2005-12-29
過去供養
無精の伏見がなんで散歩を続けられているかというと、コースの途中に猫たちの家があって、彼らに会うのが楽しみだからだ。たぶん、そこにいるのは心ない人々が捨てていった捨て猫たちだと思われ、数匹でいっしょに暮らしている。道からちょっと入った薮の中に、誰が置いていったのか、雨露をしのげる家になる板箱があり、彼らは夜その下で身を寄せ合っているのだろう。毎日餌をあげに来るやさしい人もいて、食べ物には困らないようだが。
伏見はその子たちに勝手にニックネームをつけて、頭をなででやるのが日課になっている。それは、人生の成り行きで会うことが叶わなくなった友人たちにちなんだ名前。彼らへの贖罪も兼ねてかわいがっているのだ。
プライドが高く神経質な顔をしているが、本当はとても人なつこい黒猫には、ニューズと名付けた。自分を追いつめ過ぎず、元気にやってるか? シモユルで嘘つき顔の白猫は、スキップと呼んでいる。スキップするように歩いていて、見ているだけでこっちまでウキウキする。茶色の子は、おっとりしているのだけど、実は強情なところもあって、ロックによく似ている……。
いつも彼らに「今日も幸せな一日でありますように」と手を合わせて、再びコースを歩き出すのだ。この行為を、過去供養、と伏見は命名した。