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▲風俗嬢意識調査 top |
オリエンテーション |
風俗嬢へのアンケート内容 | 活動日誌●199908--10 | 活動日誌●200003--05 | | アンケートにご協力下さい | 11. 4シンポアンケートから | |
活動日誌●1999年8月--10月 | [最新日誌●10月21日付/11月25日更新] |
8月10日(火)
新宿ロフト |
新宿ロフトプラスワンでのイベント「内外タイムスの50年」に参加。内外タイムスの薄井さんや、ストリッパー一条さゆりを紹介するコラムなどを書いているみのわさんらのトークのほか、フードルの利沙ちゃんと流宇ちゃんがゲストで登場。アイドルみたいで超かわいかった。2人の連載が読めなくなるのが残念。 |
8月14日(土)
曙町・親不孝通り |
意識調査プレテストで横浜・曙町へ行く。はじめての曙町に超感動。一種のテーマパークです、あそこは。ビルの何階とかじゃなくて一つの建物全体が風俗のお店になっていて、看板とかも超派手でおもしろかった。風俗喫茶に寄り、通称「親不孝通り」を歩く。絶対また行きたい!この日はお盆休みということもあってか、訪ねたお店の待合室はお客さんでひしめきあっていて、当然女の子空いてなくて、仕事帰りの女の子を直撃してプレテストを行う。3人しか出来なかったがみんな明るかった。特にAちゃんは、しゃべりたいっ、聞いてほしいって感じでいっぱいしゃべってくれたので、15分以内の予定が20分くらいかかってしまった。曙町で働いてるから元気なのかな?と思った。一方、Yちゃんはこの道長いし、取材慣れしてるみたいで、仕事のこともお客さんのことも考えがまとまっていて簡潔に答えてくれた。このあと池袋のイメクラにも行くが、同じくここも大繁盛で諦めて帰る。 |
8月15日(日)
豹ちゃんの |
午後、ドキュメンタリー番組を観る。ろうあの風俗嬢で有名になった豹ちゃんのドキュメンタリー。風俗嬢のドキュメンタリーって、なんであんなにナレーションの声が暗いんだろう。こわいやん!って思わずつっこみたくなる。 |
8月17日(火) 花札と歯痛 |
内外タイムスのイメクラ取材で一緒に池袋に連れていってもらう。取材している間、お店の従業員と花札をして負ける。取材終了後、意識調査で2人の女の子にアンケートに答えてもらう。Rちゃんは歯が痛いところ、がまんして協力してくれた。親の借金というネガティブな動機と一見思われるが、仕事に対して誇りはすごくあるというし、罪悪感もまったくないという。Uちゃんは、「他の職業に例えると?」という質問に、「さびしいひとにやさしくしてあげるし、彼女の代わりになってあげたりするからボランティアかな」と言っていた。Uちゃんのように、風俗の仕事を「福祉」と答える子が多い。仕事の捉え方が窺える。 |
8月26日(木) 拘束プレイ |
池袋のイメクラ取材に同行。プレイルームに手足を縛る手錠のようなものがあったのでそれを使ってひとりではしゃぐ。取材終了後、2人の女の子にアンケートに答えてもらう。2人とも風俗歴はそれぞれ2、3ヵ月で、取材顔出しOK。面談は1人ずつ別々に行うのだが、2人とも、「誇りはあるか」という問いに、「お客さんをイカせてあげられるということに誇りを持っている」と答えた。最後に答えてくれた子が、「アンケート結果見てみたい」と言っていた。みんなどう考えているのか興味があるみたい。 |
8月27日(金)
こっ、こんな |
ひとりで渋谷のイメクラへ。オープンしてそんなに経ってないせいか、行った時お客さんはいなかった。お客さんが来ないうちに4人にアンケートに協力してもらう。働き始めて1週間とか5ヵ月が3人でそのうち私と同じ23歳が2人、19歳が1人だったので、みんな初々しいし、セーラー服が良く似合う。店長に、「こっ、こんな子がどうしてこんなところに!こっ、こんな子がこんなHなことをするなんて!って感じでまさに男の夢ですね」とコメントすると、「あんた、誰?」と冷ややかな目で見られる。お店のコンセプトなのか、茶髪や顔グロはいなかった。 |
8月28日(土) 深田恭子 |
