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[第14章●ベッドで本を読む]
4… ベッドでの照明器具
[2004.08.26登録][2004.09.04更新]

石田豊
ishida@pot.co.jp

ベッドでの読書で、照明の問題は大きい。なんとなれば、そのスマートな解決法を誰もまだ見いだしていないからだ、と思う。

俯臥位読書においては、照明はそう困難ではない。版面が水平または水平に近い角度で保たれているからである。通常のスタンドでもって、上から下へと版面に直角に光があたるようにすればいい。しかし、ぼくはすでに俯臥位読書を捨ててしまった。側臥位では版面が布団に対し垂直になるし、仰臥位(ベンチプレス式)では逆向けの水平にまでなる。こうなると通常のスタンドでは、ページに光が当たらない。

ベッドでの読書における照明の第一の問題点は、ページ面に光がちゃんとあたらない、ということだ。

ページ面に十全に光をあてるためには、光源部分が自在に動かなければならない。側臥位の場合は、寝返りをうちたいーーつまり右を下にして読み、反転して左を下にして読むーーわけだから、左右どちらの姿勢になっても、光源はちゃんと追随してほしい。

ひとりで寝室を占有している人はいいが、寝室を複数でシェアしている場合には、照明問題はもっと頭の痛いことになる。夫婦ものの多くは(おそらく)同じ寝室で眠るのだろうが、その場合、こっちの読書のための明かりが相手の睡眠の妨害になるようでは、トラブルのもととなる。

早く電気を消してよ。明るくって眠れやしない。そういわれて泣く泣く本を閉じるということもあるだろう。

できれば、相手の眠りを妨害しない明かりでありたい。つまり光が不必要に拡散することのない明かりというわけだ。これがふたつめのポイントになる。部屋全体を明るく保つなどはもってのほか。

3つめは前者と関連があるかもしれないが、光源の熱だ。ベッドで本をよむためのスタンドは、ベッドサイドのテーブルに置くことになる。勢い光源が顔に近いところにくる。そうなると、白熱灯はもちろん、蛍光灯でも、頭部に熱さを感じることがある。夏場はとくにうっとうしい。できれば光源は熱を発してもらいたくない。

仕事場では机の上の照明としてヤマギワのバイオライトを使っている。これはデスクワーク(読書ももちろん含む)には最強といっていい照明だと思う。すこし高いが、この快適さは他ではなかなか味わえない。とにかく明るいのだ。しかし、このライトは非常に熱い。デスクで使っていてもアタマに熱を感じるくらい。それに光が拡散するので、ベッドでの使用はためらわれる。それに光源の向きも容易に変えることはできない。だいいち、長時間使用しているとシェードの部分すら、けっこう熱くなるのだ。

ベッドでの読書に最適な照明器具はなかなかない。電動ごますり器まであるこのご時世で、なんということだろう。

ずっと探索を続けていたのだが、その過程で3つの「これは」と思う製品を見つけた。

ひとつめはアメリカ製のLightWedge。これはまさに発想の転換の好例と言うべき製品だ。ページの上に透明の下敷き状のものを重ねる。この「下敷き」が発光するのである。つまり離れたところからページ面に光を照射するのではなく、透明の発光体がページ全体を覆うのだ。

以前、これをWeb上で発見したとき、あまりの興奮に思わずショッピングカートボタンを押しそうになったが、すんでのところで思いとどまった。躊躇したのである。

発光メカニズムはLEDであるから熱の心配はない。いわばページ自体が発光するわけだから、ページ面の明るさはちゃんと確保されることだろう。しかしなあ……。

ベッドで本を読む場合、本を保持する上で、カバーですらうっとうしい。ずれたりするから、それを気にしながら本を持っていなくてはならない。そのうえ、このアクリル板までも本と一体化させつつホールドしなければならないというのは、想像するだに負担だ。そう思った。またサイズも中途半端だ。LightWedgeには235mm×172mmのスタンダードと190×135cmのペーパーバッグの2バリエーションがある。どちらを買うんだ、ということだ。スタンダードだとB5判より少し小さい形になる。単行本の主力である四六判などだとLightWedgeのほうが大きいことになる。だとすると、判面からはみ出したアクリル下敷きを本とともに保持しなくちゃならない。これは負担にはなりはしないか。そうかといってペーパーバッグだと、新書版にはぴったりでも、それより大きい本だと対応できないんじゃないか。ページを繰るたびに、LightWedgeを右左と装着しなおさなければならんというところも少しだけだが気になる。

