ず・ぼん6●[お棚拝見隊見参!] 第一回 八重洲ブックセンターの巻
[お棚拝見隊見参!]
第一回 八重洲ブックセンターの巻
お棚拝見隊
[1999-12-18]
1年も前から予告だけうっていたお棚拝見隊、いよいよスタートしました。
はじめての今回は大型書店の老舗、八重洲ブックセンターに見参。
新規事業部長の荻野準二さんにお話を伺った後、棚づくりのヒントをゲットするべく店内を勝手にふらふら。
しかし最上階7階からさまよいつつきよろきょろしつつ降りていくうちに、隊員一同まんまと八重洲の販売戦略にはまり、再び1階入口に集合したときには本の大荷物。
見よ、黄金色に輝く二宮KINJIロウの前に立つ隊員たちを。
ンなわけで、ようやくスタートを切ったお棚隊の初回の成果を、以下にお伝えします。
八重洲ブックセンター
【所在地】中央区八重洲2-5-1
【電話】03-3281-1811
【営業時間】10:00〜21:00(第2・4日曜は18:00まで)【定休日】第1・3・5日曜日
【交通】JR東京駅八重洲南口より徒歩2分
【売場面積】1200坪(地上7階地下2階)
東京駅から歩いてすぐの大書店。自然科学や人文科学といった専門書の取り揃えには定評がある。ビジネス街が近いので金融関連も豊富。新規事業部長 荻野準二さん
1999年11月から、八重洲ブックセンター郡山・うすい店の店長に就任。
拝見隊メンバー紹介
たいちょう
図書館員歴13年。記憶力の衰えをヒラメキと思いつきでカバーしようと努力の日々。
「八重洲の体当たりパワーに共感」
せしる姉さん
図書館員歴21年。誘われるままお棚隊員に。
「一日うろうろしても楽しく過ごせて欲しいモノが必ず見つかる。図書館もこうありたい(無理だけど)」
オレンジ・ペコ
図書館員歴15年。今日もパソコンのクラッシュと格闘。
「ちょっとした工夫で棚も本も 元気になる、そんな棚作りの秘訣を教わりました」
かんのすけ
図書館員歴7年。「じぶんにピッタリくる本屋さんがあるっていいね」といいつつコンビニで立読みを欠かさない。
意外に手作り感覚
都会の真っ只中、名だたる八重洲ブックセンターであるからして、突撃前のイメージはさぞかしおしゃれでハイセンス。
ところが実際に目の当たりにした八重洲のお棚は意外にも隅から隅まで手作り。とにかくポップの数が多い。それもひとつひとつ担当者の汗が感じられるようなものばかり。
もちろん、達者なものもあれば、苦労して作ってるんだろーなー、と思わず微笑ましくなるものも。でも拙いものもあるってことは、得意な人だけがホイホイ作ってるわけじゃない証拠。どんな人でも、棚を担当する限りは、いかに自分の棚をよく見せるかを仕事として真剣に考え、それに取り組んでるからだろう。やるべきシゴトとして全員に共通認識ができてるって事。図書館てはたしてどうなんだろう。意識のある人だけがそういうことを心がけて、一般的な認識としては、本は分類通り棚に戻しときゃいいってもんではないだろうか。このあたり、見習うべき心意気を感じた。
プレゼンの多さが八重洲の特徴
そー言えば、取材中に「八重洲のいちばんのウリはなんですか?」と質問すると、荻野さんはきっぱりと「それはプレゼンの多さですね」。
さもありなん。どのフロアをほっつき歩いてもワゴンやら、ちょっとした並べ方やらで大きいものから小さいものまでいわゆる「テーマ展示」……、書店さんではなんというのだろう、ブツクフェアかな。でもフェアっていうほど大げさじゃないのも多い……が目白押し。
たとえば1階レジ前の中置き書架一本だが、レジ前1等地だからってだけじゃなく、このシマだけで11のポップ、そのうち8つが手作り。他のコーナーへの案内もあった。ついでながらこのフロアだけは天井も高いし、中置き書架全てに照明が付いている。