近々内外タイムスを辞めて新たに風俗誌をつくるために仲間と出版社を立ち上げる矢島さんの仕事で、池袋の性感ヘルスに同行させてもらう。矢島さんは今までにない風俗誌をつくることを目指していて、今日の取材の仕方にもそれが表れていた。女の子の写真に修正が入らないように、(例えばフェラチオのシーンは)おちんちんの代わりにバナナを使用して、女の子の顔の細部まで写真にちゃんとおさまるように気を使っていた。矢島さんは以前、「単なる女の子の裸を撮ればいいとか、モノのように撮るのではなくて、ちゃんといい部分とか引き出せるように撮りたい」みたいなことを言っていたので、それは私たちの盲点だなと思って感心したことがある。いろいろ勉強させてもらいたい。同行した性感ヘルスに行くと、待合室に案内され、そこではお客さんが何人かいて、私一人だけ女だったので少し緊張した。待合室で23歳くらいの女をみたら「ゆっこちゃん!」と一声かけてほしい。すぐにプレイルームに案内され、矢島さんの取材が終って、女の子にアンケートに答えてもらう。彼女は質問に対してあまり多くを語らなかった。ウザイと思っているか、別に何も答えることがないのか(そういう意味で深田恭子に似ていた)。とりあえず申し訳なさそうに部屋を出る。 |
8月29日(日)
パンティー |
日曜日ということで、夜、渋谷のイメクラに出かけたが、途中、すごい豪雨にみまわれ、ハチ公のところのスクランブル交差点は膝まで水が浸かる池みたいになってて、「え〜っ、どうしよう」と思って行くのを躊躇ったが、まさにこの豪雨の今こそ、客の足は引いているはず!と思って、暇な店の方が女の子空いててうれしい私は、「もっと!もっと!」と心の中で叫びながら池のようなスクランブル交差点を渡った。渡っている途中、雨宿りしている人々の視線が私に集中しているのが気になったが、これも調査のためと思えばなんてことなかった。でも、この姿が翌日のニュースで放映されたりしたらちょっといやかなと思った。案の定、お店は空いていた。店の玄関の前では、あまりの豪雨のため帰るに帰れぬお客さん2人が自分を持て余していた。私はびしょ濡れになっていたため、お店のひとにタオルを拝借して、マントみたいに被っていたので女の子に変な目で見られたりした。お店の従業員のひとは気を使ってくれて、「短パン貸してあげようか」とか言ってくれたりした。「パンツもあるから」とも言ってくれたが、お客さんへのパンティープレゼント用のものだったので遠慮した。すごくいいひとたちだったので、来る時高円寺で買った、仕事が成功するおまじないのろうそくをあげた。 |
9月2日(木) 南智子語録 |
午後3時、渋谷のイメクラへ行こうとお店に電話をするが、取材中なので夕方6時ごろにしてくれと言われ、渋谷で時間潰しに『諸君!』10月号に載っている「開かれた女たちー鹿島茂(司会)、藤本由香里、酒井あゆみ、南智子、北原みのりによる座談会」を読む。セックスワークについてとかの話がされてある。 |
9月3日(金) 賎業意識とは何か |
お昼、昨日だめだったお店に再度行く。しかし、空いてる女の子は2人だった。「風俗で働いていることで、生活・手続き上困ったことは?」という質問に、一人は「お金を借りたり、カードを作ったりする時に困る」、もう一人は、「引っ越しする時に困る」と答えた。彼女たち以外にも、他のお店でも、例えば「源泉徴収とかの証明がない」とか、「税金を申告する時困った」とか、「履歴書に書く時や、友達に聞かれた時困る」とか、「保険のことを突っ込まれたり、給料明細、アリバイなどに困る」などの意見があった。手続きの問題とかは、風俗が職業として認められてないから生じるのだと思う。また、人々の風俗に対する賎業意識も影響しているのかもしれない。 |
9月5日(日)
「なんでこんな |
池袋のイメクラへ行く。日曜日なので夜が空いているだろうと思って9時に行ったら、逆に女の子が少なくて2人しか調査が出来なかった。土曜の昼夜と日曜の昼は混んでるだろうと思って日曜の夜にしたのに、店長に「昨日とか今日の昼間だったら女の子いっぱいいたのに」と言われて、すげー後悔。今度からそうしよう。 |
9月6日(月) 山田詠美 |
昼、昨日行ったお店に再び訪れる。女の子の出勤時間がバラバラなので、12時オープンから来る子もいれば1時とか2時とか3時に来る子もいるので、根気よく、12時から4時まで居座る。1時間ごとぐらいにぽつぽつと調査をし、女の子の出勤を待つ間の中途半端な時間は、お店の従業員らが昼間から燃えまくるドリームキャストの格闘技ゲームの観戦で店長を応援。あまりの盛り上がりに、「ここは一体どこやねん?!」という錯覚に陥る。 |
