というのだ。
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過剰な削除なんて、もうやってんじゃん。マイミクのブルによると、ゲイパレードの写真までが削除され、それに対する抗議も一切受けつけなかったそうです。
その上今回の規約改正でも、ほかの条文でこの点が強化されていて、第18条がそれを強化するためのものとはとうてい思えません。
それよりひどいのは小倉秀夫弁護士。何も言っていないに等しい。誰でも言えることしか言ってない。それと同時に、「気に入らない改正に抗議する自由もある」ということをなんで忘れるかね。しかも、入会してからの改正ですから、この論理は適用されない。
SNSの場合、人間関係ができてしまって以降、それに近い環境を別のSNSで作り出すには、時間も手間もかかり、そうしたところで、まったく同じ環境を作ることは不可能に近い。そこがブログとは大きく違う。
「いつでも辞められる。気に入らなければ辞めればいいだろ」と言ってしまうのは、いわば人間関係を人質をとられている利用者にとっては通用しないでしょう。
「どう退会するか」という話の中で、「少しずつ別のSNSに移行する」というアイデアがよく出ていることがその特性を物語ります。できるだけ同じ環境を再現するためには、「××に移りました。新しいニックネームは××です」とmixiでマイミクに通知して、みんなで少しずつ移っていく必要があります。私もそろそろ準備しないと。
原則、誰でも見られるブログと、入会という手続きを経るSNSとはここが違っていて、規約の変更は慎重であるべきでしょう。インターネットに詳しいと自称するのであれば、そのくらいのことは考えるべきです。
この弁護士には、「包括的に著作者人格権の主張ができないとする規約の妥当性と有効性」というテーマは難しすぎましょうから、私の方でこのテーマを考えてみたいと思ってます。
すでにいろんなところで、こんな規約が広がっていたことを知らなかったので、正直、驚いてます。私もまだ判断がつかず、「SNSに限らず、ブログに限らず、好ましくない」という程度のことしか現状でははっきり言えないですけど(続く)。
< <<<<<<<<<マッツ・ザ・ワールド 第1875号>>>>>>>>>>
追記(3月7日):小倉秀夫弁護士は、著作者人格権不行使の特約が有効であることをブログで述べてました。
http://blog.goo.ne.jp/hwj-ogura/e/1a2f75c34b9d6cb4faa0b2d8826bfe94
ちょうど私もここに出ている加戸守行著『著作権法逐条講義』(著作権情報センター)を引っ張り出して読んでいたところだったのですが、これを含めて、ここに出ている例は、すべて個別の著作物に関するものです。この範囲においては私も納得できるのですが、ある場で公表された複数の著作物を包括的にくくる規約の正当性はまた別途論じられるべきかと思われます。どこかですでに論じられている可能性があるのですが、まだ見つからず。