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[第7章●バックアップについて考える]
3… 7通りの解決
[2005.02.15登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

この「章」については昨年3月に書いたままで放置してしまっていた。なんとなくモチベーションが下がってしまって、まそのうちモードに入っていたのだ。しかし、「15-7ドジョウじゃないのよウナギは」でも書いたように、メインで使っているコンピュータのハードディスクが突然ぶっとんでしまった。最近のコンピュータならびにOSは堅牢になっていて、なかなかここまでの大厄災は珍しい。ぼくとしては5年ぶりくらいだろうか。まさに災難は忘れた頃にやってくるのである。

それで、というわけでもないのだが、このバックアップについての考察もまじめに取り組まんとあかんな、と思った次第。

この章の「1」でも書いたように、バックアップを考える上でもっとも重要なファクターのひとつが「どこへ」ということになる。今使っているハードディスクの中へ別名で保存するというのはほとんど意味がないし、ハードディスクにパーティションを切って、別パーティションに保存するという方法が哀しい結果に終わることは、はしなくも今回の厄災がよい実例となった。

では、どこへバックアップをおこなうのか。

現時点で現実的に考えうる「どこ」は具体的にはどのようなものがあるか。
(1) 外付けのハードディスク
(2) 外付けのリムーバブルディスク
(3) CD-RあるいはDVD-R
(4) LAN上の同OSマシンのHD
(5) LAN上の別OSマシンのHD
(6) インターネット上のデータ保存スペース
(7) LAN接続型のHD

まず、(1)の外付けHD(デスクトップ機の場合は筐体の中に内蔵する2台目以降のそれも含む)について。

これはあまり現実的な選択ではない。なぜなら「月末はいつもスカンピン」の法則というのがあるからだ。給料日の直前になると、どうしても小遣いが少なくなる。サイフのなかはとても寂しい。しかし、それはなぜか不思議にいつもそうなのだ。今月はバッグを衝動買いしてしまったとか、おもわぬ飲み会が重なってねとかいう月に寂しくなるのは理の当然なのだが、おとなしくしていた月にその分余ってくるかといえば、そうでもない。いったい何に使ったのか判然としないまま、例月と同じようなていたらくになる。

HDでも同じである。デカい外付けHDを買ってくる。おお、すばらしい。ここをバックアップのために使おう、なんて殊勝なことを考えているのは最初のうちだけだ。そのうち、バックアップではないデータがそこに保存されることになる。つまり、内蔵には入っていないオリジナルのデータが保存されてしまうのだ。

いくら「収入」があっても同じ。別に浪費をしたとかじゃなくても「支出」は「収入」の隙を見てどんどこ増えてしまうものなのだ。

外付けHDには内蔵HDに保存するのと同じような手間で保存ができてしまう。内蔵HDの空きがタイトになってきたときに、外付けがなければ、そこでやおらHDの中身の整理ということになるのだが、あればあったで、そっちに保存してしまうものだ。

バックアップのためと思って外付けHDを購入した人は、案に相違して、その「外付けのためのバックアップ先」まで考えなければならなくなる。つまり、問題を大きくするだけなのだ。

続いて(2)の「外付けリムーバブルディスク」。これはMOなどを念頭において書いているのだが、これも現時点では現実性を失っているのかもしれない。MOなどのリムーバブルディスク類は値段が高いだけでなく、容量も比較的小さい。現時点でのバックアップ用途としては中途半端な存在になっている。少なくともバックアップ用途で「これから買う」というのはおすすめできない。

その点、CD-Rなどは違う。書き込みのできるCDドライブ、あるいはDVDドライブは昨今のコンピュータなら標準装備である。だからメディアを買ってくるだけで、そこに書き込むことができる。メディアはCD-Rなら数十円ときわめて安い。

最初の頃はCD-RあるいはDVD-R、つまり一回しか書き込めない式のものだったが、現在ではCD-RW,DVD-RWという「何度でも書き直せる」タイプのドライブが普通になった。多少の問題はあるものの、ハードディスクのように使えないものではない。

バックアップにこれを使うのは、かかる費用としてはもっとも安上がりだ。安価なメディア以外の追加支出は発生しないからである。

しかし、じっさいにCD-RW,DVD-RWに対してバックアップを行うか、というと、これはちょっと疑問だ。まず速度の問題がある。現時点でのDVD-Rの書き込み速度は8倍速、CD-Rでは16倍速どまりだろう。1倍速というのは150KB/秒であるので8倍速、16倍速はそれぞれ1600KB/秒、2400KB/秒である。一方、内蔵のHDは100MB/秒程度、USB2.0接続で60MB/秒、IEEE1394(つまりFireWire)で50MB/秒、LAN型のHDでも数十MB/秒は出る。つまり速度が文字通り桁違いなのだ。

CDやDVDってのは、まとまったデータ(たとえばあるシゴトの一件書類とか)を焼いて、別途保管しておくためにつかうべきものであると考えた方がよさそうだ。すくなくともぼくはそのような用途にしか使わない。

それに、手間の問題もある。CDなどにバックアップを行う場合、バックアップ時にわざわざメディアを挿入しなければならない。そんなの手間のうちにもはいらないと思われるかもしれないが、実際にはそうじゃない。ついついおっくうになる。バックアップというのは定時に自動的に、あるいは思い立ったら即座に実行できないと、なかなか継続しがたいものだ。メディアを探してきて、挿入してから実行というのでは、ナカナカ。

で、大きな組織ではどうやるべきかというと、「ファイルサーバをたてる」というのがまっとうな解決策になる。簡単にいうと、LAN上に1台のコンピュータをつなぎ、そのコンピュータのHDにそれぞれのマシン(それらのマシンを「クライアント」という)のバックアップを行うという方法だ。上の箇条書きでいえば、(4)と(5)がそれにあたる。

クライアントがWindows機だけ、あるいはMacだけなら、同種のコンピュータを用意すればもっとも簡単に用がたりる。WindowsもMacもファイル共有機能があるので、ネットワークでつなげば、それぞれのHD領域が利用可能になる。つまり(4)だ。

クライアントのOSが混在している場合には、ファイルサーバ側で、ちゃんとクライアントのファイルを取り扱うことができるかという問題が出てくる。MacーWindows間でもファイルの共有ができるが、ファイル名の制約など、いくつかの細かい問題が出てくる。それを吸収する方法を考えなければならない。

なによりも(4)にしても(5)にしても、家庭やSOHOにおいては、常時「サーバ」のコンピュータが鎮座し、動いている状態はどうなんだという問題はのこる。大袈裟じゃないですか。場所も取るし、電気も食う。そうした小さな環境ではこれらの解決策は現実的ではなかろうと思うのですね。これは回を改めて再考することにして、ここではパス。

残るのは(6) インターネット上のデータ保存スペースあるいは(7) LAN接続型のHDということになる。

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