9月7日(火) バイブは活力 |
今日行く予定だった渋谷のお店の店長は私より年下と聞いているので、すごく楽しみにして店長からの電話を待っていたが、連絡なかったので今日は勝手にオフにして、友人が高円寺にオープンしたアダルトショップのお店に買い物に行く。 |
9月8日(水)
風俗嬢が |
夕方、薄井さんの取材の仕事に一緒に行かせてもらう。お店の場所は今日の昼に起こった「池袋通り魔殺人事件」の現場から少し離れたところ。もし取材が昼からだったら東急ハンズ前を通っていたかもと思うとゾッとした。初めてゴムつきのイメクラのお店に行った。中にはゴムを使わない女の子もいると思うが、アンケートに協力してくれた5人のうちほとんどはゴムを使用しているようだった。 |
9月11日(土) 西川貴教と尾崎豊 |
9月5日(日)の失敗を教訓に、夜池袋のイメクラへ。やっぱり女の子がいっぱいいて、8時半から10時半までで7人のアンケートがとれた。ここのお店の店長は、すげー愛想よくて、西川貴教みたいなノリの良さ。女の子を紹介する時に、「次は指名NO.1の〜ちゃんでーす」とか、「次は二枚目の〜ちゃんでーす」とか言って、すげーテンション高い。 |
9月12日(日) 射精産業労働者諸君 |
再び横浜曙町へ。薄井さんの承諾を得て、調査対象地域として新宿・渋谷・池袋に加え、横浜も入れることに。私がまた曙町に行きたかったから。えへ(^_^)。
などなど。 |
9月14日(火)
宮台さんから見た
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夜、渋谷へ行く。先週9月7日(火)に行く予定だったお店にやっと今日は行けた。このお店は、在籍している女の子自体少ないので、出勤していた女の子は3人だった。たまたまこの3人は、しゃべり方、性格、考え方がそれぞれ全く違うタイプ(タイプ別に分けるのは失礼)で、調査をしていておもしろかった。 |
9月18日(土) Rちゃん連絡待つ |
3日間さぼってしまった。パソコンが調子悪くなってデータが消えてしまったので不貞腐れて寝ていた。しかし、その分プレッシャーが大きくなり、来週から本腰入れて取り組むことにした。具体的には、毎日、終日お店に入り浸るつもり。一日10人目標。やれるかな。(ここで宣言しておいたらやるだろうと自分を追いつめている)
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9月20日(月) |
9月6日に行ったお店に行く。出勤していた女の子の内、この前いた女の子が半分くらいで、新たにアンケートとれたのは5人。見通しが甘かった。 |
9月21日(火)
客を蹴り飛ばす |
9月1日に行ったお店に行く。今日も思い出に残る出会いが。 |
9月23日(木) いつか起る
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9月11日に行ったお店へ。昨日店長に電話したら、「今日はこの間と同じ女の子しかいないから、明日の午後3時くらいに来れば5人はアンケートとれるよ」と言われたので期待して行ったけど、世間は休日なのでお店は昼間からお客さんで超満員。3時から9時までいたけど3人しか出来なかった。でも、その日は徹夜だったので、私にとってはグットタイミングのお昼寝ができた。途中でアンケートで起こされるのがつらかったけど。 ここのお店はあるいけない特徴が。今日答えてもらった女の子で、「今まで働いたお店で何かいやなことはありましたか」という質問に、「予定の労働時間を断りもなく延長させられた」と答えた子がいた。その子はお店の人に改善するよう訴え、一旦約束させたが、また同じことを繰り返すのだという。前にこのお店に来た時も同じように答えた子がいて、その子はお店側に「終電がなくなったのでタクシー代を請求した」と言っていた。他にも犠牲者はいるとみた。 予定の労働時間を断りもなく延長させられたというのはどういうことかというと、シフト通りの仕事を終える時間だというのに勝手に店側が次のお客さんをとってしまって、「もうお客さんとっちゃったからお願い、もう一本ついて」と言われることである。ここのお店は繁盛していそうだから、従業員の感覚がお客さん至上主義になってしまっているか、確信犯的にそういう方針にしているかのどっちかだと思う。いつか女の子がマジギレするぞ。 |
