2008-04-20

お部屋1463/あれやこれやの表現規制 12

「あれやこれやの表現規制11」のコメントで、natunohi69さんに教えられてロフトプラスワンでの試写会のあとの討論の模様を観ました。面白いです。

この試写会が開かれた趣旨としては、「電話で抗議していたのは右翼ではなくネット右翼であり、街宣車で抗議していたのも、一団体だけであって、それだけで右翼全体がやったかのように言われるのは迷惑」ってことのようです。もっとはっきり言えば、「ネット右翼と民族派右翼とを同じ右翼という言葉でくくるマスコミはけしからん、一緒にするな」ということでしょう。

この討論会を見ても、全体としては「反日映画である」「駄作である」という意見が強いにせよ、鈴木邦男が発言するまでもなく、映画の評価は天と地の違いがあって、とうてい右翼でひとくくりにはできない。その点では、この試写会の目論見は見事に成功したと言えそうです。

この中で、この試写会さえも、結局は「靖国」の宣伝になってしまうのではないかとの危惧を語っている人がいましたが、鋭いです。民族派右翼の中でさえも、こうも多様な見方が可能です。観てない人は、「こうも人によって見方の違う映画って、一体どんなんだ」って気になりましょう。

私は見る人の思考の枠組みが反映される映画だと言ってきたわけですが、この討論会でも、そのことがきれいに出ていて、「この映画ってすごいかも」と改めて思った次第です。

natunohi69さんが言うように、中国だと本当に「親日映画」「親靖国映画」として上映できない可能性がありそうですけど、日本でこうなってしまった以上、3日くらい形だけ公開して、「日本ではこの程度の映画も公開できないのだ、彼らの言う表現の自由なんてその程度ものだ」と利用してくる可能性もありそうです。中国ならやりかねない。そういうスキを作ってしまったのは大失策です。

何人かの人が言っていたように、「無視すべきだった」というのが正解でしょう。どう考えてもヒットする映画ではなかったはずですからね。

今さら言っても遅いですけど、「では、これからどうするか」についても人によってバラバラ。私はやっぱり「親靖国映画を作るべき」という意見に共感があります。手伝いはしないですが。

しかし、それより「助成金の返還訴訟を起こす」という意見の方に拍手が多かったように思えます。だから右翼はダメなのです。そんなことをすると、いよいよ右翼の映画なんて作れなくなるでしょう。毒にも薬にもならないような映画にしか助成金が出なくなる。「こんな映画は300万で作れる」と豪語する以上、作ればよい。750万もらって、皆でスタッフをやって、たんまり日当をもらえばよい。

それどころか、「日本は表現の自由がありすぎる」なんて意見まで出る始末。アホかと。表現の自由を制限した時に、真っ先に潰れされるのはあんたらでしょうに。

木村三浩・一水会代表が言っていた「今回のことで、街宣車の活動が潰されるのではないか」との危惧の方がずっと正しい。

「あれやこれやの表現規制」でこの先書いていくように、自分が「不快だ」と感じるものを力で潰し、法律で潰していいのだと思う人たちが増えています。映画館や配給会社に電話をかけたような連中もそうです。

世間の人たちが「不快」「ウザい」「ダサい」「怖い」と感じるものの筆頭が右翼の街宣車であり、左翼のデモでしょう。最近は右派のデモも増えていて、警察の過剰警備はどっちも一緒。あれにいちいち手当が出ているのですから、税金の無駄遣いで言えば、映画の比ではないです。その手当だって、警察官には回らず、裏金になっているという話もありますし。

せっかくの盛り上がりに水を差すことになるので書かなかったのですが、中国大使館への抗議活動の日のことです。大使館の前まで言って写真を撮っていたら、その横をお上品なオバハン二人が「イヤねえ、せっかく来たのに、運が悪い」とか何とか言って通り過ぎました。たぶん麻布で買い物とシャレこんだのに、こんなところに出くわしてしまったのでしょうね。

右翼だの、左翼だのと関係なく、中国大使館に向けて抗議する人たちが不快、あるいは道さえ歩けない状態が不快ということですし、「チベットの人たちがどうなろうと知ったことではない。そんなことより今日はお買い物」ってことです。

ムカつきましたが、これがこの国の多数派です。その現実は決して見失うべきではない。こういう人たちにとっては、右翼であろうと左翼であろうと、その活動を潰したところでなんの痛痒もない。むしろせいせいする。

だからこそ、表現の自由については、思想や立場を超えて守るべきであり、いかに敵が憎かろうとも、その一線は越えてはならない。

もちろん、無制限に表現の自由を行使していいわけもなく、名誉毀損をしたり、著作権を侵害したり、肖像権を侵害したりしてはならないのは言うまでもない。で、「靖国 YASUKUNI」における肖像権は、おおむね問題なし(パンフと刈谷直治氏については、これ以降再度検討します)。

しかし、討論会の中で有村議員が言っているまんまの肖像権侵害を主張する人がいました。「自分もこの中に小さく写っているが、なんの断りもない。エキストラだって、契約書を交わし、ギャラが振り込まれるのに」などなど。この人はエキストラとして8月15日に靖国神社を参拝したんか。そりゃドラマや劇映画の話でんがな。彼は話がうまくて笑いましたけどね。

この彼の話で、「そっか」と気づいたことがあります。詳しくは次回。