2010-10-25
池田信夫氏の「講談社の「デジタル的利用許諾契約書」について」はひどいでしょう
日曜日、頼まれ仕事のチェックを終えて、高円寺フェスに行って、家に戻り、娘を焼肉でつって久々のデート。
ハードディスクに録画しておいた映画や龍馬を見て、ボケーとして、寝る前にメールチェックしてた。
Googleアラートで、池田信夫氏のブログ「講談社の「デジタル的利用許諾契約書」について」と、西田宗千佳の異論がツイッターにあってtogetterにもまとめられているのが気になって、togetterと池田氏のブログを読んだ。
今、2時20分。日曜の(つまり月曜)こんな時間に日誌を書き出すことなんかほとんどなかったはずなんだけど、池田氏のあまりの記述にテンションがあがったのかな? 突然PCに向かってしまった。
まず池田氏の冒頭。
「講談社の野間副社長は「年内に2万点をデジタル化しろ」と社内に号令をかけ、同社のほとんどの著者に「契約書」を送っているようだ。その1通を入手したので、一部を引用する:」とあって、契約書を引用。その後、
「最大の問題は、上の第3条と第4条の講談社がデジタル化権を著者から奪って独占するという規定である。」
うーん、講談社は「提案」「提示」してるだけでしょう。
契約は双方が納得してサインするもんなんだから、デジタル化権の独占がやなら、
独占出版化権(いわゆる紙の本を独占的につくって売る権利を出版社が得る事)だけを売りたいんだけど、
電子化権は売らないよ、って言えばいいダケじゃん。
全然問題なし、でしょ。
それに、契約書には「契約期間」があるんで、池田氏の契約書の引用にはでてこないけど、
3年とか何年とかあって、どちらからも「延長しない」みたいな話がなければ、
自動で延長、みたいになっているだけだと思うよ。
さらに、
「したがって他の出版社から電子出版したいという話があっても、著者は出すことができない。しかも講談社は、この本を電子出版すると約束していないので、彼らが出さないかぎりどこの電子書店でも売れない。」
あたりまえじゃん。今だって紙の本を、他の出版社からはだせない。
出版する権利を、独占しなけりゃならないもんではないけど、まあ独占したくなるでしょ。普通。
それがいやだって言われて、その出版社で出版したくなくなっても、まあしょうがない。
村上春樹の「1Q84」を複数の出版社から出したいって言われたら、
広告費やら、宣伝作戦やら、書店への営業なんかできないししたくなくなるでしょう。
新潮社(「1Q84」を出したとこ)が打った新聞の全面広告見て、ポット出版の「1Q84」の方を買われちゃうかもしれないでしょ。
で、紙の本だしたら、電子書籍も出したいでしょう。
だから、電子書籍の権利は売りません、といえばいいんじゃないのかな?
村上龍さんの「歌うクジラ」は、電子書籍を先に、村上さん自身が選んだ出版社ではないパートナーと出している。
この「歌うクジラ」は、どこぞの出版社の雑誌かなにか掲載されたものを、
紙の本にするまえに、著者自身の手で電子書籍にしたってこと。
こういうことができてるじゃん。
たぶん、紙の本は、出版社から出す気でいるとどこかで書いていた気がするしね。
ただ、この店に西田さんが書いてるのはちょっと方向ずれているとは思う。
西田氏はツイッターで「出版社に電子版の権利を渡すと、他の電子書籍ストアからは売れない>間違い 各出版社はそこからさらに電子書籍ストアに「卸す」存在。だからどこで売るかは別問題です。ただし出版社に筆者がなにも言わなければ、当然ストアは選べません」と書いてる。
池田氏が指摘しているのは「しかも講談社は、この本を電子出版すると約束していないので、彼らが出さないかぎりどこの電子書店でも売れない。」だから、この場合出版社が出さなければ、やっぱりどんな電子書籍ストアで売られる事は(そもそも)ない。
で池田氏の指摘に対して言うなら、その通り、独占したいっていってるんだから、他からは出させない。
ましてや電子書籍ストアを選ぶどころか、どこの電子書籍ストアも売りようがないはず。
でもおこる事じゃなくて、交渉したり、契約を断ればいいだけのこと。
次の池田氏のブログ。
「印税は第6条で「乙が当該利用によって得た金額×15%(消費税別)」と定められている。印刷・製本などの工程がなく間接費の小さい電子書籍で、このように低い印税率を設定するのは異常である。」
印刷・製本の費用、ポット出版では20%前後にしかならないよ。
2000円×2000冊の本で書店店頭売り上げ400万円。印刷+紙+製本+組版費用で80万円前後。
で、これを電子書籍にすればたしかにタグをつける作業でまあ10万〜20万円。2.5〜5%に減るのは間違えないけど、
電子書籍にすれ定価半額になるでしょうとか、何冊売れるかとかあるから、印税をあげることに異議ないけど、
「異常」といわれるほどのこともないでしょう。
つづけて池田氏。
「アマゾンもアップルも、著者が完全にレイアウトした場合は70%還元するとしており、アゴラブックスでは(当社でレイアウトした場合も)最大50%である。15%という印税率は(当社以外の)日本のほとんどの電子出版社で同一であり、カルテルを組んでいる疑いがある。」
アップル・アマゾンで70%、アゴラで最大50%、その差は20%。その違いはレイアウトだけなのかな?