9月24日(金)
職業の境界線とは |
今日は2軒行った。はじめに行ったお店では2人、そのあと行ったお店では3人のアンケートがとれた。 みんな風俗歴1年以内でそのうち2人は以前水商売をしていた。水商売をしていた2人は、他の子と違って、この仕事については「指名」とか「愛情を注ぐ、恋人になりきる」、「精神的なものにつきあってあげる」ということを共通して意識していた。全体のサンプルを用いて比較しないと言えないことだが、お水をやっていた子は、風俗の仕事をその延長のように捉えているのかな。お水をしていなかった子でも、風俗の仕事を水商売に例える子が何人かいるけど。確かにお話するのがうまくないとどちらもできない仕事ではある。 お水をしていたある女の子は、「売春は悪いと思いますか」という質問に対して、「どちらでもない。この仕事をしてからどこまでがいいか悪いかとか、どこまでがどうとか分からなくなってきた」と答えている。実際風俗で働いてみると、従来自分が思っていた様々な職業なり職種の境界線というものが見直される(考え直される)ということが起ってくるのだろう。良い現象だと思った。 |
9月26日(日) 真夜中の曙町 |
やってきました横浜曙町!天気も良くって風俗日和って感じ。でも日曜日で超混んでいて、さらに女の子は前にもいた子が多くて、新たにアンケートとれたのはわずか2人。私は暇でまたホルモン道場に行ってしまったぜ。 現役看護婦さんに出会った。風俗で働き始めてまだ2日目であるが、この風俗の仕事は、「その人の身体的・精神的満足を満たせるようにすること」という点で、看護婦の仕事に似ていて、「ただやることが違うのかな」と言っていた。本物の看護婦さんだけに説得力がある。 もう一人の女の子は、風俗歴1ヶ月半だが、この仕事をするようになってからの体の変化として、「歯ぐきから血が出やすくなった」らしい。前にもそんな話を聞いたことがあるが、なんでじゃろ。仕事内容に関係あることなのかな。だれか知ってたら教えてくりくり。 その他余談として、浄水機を買うのが目標という子がいて、彼女はお酒が好きだから、おいしいお酒を飲むためにおいしい水が必要なんだって。極めるわけだな。私もお酒好き。でも水はいらんの。ロックかストレートで飲むから。お前のことはええってか。 今日は朝早く家を出たから夜眠くなって、もう一軒行こうと思っていたけど、「死ぬ〜」とか言ってうっかり寝てしまった(許せ薄井さん)。目が覚めたら終電に間に合わない時間になってしまっていて、横浜で一泊する羽目に。夜中、曙町を一人でうろつき、京たこなど食べる。朝方お店に戻ってまた寝て、起きたら朝の9時45分。あわてて寝ていた従業員をたたき起こし、10時開店の準備を手伝う。一体何をしに来たのか。それは言わない約束〜。 |
9月27日(月)
風俗店における |
曙町2日目。朝から忙しかったため、調査を諦めて帰った。 帰り際、お店の壁に、Rちゃんの決意を書いた写真が貼られてあるのをみつけた。「支払い以外は全部貯金する」。 ここのお店に限らず、標語みたいなものを壁に貼り付けてあるお店は今までもあったのを思い出した。 池袋のあるお店には、徳川家康の名言(多分、人のせいにするなみたいな意味の言葉)が貼ってあって、渋谷のあるお店には、「世界の平和と幸福なんたらかんたら」という標語が貼られていた。誰の趣味か分からないけど、なんかいい感じ。「ああ、このお店は世界平和を願っているのだな」とか分かるから。我が家にも何か標語を。 |
9月28日(火)
祭りのあとの
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池袋の新しいお店に。すごく小規模店で女の子は3人しかおらず、在籍も10人もいないというくらいだからすごく家族的な雰囲気に包まれた店である。 今日に限って珍しく私は、前もって雑誌でお店の女の子をチェックして行った。いつもはそんなことはせず、お店に調査に行ってからその後、風俗誌や内外タイムスを見て、「あっ、〜ちゃんだ!」とか言って、ひとりでアルバムを見るように喜ぶのだが、今日は逆バージョンをやってみようと思ってやったら、雑誌を見て風俗に遊びに行く客の気持ちが少し分かったような分からんような。 雑誌に載っていたRちゃんに会えた。