2008-12-07

石井達朗『異装のセクシュアリティ』


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● 石井達朗『異装のセクシュアリティ』(新宿書房)新版

★★★ 「性の多様性」ってなんだかノスタルジックなテーマに思えますね。少なくとも言説上は。

本書は一九九一年に刊行された『異装のセクシャリティ』の改訂版である。この十二年の間にジェンダー/セクシュアリティをめぐって生じたさまざまな動きを考慮して、本文と脚注に加筆が施されている。

著者はアートへの関心を中心に、世界各所で垣間見られる、男女の二元性や通常の異性愛には回収されない性現象を広く追っている。その多様性をなぞるだけで、読み手の性の固定観念は激しく撹乱されることだろう。

一方で、タイトルの表記が「セクシャリティ」から「セクシュアリティ」に変更されたことに象徴的だが、性をめぐる状況は九十年代以降、日本でも大きく変化した。初版刊行時にはまだ同性愛やトランスジェンダーなど性の境界現象はアンダーグラウンドの特殊な問題でしかなく、そうした題材を扱った本書は、世間にいささか好奇の目をもって迎えられた。著者の「自己充足的にひたっていればそれですむ性の規範・性のステレオタイプから、人が逸脱し、それを蚕食しさえもする〈行為と表現のダイナミズム〉を、身体を軸にすえて透過しようとした」という意図が、どれだけリアリティをもって受け止められたかも疑問だろう。

しかし今日では、セクシュアリティは近代社会を考察する上での基本的な分析概念となっているし、性のマイノリティたちの存在も可視的になってきている。政治的な文脈での同性愛者の主張はもとより、トランスセクシュアルの医療化さえも実現した。本書で論じられた性の多型性は、日本という社会でも、日常性を帯びて見えるようになってきているのだ。

新版の装丁写真は、まさに今という時代を現わしているのかもしれない。花見の宴席に舞い降りたようなドラァグクィーンは、人々に好奇の目で見られてはいるが、排除されることなく、一般の風景の中に居場所を見つけている。その違和と受容こそが、この国の性の輪郭を暗示しているのだろう。