上のポット出版の場合と比べて、とり過ぎじゃないのアゴラ。それも最大、でしょ。
そんなら、著者は10万円払って、直接アップル・アマゾンで販売してもらえばいいんじゃないの?
うちに連絡くれれば10万円でやりまっせ。
で、どこも15%というのはカルテル、っていうなら、紙の本の10%って常識もカルテルか?
あ、最近8%とか、うちみたいに「実売(で10%)」みたいなところが増えてるみたいだから、カルテルじゃないと思ってくれてるのか?
うーん、オイラの知り合いの出版社の(経営に近い)人たちって、
結構独禁法に神経質だけどな〜。
それに紙の本の10%だって、著作物の市場で、均衡してるって話じゃないの?
数字が同じだからカルテルって、市場の機能を軽んじてるんじゃないか。
池田氏。
「契約書も見ないで「どこからでも電子版は出せます」などといい加減なことを書いている業界ライターもいるが、こんな契約を結んだら、著者はアマゾンからもアップルからも電子書籍を出せないし、講談社が出さないと埋もれたままになる。出版するあてもないのに版権を囲い込むだけの契約を結ぶのは、著者を愚弄するものだ。アゴラブックスは、契約した電子書籍は必ず出版する(もちろん電子化権は独占しない)ので、問い合わせは申し込み窓口まで。」
そんなこと書いてる業界ライターっているの?
そもそもこうした電子書籍込みの契約書ってつい最近始まったんじゃないの。
(ポット出版はかなり近い文言で、もう何年も前から契約書に電子書籍のこと書き込んでいるけどね、って自慢ポイ?!)
つい最近始まったこの種の契約書をさして、「どこからでも電子版は出せます」なんて書いている人がいたら、
大バカもんだね、そのライター。
「出版するあてもないのに版権を囲い込むだけの契約」っていうけど、紙の本を出す際の契約で、
同時に電子書籍化のこともいれたいよ、ってことでしょ。
2010年段階で、紙の本をだし、電子書籍版は結果的にださない+出す権利は確保したまま、となっても、
それを「出版するあてもないのに版権を囲い込むだけの契約を結ぶのは、著者を愚弄するものだ。」
とまでは言えないでしょ。紙の本出すんだから。
で、最後はアゴラブックスの売り込み?
いいんだけどさ、。
うーん前からへんな人だなって思ってたけど、
やっぱりへんな人だと思った池田信夫氏のブログについての、意見でした。
と時計をみたら3時18分と1時間もかけてしまった。
最後に池田氏が貼付けていた講談社の契約書の部分。
池田氏がはりつけたのここんとこだけです。念のため。
────────────────────
第3条(本著作物のデジタル的利用の目的)
1. 甲[著者]は、第2条記載の目的にそって本著作物のデジタル的利用を乙[講談社]に許諾する。
2. 本契約期間中、甲は自ら本著作物のデジタル的利用を行なわず、また、乙以外に本著作物のデジタル的利用を許諾しない。
第4条(利用の範囲)
1. 乙は、本契約に基づき、本著作物のデジタル的利用について次の各号に掲げる行為をすることができる。
1. 本著作物を自己の費用負担でデジタル化して、本デジタルコンテンツを製作すること。なお、本デジタルコンテンツは乙が管理し、デジタル化の過程で発生した本デジタルコンテンツに関する所有権は全て乙に帰属する。
2. 本デジタルコンテンツをデジタル的利用すること。なお、本デジタルコンテンツの卸価格または販売価格、販売サイト、販売の条件および方法に関しては乙が自主的に決定することができるものとする。
────────────────────