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[第14章●ベッドで本を読む] 1… 側臥位読書はこれで万全 |
[2004.08.05登録] |
石田豊 |
前回と若干重複しますし、個人サイトの方に昔書いた話とも重なってしまうのですが……。 小林秀雄に貸した本が返ってきたら、ページにフケがたくさん挟まっている。それを見て、「エライっ! 小林はちゃんと座って本を読んでいる」と感心したというエピソードをどこかで読んだことがある。この奇妙な感嘆を発した本人はもとより、これが「小咄」として成立するためには、本はちゃんと座って読まない、つまり寝ころんで本を読むのが普通だ、という認識が前提になっていなければならない。本は寝ころんで読むものなのに、それを机の前に正対してちゃんと座って読む。それだからこそ、アタマのフケが本の上に落ちる。そこに感動しているわけですね。 ぼくも小学生以来、ずっと寝ころんでの読書を愉しんできた。時には座って読むこともあるが、主戦場はベッドである。オレもそうだよとおっしゃる方は数多くいらっしゃることだろう。 しかし、一概に「ベッドで本を読む」といっても、その体位はさまざまである。大きくわけるなら、あおむけ、うつぶせ、よこむきということになるだろう。その3大姿勢の中にもいくつものバリエーションがある。こうした体位とそれに伴う問題点は、いずれあらためて検討するとして、今回は「よこむき」、いわば側臥位における読書の問題点。 前に書いたように、メガネをかけて横向きに寝ころんで本を読むのは、なにかと困難が伴う。 枕でメガネが押さえつけられるため、耳や側頭部、およびメガネの鼻パッドがあたる部分などに痛みを感じる。メガネもゆがんでしまう。 だったらメガネをとって読めばいいでしょう、ということになるのだが、ぼく(だけではないだろうが)の場合は、かなり強度の乱視なので、それがままならない。両眼の乱視をメガネで矯正している場合、メガネをとると、左右で見え方が異なり、そのために視界がぼやけてしまう。片目をつぶってならちゃんと見えるのだが、にわか丹下左膳状態で長時間読書するのは苦痛である。 それに乱視の場合は、枕にメガネが押されて、レンズの中心が若干動くことで、これまた視界がぼやけるということもある。 このことに関しては、ずいぶん長い間苦しめられてきた。なるべく側臥位をとらないようにしているものの、同じ姿勢を続けるのはツラいから、時にはメガネによる痛みを我慢してでも、横に向いたりしていた。問題を抱えつつも、その対策を考えることをしなかったんですね。 それが、先日キムラさん(POTの編集者、読書生活研究所員)から同じ悩みを打ち明けられたとたんに、即座に対策を思いついた。こういう反応は我ながらどうかとは思わないではないのだが。 凹の字型の枕をつくり、その「へこんだ部分」に耳とメガネのつるを落とし込んでやれば、圧迫されることはあるまい、というのがその対策。これはもしかするとハツメイたりうるかもしれないと思って、特許庁のデータベースを検索してみると、同様の悩みを解消するための出願がすでに出されていることを知った。牧野亮さんとおっしゃる方のアイディアによると、その目的のための枕は馬蹄形をしているという。なるほど馬蹄形の枕があれば、同じ目的が達せられる。 この枕が販売されているなら、それを買って効果を確かめられるのだが、ネット検索してみても商品化されたものは見つからない。特許自身も出願だけでとどまっているから、もしかすると、商品化の動きまではないのかもしれない。 だったら、自作して確かめてみるか。 ここまでが前回(眼鏡装着側臥位読書用マクラ)までのあらすじですね。 といってもぼくはミシンをろくに使うこともできないので、ツマに製造をお願いするしかない。その作業への了承をとり、素材であるそば殻と布を準備(といっても使っていない枕を犠牲にすることにしただけだが)したところで、夕食の用意のためにふたりで買い物にでかけた。そこ(西友)で見つけちゃったんです。代用可能の枕を。 これはよくあるトラベルピローだ。馬蹄形の形をしており、首の後ろがわから、ガシっとはめ込むことで、列車や飛行機の座席で眠りやすくなるという、アレ。売っていたのは、低反発クッションを使ったもので、値段は1497円であった。これなら作るよりもずいぶん安上がりになる。これで試してみようと即座に購入した。 テストしてみたところ、なかなか具合がよろしい。耳、側頭部、鼻のいずれも圧迫されない。もちろんメガネも動かない。変形のおそれもないわけだ。布団の上に直接この枕を置くと、低すぎるので、視界の中央が書籍のノドの部分からずれてしまう。つまり下側のページのまんなかあたりが視界の中央になる。上側にあたるページが相対的に遠くなる。 だから通常の枕のうえに、このトラベルピローを置く。枕上枕を置く、という感じですね。 この形で側臥位読書を試みる。快適です。いままでの苦労がウソみたいだ(ただし遠近両用メガネは使わない方が見やすい)。耳はまったく痛くない。これはいい。 ただ、欠点がないわけではない。ひとつは寝返りが打ちにくいこと。寝返りを打って、反対に向いて読書を続けようとする場合、いちいち枕の向きも回転させなければならない。これは少し面倒。そしてもうひとつ。買った枕の「ガワ」の素材はビニールのようなものでできている。それが頬に密着する。中身が低反発クッションだから、なおさらのこと密着度が高い。これはいささか暑苦しい。 そこで対策を考える。耳の部分を枕に密着させなければ済むことなので、なにも馬蹄形である必要はないのだ。やはり、最初の思いつき通り、凹の字型で十分である。ぼくの耳の長さ(耳の最上部から耳たぶの下まで)は8cmほどなので、これくらいの間隔で高さがせいぜい2cm以上の棒状の枕を2本並べればいい。そこでこの改良型をツマに作ってもらう。ヨウカンを10cm間隔で2本並べたものを一枚の布でつないであるというような形状である。ヨウカンの長さはせいぜい15cmもあれば十分だ。そう依頼したのだが、自分で使うだけならヨウカン2本でいいのでは、と言われる。たしかに2本を布でつなぐ必要はなさそうだ。つまり独立した2本の棒マクラ。 できあがったものは、ヨウカンというより春巻状のものだった。これを通常のマクラの上に平行に並べる。間隔は自分の耳の上下にあわせる。このうえに側臥して、本を読んでみる。 さて、どうか。いやはや、こちらのほうがトラベルピローより快適である。メガネ圧迫問題がすべて解決しているのは言うまでもない。その上、中身がそば殻でガワが木綿だから、暑苦しさもない。開口部が両側にあるから、寝返りを打って左右どちら向けでもそのまま使える。通常の枕の上に置くのだから、ページのためのクリアランスも十分とれる。難を言えば、台になる通常のマクラは、もう少し低いもののほうがいいだろう。 かくしてぼくは長年の煩悶から一気に解放された。もう側臥位読書における耳痛問題に泣くことはないのである。欣快。ただ、現時点では使用時間が短すぎる。これからも継続してテストを続け、問題が生じればその時点でレポートを補完していきたい。 |
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