Rちゃんのことは前に雑誌のマンガになっている体験取材の記事で読んだことがあったので、会った時はマンガのRちゃんを思い出してちょっとドキっ。そーか、マンガって、読者の想像を掻き立てるから結構期待効果があるんだな。 でも今日のRちゃんは具合悪くてしんどそうな上、このアンケートに答えたらすぐにお客さんにつかなければならず、私はごめんねと言いながら忙しそうに質問しなければならなかった。Rちゃんを待っているお客さんは私も見たマンガを見て来たのかな。そしたら今ごろ頭の中は大変だなと思いながら調査をした。 その他の子とはゆっくりアンケートをとることができた。19歳にして既にホストは卒業したという子がいた。「飽きた」と言っていた。9月1日に行ったお店にもホスト卒業生がいたが、飽きる子は飽きるのね。彼女はアンケートに対しては多くを語らなかった。そして、「わからない」という答えが多かった。でも、「今の仕事の良い点は?」のところで、「フェラチオがうまくなった」と答えた。彼女と違って、フェラが上手くなることについて複雑な気持ちになる子もいるらしい(月刊『創』11月号掲載「魔境の迷路」松沢呉一連載参照)。 一方、淡々としていた19歳の彼女とは打って変わって、この道2年6ヵ月のMちゃんは、仕事に対する学習意欲が感じられる。例えば、今の仕事の良い点は、「男の本心が分かる」ことで、他の職業に例えると、「役者」で、この仕事で売っているものは、「客の妄想や幻想を現実のものにしてあげること」と答えた。 更に、同業者の女の子の洞察にも深いものがある。「風俗は、落ちるとこまで落ちた人がするものだと思っていたけど、逆だった。普通の仕事してる人より考え方とか人間性がしっかりしている女の子が多い」とのことである。 今日の3人はたまたま、動機が「貯金のため」と言っていたが、9月12日に出会った女の子も言っていたように、風俗嬢が金使いが荒いというのはウソである。そういう子も中にはいると思うが、ホスト卒業生がそうであるように、金を使いまくるというのも、いづれ飽きることではないだろうか。そういえば最近では女子高生の援助交際は減ってきていると言われている。5、6年前、ブランドものを買うことが一種の流行で、一過性のものであったように思う。今は落ち着いてきているのかな。祭りのあとの静けさに似ている。(今度は何の祭り?) 帰り際、お店の従業員に、「今日は、風俗店摘発の瞬間の場面が出る、警察24時みたいな番組があるらしいっすよ」と教えたら、「えっ、どこのテレビ局?、観る観る」と興味津々だった。私、観損ねたけど、誰か観たっていう人いたら教えてくりくり。 |
10月9日(土) ボスからの電話 |
内外タイムスの薄井さんから連絡がくる。来週からたくさん風俗店を紹介してもらえることに。この調査日記しばらく休んでいたけど、またこまめに更新していくので乞うご期待ということで。次回の日記は多分、14日からです。 |
10月12日(火)
男女共同
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総理府主催の女性に対する暴力に関するシンポジウムに参加。資料の男女共同参画審議会の答申(今年5月27日)を読むと、売買春は「女性に対する暴力」であり、「男女共同参画社会の実現を阻害する」とある。う〜、なんでそうなるんか教えてくれ〜! シンポジウムにはパネリストとして、弁護士の角田由紀子さんが来ていた。角田さんによると、夫から暴力を受けた女性が警察に通報して警察官に来てもらっても、「たかが夫婦のけんかぐらい」って感じでまともに扱ってもらえないということがあるらしい。これって、「夫婦だから多少の暴力があってもしょうがない、夫婦だから我慢しろ」ってことじゃないですか。「風俗で働いてるんだからしょうがない、我慢しろ」っていうのと一緒やん。ひどい話や。総理府は夫婦間の暴力についてはちゃんと問題にしているのに、風俗での暴力は問題にしてくれないんですね。そっか、総理府は風俗自体が暴力っていう認識だから、風俗での暴力被害は取り立てて問題にすることでもないんだ。むかつくー。 かながわ・女のスペースみずらの阿部さんという人も来ていた。みずらでは、夫からの暴力を受けたりして行き場がなくなった人とかを受け入れているが、そういう女性のためのスペースを作るのに、行政に何度も働きかけないとなかなかお金を出してもらえなかったり、また、スタッフやスペースが足りない状況でも行政の理解が得られなかったりと、いろんな苦労があるようです。 で、風俗嬢のためのフリースペースみたいなものができればいいなと思う。これは、現状では行政に任せることなんてできない。だって、そんなものが作られたら、きっと「社会復帰の訓練」なんかさせられて、風俗嬢一掃キャンペーンが張られるに決まってるやん。男女共同参画審議会が風俗の仕事などを社会の悪と思っている以上、「助けてあげます」と言って来たって、こっちから願い下げやっちゅうねん!当然その時は審議会の委員に風俗嬢やセックスワーカーを入れるべきだ。 |