聞けば毎月70〜80本、年間では1000本以上、オリジナルでフェアやコーナーなどの展示を組んでいるという。ご立派。
「やっぱりいつ行っても同じ棚じゃあ、お客さんはつまんないですよね」との隊員・せしる姉さんの発言に「そうです。やはりいつも新鮮な棚を作らないとね」と深く頷く荻野氏。
とにかく本が多いのよ
見出し・分類も細かく分けて出されている。とにかく並んでいる点数が多いのは「どんな本でもすぐ手に入る」を目指してオープンした20年前のコンセプトに忠実なゆえとして、それを分かりやすく客に見せるためにあの手この手を駆使してるって感じ。
例えば図書館では一門に含まれる「精神世界」だが、ヒーリング・予言・超常現象・脳死・ヨガなどなど、実に具体的。探してる人もこれなら棚からインスパイアされそうだ。
それから書架案内図も細かいものがまめにだされている。
しかしねー、これってお金持ちの、大きい書店だからできるってわけじゃないのよ。
はっきり言って八重洲の店内は決して垢抜けてはいない。書架間隔は狭いし、天井も高くない。天井からいろんな物がぶら下がっているし、展示用の棚やなんかも、セロテープを何回も貼った跡があったり、少し汚れていたりと、非常にインティメイト。ごちゃごちゃしてる感は否めません。中置き書架のぐるりは平台が必ずあって、それこそ溢れんばかりに本が積まれている(実際かんのすけ隊員はカーブを切り損なって平台の隅の一山を崩していた)。この平積みは図書館では逆立ちしても真似できないけどね。でも金かけてプロのデザイナーにお任せっていうディスプレイでは全然ないの。つまり工夫次第でどこでもできる手法ってこと。なんか汗くさい迫力を感じます。
3階エレベーター脇の狭い通路では「昆虫パラダイス」と題して昆虫本や図鑑と一緒に昆虫標本を並べ売ってました。
あと、うまいなーと思ったのが「在庫僅少本コーナー」。オレンジ・ペコ隊員など実にうまくその気にさせられ、高価な写真集をしっかり買い込んでいた。この手、なんとか図書館でも使えるのではないかしら。たとえば「本屋さんではもう買えない絶版本」とかの展示なんてどう?(紛失点数を増やすだけ、とかいう後ろ向きの意見はやめましょうね)
客の情報要求にはどこまでも応えていく
最後は棚づくりと直接関係ないぞと言われそうだが、店員さんの接客態度が非常によろしい。全体のレベルがとても高いと感じました。各売場の電話は毎日ほとんど鳴りっぱなし。実に様々な問い合わせがあるらしい。これらに商品知識を増やすことで対応していくという。「個々の知識ではお客さんには負けます。むしろお客さんから得ているといっていい。でもその要求に応えることで逃さずキャッチしていく。1人のお客さんから得た知識が、他の展開につながっていく」と荻野さん。
そう。そうやって要求に応えていくことは、棚を作る上で(全点買えるわけじゃない図書館では選書にもね)不可欠の知識・情報を蓄積していくことになるのですよ。現場での実践が、いちばん確実に知識を身に付けられる方法ってわけ。
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なんだか拙く散漫なまとめ方になってしまったけど、棚に喝を入れたいけどアーティスティックなセンスにはいまいち自信がない、と二の足を踏んでいるあなた、一度八重洲をのぞきに行くときっと元気が出て、えいっと踏み出せると思うよ。
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荻野さんお忙しい中、お時間割いていただいてありがとうございました。
うちの隊員オレンジ・ペコが「ああいう上司だったら、バリバリ仕事したくなるよねー」と、瞳にちょっとハート飛ばしてました。