2009-04-21

お部屋1822/盗用出版社・サンクチュアリ出版

2ちゃんで知ったのですが、在特会の元会員がブログを再開しています。これから具体的なことがさまざま語られていくのでしょうが、ここまで出されたものを読む限り、とてもいい文章です。

こういう文章を書ける人が、そして、こういう考え方をする人が在特会にいたこと自体、驚きです。結局は居続けることができなかったのですから、入ったこと自体が間違いだったということでしょう。

では、本題。

前回のコメント欄に書いたように、また、以前から繰り返しているように、私は著作権侵害の責任は、出版社ではなく、もっぱら著書がとるべきだと思ってます。

書いているのは著者、つまり、著作権侵害をしているのは著者であり、著作権は著者が所有しますから、それに伴う責任が生じます。

これだけパクリが頻発すると、出版社はパクリを探すソフトを購入して、編集作業をやらざるを得なくなってきているかもしれませんが、GBS(google book search)に入っていない元ネタでは調べ切ることは不可能です。調べられる範囲で調べた方がいいとは言え、そこには自ずと限界があります。

また、著作権とはどういうもので、どういうことをすると法に抵触するかを出版社が著者に教えた方がいいかもしれないですが、ぬかりなく一から教えていたのでは、いくら時間があっても足りません。

「いやしくも表現に関わるのであれば、まして、それで金を得るのであれば、何をやってはいけないのかくらい著者は知っておけ」ということであり、出版社は欠陥のない原稿を納品することを当然に著者に期待していい。

しかしながら、出版社にも製造・販売の責任が生じますから、著作権侵害であるとの指摘を受け、その疑いがあると思えば、すみやかに著者と権利者から話を聞いて、事態の収拾に当たり、著作権侵害があったと判断したら、権利者と話し合いの上、金を払うなり、謝罪文を公開するなり、本を回収するなり、絶版にするなりすべきです。また、購入をした客に対しての謝罪もすべきであり、求められれば返品にも応ずるべきです。

それをやる限り、出版社を強く批判する気にはなれないです。

しかし、パクリであることを知りながら出版したとあっては話は別。まさに、サンクチュアリなる出版社がそうでした。

著者である中村克氏の言い分にも呆れましたが、どうせその程度の人間であろうと想像がついてましたので、「私の読みは正解」という感想しかないです。

しかし、サンクチュアリの言い分は、これまでに見たことがないほどの拙劣な内容です。

以下は、代表取締役社長の名前で出された弁明より。

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この本に掲載されたエピソードは、社内で語り継がれていたもの、インターネットで集めたものであり、ご本人の特定が困難だということで、著者の中村氏から本書の発売前より「もし実際に体験されたご本人の方からご連絡をいただいた場合には、誠意を持って対処させていただきたい」という文書を受け取っており、弊社としてはそのような形で対応させていただいております。

本書の 108 ページから 4 ページにわたり掲載されている「大きな白い温かい手」というお話につきましては、ディズニーランドに関連するエピソードを各方面の資料や関連サイトなどから取材をしていた際に、数多くの書き込みがインターネット上にあり、すでに誰もが知っている話だという著者の判断があり、掲載させていただきました。読売新聞紙上にて発表されていたエピソードだというのは、読売新聞社からご指摘を受けて、初めて知った次第です。

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つまり、この本の内容はネットからパクったものであることを知りながら出していたのです。

たしかに周知の事実を記述することは問題がない。テレビを見て、『最後のパレード』に盗用があったことを知り、それを記述することは問題がない。あるいは事実を報ずる範囲に留まっている限りにおいて、新聞記事を転載することも問題がない。

しかし、創作的に表現した著作物は、その内容がいかに知られてしようとも、無断で転載することはできません。当たりまえだろ、そんなこと。

「すでに村上春樹の小説は広く知られているから、そのまま出していいと思いました。本人からの連絡があったら誠意をもって対応するつもりでしたので、盗用ではありません」って言うのでしょうかね、この社長は。要するに、ネットに書かれていることをとことんバカにしているのでしょう。この出版社こそ、バカにされるべきだと思うぞ。

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ただ現時点では、法的な結論がどうなるかにつきましては私どもには判断がつきませんので、現在、法律の専門家の方と相談しております。はっきりしたことがわかり次第、また報告さしあげたいと思います。

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この程度のことも専門家に聞かないとわからない出版社って…。だったら、本を出す前に専門家に相談しとけ。出版社を始める前に、著作権法を読んでおけ。ちゅうか、おめえには出版なんて難しいことは無理だから、とっととやめろ。

あの著者に、この出版社あり。

この本を大増刷していそうで、大量の返本があると倒産しかねないため、バカのフリをしている可能性もありますが、裏目に出ましたな。購入した方はためらうことなく返品しましょう。

注:文中に入れようと思って忘れていました。著者や出版社が「引用の範囲である」「偶然似ただけ」と主張しているような場合は、「盗用疑惑」とするところですが、今回は、もはや疑惑ではないことがはっきりしています。なにしろ、この出版社はネットで拾った話を、許諾なく、出典の明記なく転載していいと思っていたことを自ら明らかにしたわけです。おそらく日常的に、その程度の意識で本を作っているのでしょうから、「盗用出版社」とすることに問題はないでしょう。

このエントリへの反応

  1. [...] なおかつ、この記者が言及しているように、ネットから拾った文章を「広く知られている事実だから、パクってもいい」として転載しただけなのに、「本当にあった」とタイトルに入れ、「TDLのキャストだけが知っている」と帯に入れたことも問題です。不正競争防止法に違反するわけではないにせよ、モラル違反であり、読者を騙す意図があったということです。TDLのキャストしか知らない話なのに、2ちゃんを「参考」にしてどうするって話でしょう。 [...]

  2. [...] なおかつ、この記者が言及しているように、ネットから拾った文章を「広く知られている事実だから、パクってもいい」として転載しただけなのに、「本当にあった」とタイトルに入れ、「TDLのキャストだけが知っている」と帯に入れたことも問題です。不正競争防止法に違反するほどではないにせよ(現にディズニーランドが関与した本だと思っている人たちが多数いるようなので、他のもろもろを合わせれば、争う余地はあるかも)、モラル違反であり、読者を騙す意図があったということです。TDLのキャストしか知らない話なのに、2ちゃんを「参考」にしてどうするって話でしょう。 [...]

  3. [...] なおかつ、この記者が言及しているように、ネットから拾った文章を「広く知られている事実だから、パクってもいい」として転載しただけなのに、「本当にあった」とタイトルに入れ、「TDLのキャストだけが知っている」と帯に入れたことも問題です。不正競争防止法に違反するほどではないにせよ(現にディズニーランドが関与した本だと思っている人たちが多数いるようなので、他のもろもろを合わせれば、争う余地はあるかも)、モラル違反であり、読者を騙す意図があったということです。TDLのキャストしか知らない話なのに、2ちゃんを「参考」にしてどうするって話でしょう。 [...]