10月13日(水)
インドの働く
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国際子ども権利センター主催の子ども労働のシンポに参加。昼間はインドの働く子どもたちとワークショップで交流できた。彼らは「自分たちの労働の価値を認めてほしい」と訴えていた。この訴えは、「子どもにも働く権利が認められないとこんな危険な目に遭うんだ」ということ以上のことを言っていたように思う。 去年くらいからインドの子ども労働に注目している。なんかセックスワーカーの労働権の主張に似ているからだ。年々、彼らの主張の仕方には変化が見られる。去年は「私たちの働く権利を認めろ」というものだった。そして今年は、「日本の子どもが自分たちの権利が認識できるようお手伝いに来ました」と言っていた。 私がインドの働く子どもにした質問は、「働かないで学校に行きたいか?」というものだった。そしたら彼は、「学校に行かないで働きたい」と答えた。多分、彼にとっては、労働の現場が学校なのだろう。近いうち、インドの働く子どもたちに会いにスタディーツアーに行きたい。 |
10月14日(木) あこがれのマット |
午後12時、薄井さんと横浜曙町のマットのお店へ。今回の調査でマットのある店に行くのは初めて。もちろん初めてマットというものを目にした。感動した。これが長年憧れていたマットか。白くて空気が入っててでっかい。マットプレイでローションを思いっきり使うらしく、巨大ローションがそばに。薄井さんにマットについて説明をしてもらう。 薄井「こっちが枕で、こっちが足つきね」 ゆっこ「これはうちでもベットとして使えるかなー?やっぱ寝心地わるいかなー?」 薄井「そんなことないよ。すごい寝心地いいよ。上にタオルとか敷いて寝れば」 なぜそんなことまでこの人は知っているのか。あやしい。もしかして家にあったりして。わーあたしもほしいわー!薄井さんなら入手ルートを多分知っているはず。引越ししたら絶対買うぞ。っていうかクリスマスプレゼントに誰かくれ。 薄井さんと交代でアンケートをとる。マットだけにマットに関連した回答が得られた。今の仕事に対する誇りは?という質問に、「『私たちはマット嬢よ』みたいな。『普通のヘルス嬢じゃないのよ』」とか、「普通の人にマットプレイはできない」(から誇りがある)と答えた人が2人。それから、マットプレイでよく動くせいか、この仕事を始めてからの体の変化について3人の子がそれぞれ、「腕の筋肉がついた」、「腕力がついた」、「やせた。肉体運動だから」と答えた。マットに限ったことではないけど、「フェラやせ(顔やせ)した」という子もいたな。 このお店は曙町ということもあって、許可店のファッションヘルスなんです。だからお店はお客さんにも強気で出れるし、性病検査も月一回義務づけてある。ちゃんとしてるんです。だから本番を迫る客も少ない。今日は13人アンケートをとったが、その内訳は、(本番を迫る客)「10人中0人」、「今までに一人」、「ここの店ではいない」、「10人中1人いるかいないか」、「100人中1人」、「100人中2人」と6人がそれぞれ回答。「10人中1人」が1人で、「10人中1〜2人」が2人。「10人中3人」が1人。「10人中5〜7人」と答えたのはわずか3人。これは無許可店では今までに見られない傾向である。公権力に守られるシステムがあるのとないのとではこんなに差があるんだな。このお店、女の子を守ることにおいては、女の子からも高い評価を得ている。中には「スタッフが注意・禁止事項を徹底しているから、そういうところが誇りに思う」と答えた子もいたほど。 その他の意見。風俗する前とした後での風俗に対する見方の変化のところで、「変わらない。仕事する以前の方が風俗嬢っぽかったかも。本番なしでイカせてあげたりしてた」という子が。そういう意味では潜在的風俗嬢は多いかも。 あと、この仕事を始めてからの気持ち・精神的な変化として、「人に対してキツくなった。この仕事をするようになって自分に自信が出てきたから」と答えた子がいた。その子は、風俗の仕事をやりはじめたきっかけが、「やることがなかったから」だそうだ。自分でなきゃやれないことや自分だからやれることを見つけると人って、自信がつくもんね。私事で恐縮だが、私は人に対して全然キツくない。私も早く我が道を。 |
