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[第16章●天国への階段]
3… 送料をどうするか
[2005.04.16登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

更新をずいぶんさぼってしまいました。ご推察の通り、むちゃくちゃ忙しいのです。我ながら、自分の見通しの甘さに辟易しております。いやはや、お店をつくるというのは、実に大変であります。リアルショップならタイヘンだろうが、ネットショップはそうでもあるまい、とタカを括っていたのですが、あにはからんや、これがなかなか。

必要以上にタイヘンになっている部分もあります。

ネットショップを開店するために行う準備作業はおおむね
1)売るための商材を準備する
2)サイトを作る
3)決済システムをなんとかする
4)配送システムをなんとかする
であろうかと思います。この中で商品準備を除けば、あとどれをとっても、いまはいとも簡単に実現することが可能になっています。支援してくれる業者が存在するからです。

ネットショップを実現することを目的としたホスティングサービス会社がたくさん存在しています。そういう業者と契約すると、レジシステムから決済システムまでがセットになっているサイトスペースを貸してくれます。月額数千円ときわめて安価のものも少なくありません。そういう業者さんに頼めば、あとはそこにちょこちょこと商品を並べることでとりあえずネットショップをスタートさせることができます。

性分なのでしょうか。ぼくの場合はそれをすべて自前でやってしまいました。これがまず苦難の第一原因。

ご承知のとおり、ネットショップでは「購入」ボタンのクリックからはじまって、送り先の登録や支払方法の選択を経て、「ありがとうございました」につづく一連の「ネット上での受注業務」を行わなければなりません。これを仮に「レジシステム」と呼びましょう。レジのシクミです。

件の業者さんとこに加盟すれば、このレジシステムはもれなく付いてきます。それなりによくできています。少なくともちゃんと働きます(そうじゃなければ詐欺ですわな)。また自前のサイトで実現する場合でも、フリーウエアやシェアウエアのレジシステムは多数存在しています。これまたどれもそれなりにちゃんと動きます。こういうのをダウンロードして組み込んでしまえば、あとは自分のニーズに応じてパラメータを書き換えれば準備完了となります。

ぼくの場合は最初に自前サーバという選択をしてしまいましたので、業者さんのレジシステムをまるごと使うことは最初から考慮の外でしたが、それでも「レジだけを借りる」という選択肢は残っています。この選択肢を真剣に考慮しなかったのは、ひとえに性分のせいでして、ま、これはやむをえない。

しかし、既存のレジシステムをダウンロードしなかったのは性分だけではありますまい。深く反省をしております。

外国人(たとえばベトナム人)と交渉ごとを行うとしましょう。ベトナム語が皆目わからなければ、通訳を同伴するしかないでしょう。ベトナム語にむちゃくちゃ堪能な場合は一人で赴けばいい。ただ、このペラペラの場合にしたって、通訳を連れて行ってもいい。というか重要な交渉ごとであれば、むしろペラペラであっても通訳同伴の意味は大きくなります。外交交渉なんかはそうしてますよね。通訳をかますことで、かえって誤解をさけることができます。ペラペラですから通訳の仕事をチェックする能力もあるわけで、誤訳による誤解も防げます。

レジシステムを作るというのは、要するにプログラミング仕事です。プログラムがまったく書けなければ、これはアリモノ(通訳ですな)を使うしかない。グル級の実力があれば、自分で書いてもいいんだけど、アリモノを使っても問題ない。グルは人が書いたプログラムでも、瞬時に読解できるでしょうから。

問題は、ぼくクラスの貧相な実力しかもたないレベルなんですな。少しはわかるもんだから、通訳の言っていることを理解したいんだけど、それにものすごい労力がかかる。少しカスタマイズするだけ、たとえば「タイトル部分を日本語化する」だけでも実に時間がかかる。

それだったら、多少ショボくてもいい。自分で書こう。ぼくはいつもそう思ってやってきました。これはたとえばPOTの日高氏とは常に論争の生じるところであるということは前にも書きました。

今回のレジシステムもこの考え方のもとでブランニューのものを書いたんですが、これがタイヘンだった。なにしろ金(しかもそれは人様のカネであったりする)を取り扱うものですから、間違いは許されない。プログラミング自体より、チェックに時間がずいぶんかかりました。