だいいち、これは電池駆動だ。単3電池4本。これだけでもちょっと重いし、そもそも電池駆動というのが気にならない。電池のもちは40時間だそうだ。さて本を読もうとベッドに向かったら、ざんねん電池切れというようなことになるんじゃないか。それはいやだなあ。

そういうことを考え、指は止まったのだった。

しかし、いまだにコイツは気になってはいる。

あとのふたつは、フレキシブルパイプの先に発光部がある電気スタンドである。

ひとつはナショナルのナイトポイント。本体部の中にダイクール電球が入っており、そこからの光をフレキシブルパイプの中を走る光ファイバーで送り、先端の発光部から光を出すという仕掛けの電気スタンドだ。

本体部はともかく、発光する部分まではほとんど熱は伝わるまい。つまり顔の横にあっても熱さは感じなくてもすむだろう。

もうひとつはアメリカの読書関連グッズ販売サイトであるLEVENGERでみつけたInfinityLamp。これはカップ状の基部から白鳥の首のようにフレキシブルパイプが伸びているところはナイトポイントと変わりがないが、発光部は大きく違っている。パイプの先端に20個の白色LEDが取り付けられているのだ。つまりLED利用の電気スタンドなのである。

ちなみに、このサイトでこの製品があるカテゴリーは「Read in Bed」と題されている。ベッドでの読書グッズを集めたところに掲載されているわけだ。

どちらもいいなあ。ぼくは決めかねていた。

ナイトポイント(実売で1.5万円強)はちょっとパイプ部分の長さが短いかもしれない。それに使用している電球がダイクール電球というところもいささか気になる。なんとなれば入手が比較的困難だからだ。それにWebを検索しても使用感のレポートが見あたらないというのも躊躇の理由になる。

InfinityLampはLEDだというだけでソソられはする。LEDによる照明には期待している。なにしろ消費電力が少なく、発熱がない。われわれは照明器具から光をもらいたいわけで、熱を欲しいわけじゃない。熱はいらないんだ。エネルギー的にも非常に無駄である。恥ずかしながら、ぼくはずっと「蛍光灯」というのを「白熱灯」との対比のなかで「蛍の光のように熱がないのに光がでる」灯だという命名だと思っていた。切れたばかりの蛍光灯をとりかえる際などにはいつも「誇大広告みたいな名前をつけやがって」と毒づいていたのだ。違ったんだね。管内に「蛍光体」が塗布してあるという意味であることを知ったとき、ひとり顔をあからめた。なにも「発熱の少なさ」を謳った明かりじゃないわけだ。蛍光灯だって十分発熱する。それにくらべてLEDの発熱の少なさは定評がある。消費電力の少なさもそういう性質と大きく関係している。入ってきたエネルギーを熱という形で浪費しなくて済むからだ。

しかし、現実には現時点では民生用の「照明器具」としてのLEDの使用はほとんどない。せいぜい懐中電灯とか、USBから電源をとってキーボード面をうっすらと照らす、ほぼ実用上の意味がないライト類くらいのものしかみかけない。まだまだ進化過程なのである。

なのに、このサイトにはとても明るいと数値付きで豪語してある。

あやしいなあ。そうは思ったが、シェイプはなかなかかっこよろしい。値段も98ドルと比較的安い。うーん。

ずっと迷っていた。で、先日このコーナーで
そういう場合には(自分で試していないからはっきりとはわからないが)ナショナルのナイトポイントという読書灯が有効な解決手段になるだろう。これなら、明かり部分は熱くならない(と思う)から、スタンドの光源が熱くてやりきれんという思いをすることもない。明かりの向きが自在に変えられるから、あおむけになった姿勢での読書でもページ面に光を当てることができる。
と書いたところ、即座に沢辺さんから、あれ、注文したから、とメールが来た。道具好きとはいえ、やることが素早い。