10月18日(月)
エロス
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オーストラリアのセックス産業政府陳情団体の人と話す機会があった。オーストラリアでは、性産業が合法化されている州が幾つもある。どうやって合法化していったのかという話の中で、今私がやっているこの意識調査のように、オーストラリアのロバータ教授が300人のセックスワーカーを対象に行なった意識調査の結果報告が、世論に大きく影響を与えたそうだ。私はそんなこと知らなかったし、そこまで考えてなかったので、「おおっ、すげえことじゃ」と思って驚いた。そんな風に聞いたらなんか派手なことやっているのかと思うけど、やっていることはすごく地味で地道なものである。でも楽しいけど。いろんな子に出会えるから。私にとってこの調査は、世論をどう動かせるかというビジネス的な意味合いよりも、風俗嬢にどう還元していくかということが大きい。また、おそらく私の人生の経験の中で、最も濃い経験で貴重な宝物になるとも一方で思っている(「くせー」宇多田ヒカル風に)。 |
10月21日(木) 中尾彬の気持ち |
午後12時、一人で横浜曙町に行く。「今から調査に入りますぜ」と薄井さんに電話連絡を入れ、周りを窺いながら某ファッションヘルス店内へ。内ポケットから薄井さんの名刺を取り出し、店長に渡す。早速部屋に案内され、1人目の女の子にアンケートをとる。今日はいきなりすごい話が。新宿で働いていた時、女の子の引き抜き行為をしたと疑われて、誓約書にサインしたため、1ヵ月監禁された(夜中3時〜4時は外出できた)というのだ。その誓約書には、1ヵ月間そういう労働条件で働くことなどが書かれてあったらしい。サインしないと親に言うぞとか脅されたので拒否できなかったという。まだ彼女は19歳だし、その時どうすればいいかとか分からなかったのだろう。こういう話を聞くと、いよいよ性産業の透明化が急がれるべきだと思う。すべての風俗店を許可店にして、誰がどこでどのような営業形態で営業しているかを行政や警察が把握して管理を徹底すべきだ。彼女が被害を受けた店はもう今はなくなってしまって、加害責任も問われないまま、奴等はまた別のところで同じことを繰り返しているのかもしれない。このことは、性風俗産業がいかに無法地帯であるかを如実に表している。彼女はその後、安全な曙町の今の店に移動した。そういう悲惨な体験からだろうか、彼女は風俗の仕事を、「仕事だとは思っていない」。 他の女の子のアンケートをとっている時も、まださっきの衝撃を引きずっていた。しかし、このお店では3人しかアンケートをとれなかったので、気持ちを切り替えて、薄井さんに電話して2軒目を紹介してもらった。 2軒目に行ったところは、初の人妻系である。ちょっとドキドキ。だって今まで行った店では、タメ口でしゃべれるような年の近い風俗嬢が多かったから友達作りに行く感覚だったんだけど、今回はやっぱりすごい年上の人がいるんだろうなと思うと、そりゃ緊張しますよ。また、どのようなジェネレーションギャップがあるかも興味があった。店に入ると、みなさんがたむろするような待合室に案内され、店長らしき人から「ここにいればみんな来るからてきとーにアンケートとって」と言われた。店長いい感じ。しばらく女の人の離婚の話を横で聞いていた(っていうかタイミングを見計らっていた)。しかし自分がだんだん「愛する二人別れる二人」の中尾彬の気持ちになってきたので、話していた2人の間に割って入って、「そんな男別れちゃいなよ、別れちゃえばいいじゃない」と説教した。というのはウソで、「あの〜、アンケートに協力してほしいんですけど〜」と言うと、ニコっと快く引き受けてくれたのでちょっと安心。これで2人目も声を掛けられそう。 人妻だけに人妻に関連した回答が。