プログラムを書く際には「仕様」が必要になります。何ができるのか、ということはあらかじめちゃんと詰めておかねばならない。これが曖昧だと話にならない。雇われ仕事の場合、仕様の決定権はクライアントにあります。だからクライアントが提示した世界の中でシゴトをすればよい。問題があるよなあと思っても、結局は割り切っちゃいます。しかし、自分が仕様を決めるとなると、その割り切りができないじゃありませんか(と、書きつつ、自分の人格の欠点に今更ながら驚いているわけですが)。

自分の中での要求仕様の揺れは各所にありましたが、その最大のものは「送料をどうするか」ということでした。これが最後まで決断できなかった。

物販ネットショップは必然的に売れた商品を「送る」という要素が入ってきます。何らかの手段でお客の手元まで運ばなければならない。タダで運んでくれる人はどこにもいませんから、そこには必ず「送料」が発生する。この送料をどうするか。これが決められませんでした。

ネットショップを見渡してみると、送料についてはいろんな考え方があります。まず「送料無料」。これはすっきりしてよろしい。最近多いのは「全国一律○○円」。これもスッキリ度は同レベルかな。その逆に大きさと距離に応じて実費相当額を徴収というところもあります。いろんな方法があるわけです。

送料無料、あるいは全国一律というやり方も考えないではありませんでした。しかし、これにはどうも疑問が残った。

送料がかかる、しかもそれはサイズ・距離で異なるということは誰でも知っていることです。これを一律にするということは(それが最大サイズ最長距離の実コストを上回っていないかぎり)、店が負担をしているということになります。店側が負担をするコストがあってもいいことは無論、言うまでもありません。しかし、この場合、負担の仕方はヘンじゃないかなあと思うのです。

つまりこれって、遠方の顧客のために発生するコストを、近所のお客が負担しているという構造になっちゃうんじゃないか、ということです。ウチの場合は出し元が東京ですから、関東近県のお客は、九州沖縄のお客より、実質的に高い買物をしていることになるのではないか、ということです。

近所のお客より遠方のお客にインセンティブをつけるというマーケティング的なメリットは何一つ思いつきません。これってヘンダベ、とぼくは悩んだわけです。

送料一律を採用する店側の理由、それを歓迎する客側の理由はよくわかります。

すっきりしているところがいいのです。

通販において送料は購入をためらわせる大きなファクターです。それは「送料がかかる」ということ自体(それもあるけど)より、「送料を含めた支払総額が不透明である」というところにあるんじゃないでしょうか。

お、これいいやん、と思って「買物カゴに入れる」ボタンをクリック。レジにいってシコシコと住所氏名を登録、最後にはじめて送料が計上され、なんやねん、という経験をしたことは何度もあります。複数のショップ間で同一商品を比較する際にも、送料システムが複雑だと、どっちがトクかよくわからなくなる。

総じて送料システムが複雑であれば、もう、めんどくさいからやめちゃお、となりがちなんじゃないか。

そこで送料一律という選択になるのでしょう。

でも、それはリクツとしては、先に述べたように、近くのお客さんから得た利益を遠くのお客さんへのコストで使うという構造になる。

ずいぶん悩んだ末に、当面は距離による段階制の送料を付加する、しかし、その送料がいくらかというのは「買物カゴ」に入れた時点(住所氏名とかを登録する前)に明示されるという方法をとることにしました(ただし1万円以上のお買い上げは送料無料)。

この方法を取ることにしたので、ますますレジシステムのプログラミングが複雑になりました。なるべくお客の側にはシンプルにみせつつ、内側でこれを実現するためにどうするかというのがけっこう難しかった。

その上、逡巡を反映して、「どのような送料システムに変更しても対応できる」ようにもしたので、ますますです。

ホントはこんなことに時間を費やしていてはイカンのです。店は売るためにあるのであって、送料をどうするか、レジをどうするかというのは、ある意味、枝葉末節です。それがわかっているだけに、いっそう「忙しさ」感はつのります。早くすませてしまいたい。その思いが強くなって、ますます焦ってしまうわけです。

なお、開店は4月23日。もういくらも日がありません。

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