対抗上というんでしょうか、煽られてというんでしょうか。それでぼくもInfinity Lampを購入してしまった。シッピングはフェデラルエクスプレスしかなく、送料は77.03ドルもかかる。つまり合計で175.03ドルとなった(そのかわり4日後に着荷したのだが)。ほぼ2万円ということになる。

しかし、これは人柱系の買い物であったかもしれない。

たしかにカッコはいい。重量のある基部がどっしりとした質感を演出しているし、フレキシブルパイプも美しい。パイプの長さも30cmほどあるから、いろんな姿勢に対してもちゃんと追随してくれる。

しかし、いかんせん、光の照射面が小さすぎるのだ。読める明るさのところに発光部を置くと、ページ面で光があたるのはソフトボール程度の大きさしかない。隣のベッドには光が漏れないというところはいいが、こっちのページにも実質上、十分な光が供給されないならしかたないじゃないか。

もちろん読めないことはない。しかし、満足かといわれればそうでもない。光はLED特有のクールな白色で、読みやすさは高いのだが……。

ベッドでの明かり問題解決への道は遠い。

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木下充矢さんより
ご意見いただきました

[2004.08.29]

アクリル板の書見台

書見台を検索していて見つけた、障害をお持ちの飯田さんという方の自家製書見台
(http://homepage2.nifty.com/word_of_thumb/profile/book_stand.html)
に、いたく感心したことがあります。透明なアクリル板を床と平行に頭上に固定して、
その上に本を伏せる。自重で本とページが同時に保持される、実にエレガントな仕掛け。
やはり照明の発熱には苦労されているようです。アクリル板と本の間に、
LightWedgeをはさむとよいのかも知れません。

本好きなのでこの種の話題にはたいへん関心があります。肩凝りが強いので最近は
あまり寝て読書はしないようにしているのですが、ぜひ一度、石田さんのノウハウを
実践してみたいと思っています。

____

やはり寝ながら読むのは肩こりに悪いんですかね。

ぼくは方凝らないタチなんですが、さいきんじゃっかん凝りに悩まされています。(石田)

*匿名*さんより
ご意見いただきました

[2004.08.29]

*無題*

アウトドア屋の入り口をくぐると真っ先にヘッドランプコーナーに足が向いてしまう鈴木です。ニョーボ殿に「アタマは一つしかないのにねー・・・」と皮肉られても、新製品が出てるとつい衝動買い。最近LEDランプ増えてきましたね。軽量省電力、山登りの道具としてはヒジョーに優れもん。PETZL ZIPKA なんて、一つしかないアタマにいっぺんに3個くらい装着可能、しかも昔の豆電球単三4本ヘッドランプに比べりゃ問題外の外の軽さ。ニョーボ殿の皮肉をぶっとばす最終兵器なので、やっぱり衝動買いしました。でも、なんていうんですかね?、流石デジタルっていうか、LEDって明るいとこと暗いとこの境界が妙にはっきりしてるんですよ。顔向けたほうはまぶしいくらい明るいのですが、、、。老眼メカニズムに続いてLED照度分布について、イシダさんの考察をお伺いしたいです。

____

うん。そうなんですよね。LEDの光というのはなんか「ふるまい」が違うんですよね。

悩んでいます。もっか、研究中。(石田)

空木 茜さんより
ご意見いただきました

[2004.09.04]

ニョーボさんのいる方は不便ね

ひとりものは北欧の白地にブルーの陶器のシェードランプで秋の夜長を
思う存分夜更かし読書するのです。
ベッドサイドのランプ、本箱、cdラジカセ、アロマオイル、ナイトキャップを
うちそろえてさあ!今夜も。

____

「本箱」……。ベッドサイドに本箱も運ばれるのでしょうか? いえ、ちょっとつっこんでみただけです。(石田)

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