このお店が初めてという彼女は、風俗の仕事を始めたきっかけが「(夫との生活が)セックスレスだったから」。で、仕事を始めてからの体の変化は、「性感帯が開発された」らしく、気持ち・精神的な変化は、「満たされている」のだそうです。そしてこの仕事の良い点は、「仕事をしている自分と、家にいる時の自分、人生を2通り楽しんでいるような気がする」。これは酒井あゆみの本の帯に使えるぞ。その他、人妻系の店ならではの話は、「子どもを預けて働いているので」罪悪感がある、「当日欠勤が無理なので子どもの風邪とかいきなり熱が出たりしても休めなかった」ので生活上困る、「保育園に提出しないといけない書類とか書く時に困ったことがあった」ので手続き上困る、など。あと、お客さんで、「AVみたいに『奥さん!!』と言ってくる人、『だんなとはどうやるの』とか下品な話をする人」が一番いやだという人もいた。 ジェネレーションギャップというほどのものではないけど、言葉や表現の仕方に風情を感じたり、大人だなあと思うものは、例えば、「愛とか女とかを売るのではなく、その瀬戸際の部分」を売っている、とか、「自分を磨けること。心の持ち方、サービスする側の心の持ち方を磨いていく。どんなに顔や体がきれいでも、心がきれいじゃないとお客さんに喜んでもらえない」(ここは富司純子風に読んでくれ)というところをこの仕事の良い点としているとか。 これは人妻系の傾向として語るのはサンプル数的に無理があるけど、この店に限っては、ある傾向がみられた。それは、みんな一生懸命やっているという認識が強いということと、他の職業に例えると、肉体労働者系と福祉などの癒し系(?)にはっきり2分され、年齢層が低い店でみられるようなバラエティーにとんだ例えはみられないということだ。 前者を具体的に紹介すると、どういった点で誇りを持っているかについて、「お客さんに満足させてあげたいというのがあるから。自分なりに一生懸命やっている」、「普通の仕事のように一生懸命やっているので」、「お客さんに本当に心から満足してもらえるようなサービスができた時。こういう仕事って、『これでいい』というのがないから毎日が勉強。体を売ってるとかいうことは考えたことはない。楽しい時間をコーディネートすることを考えている」。また、風俗に対する見方の変化について、「よくそういうところで働いているなと思ってたけど、みんな目的・目標を持ってやってるわけだから、目的・目標なくだらだら仕事を続けている人よりはまし」、というような回答(9人中4人)が得られた。後者の具体的な数値としては、「肉体労働者」2人・「佐川急便」1人(計3人)、「看護婦」1人・「介護福祉」、「福祉」2人・「カウンセラー」1人(計4人)となっている。 このお店は遅番・早番とはっきり分かれているらしく、夕方頃になって、帰る支度をしだす人やら、仕事を始める準備をしだす人やら、赤ちゃんの写真を見せ合う人やらでどわっと混みだした。私は調査どころではなくなって、机の下で寝はじめた。なんで調査に来るといっつも寝るのかな。しばらくすると店長らしき人が来て、「〜さん何番(部屋の番号らしい)、〜さんは何番」とか言い出して、また部屋は閑散となった。そこでぽつりと本を読んでいる人がいたので、「何読んでるんですか?」と聞いたら、えーっと、何だったっけ?スタンド・バイ・ミーの原作者の人の本。忘れた。「日本の作家では誰が好き?」って聞いたら、「遠藤周作とか村上春樹とか……」「えっ、村上春樹好きなん?」わーい!やっと見つけたぞ。春樹ファンの風俗嬢(ここで当然春樹作品について盛り上がる)。彼女にもアンケートに答えてもらった。彼女は、高飛車な人をイカせられた時、「やった、勝った!」と思うんだって。また、お客さんと友達になっていろいろ気遣うことなくおしゃべりできて、そういうお友達ができてよかったなとも思うし、いろんな人と腹を割って話せるようになって、そういうところがこの仕事の良い点だと語ってくれた。売春については、「買う人がいて売る人がいるんだからコンビニと同じかな。(略)自分の体を大事にするという意味がよく分からない。何でも自分で納得してればいい」というふうに言っていた。 今日はなんか楽しくて夜8時くらいまでお店に居座っていた。働くなら曙町、人妻系だな。 |
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