2009-10-17
救いたい!
10/16(金)に第3回資料保存シンポジウム「資料保存を実践する―事例から学ぶ現場の知恵―」が江戸東京博物館で開催された。
NPO法人共同保存図書館・多摩 理事・事務局長の齊藤誠一さんによる事例報告「共同保存図書館の実現に向けて―多摩から提案する資料保存のしくみ」の中で、驚くべき話があったので、まずは急遽お知らせ。
その内容とは-
10/9(金)に、東京都立中央図書館から都内各自治体の図書館長宛にFAXが送信された。
実際に直接そのFAXに目を通してはいないので詳細は不明ながら、斎藤さんの話から内容をまとめると、概ねこんな感じであった。
・多摩図書館が所蔵していた多摩地域資料約7万冊と雑誌など併せて、 計約8万冊を処分することにした。
・引き取りたい館は、10/23(金)までに直接取りにくること。
通達から2週間ということは、図書館の稼働日で言えば約10日間。
引き取る側の負担で取りに行くのだから、当然費用がかかる。
各市区町村立図書館が引き取りを決断し、役所と予算流用とか補正予算とかの話をつけようとしても、図書館と役所の稼働日が普通はズレている上に、この間に運悪く体育の日が入っているので、調整には恐らく2~3日しか猶予がないだろう。
しかも何万冊を引き取るには運送業者の手を借りざるを得ないだろうから、そちらの手配も厳しいだろうと思う。
これでは、廃棄する前提でアリバイとしてFAXを流しただけと解釈されても仕方ないだろう。
更に驚くことに、今回の廃棄対象資料には、過去に脱酸処理までしていた地域資料も大量に含まれているという。
脱酸処理をするには、安くても1冊2,000円~3,000円くらいだろうか?
当然ながら脱酸処理をするということは、劣化を防ぎ永年保存していくために行う処置で、国立のアーカイブでも、脱酸処理はしたくてもなかなか予算が取れず腐心していると聞く。
都立多摩図書館は「都立図書館改革の具体的方策」(平成18年8月教育委員会決定)に基づき、都立中央図書館がそれまで所蔵していた雑誌の中から、約6,900タイトルを移管して、平成21年5月1日にご存知「東京マガジンバンク」として、リニューアルオープンしている。
今回のFAXでの通達は、そのマガジンバンクのため、書庫から押し出された地域資料を処分するということである。
東京の地価を考えると、簡単に書庫を増築したり、そうそう新たな保存書庫を建てるわけにはいかないこともわかる。
だが齋藤誠一さんが講演の中で、どうにか多摩地域の8万冊を救いたいと仰られている通り、戦前から戦火を逃れ先人が大事に保存し続けてきた資料群を、今あっさりと抹消してしまっていいとは、どうしても思えない。
特に地域資料は、一度失ったら二度と手に入らないものが多い。
それは将来の人への責任という意味でも、受け継がれていくべき資料なのではないだろうか。
都は五輪招致に150億円を投入し、痛くも痒くもないという。
その五輪会場予定地は更地のままというならば、そこに書庫を建てたっていいじゃないかと言いたくもなってくる。
どうにかして、早急に8万冊を救う手立てはないものだろうか。
※本件の続報はこちらです。
ひど過ぎですね。
世田谷住人ではありますが個人的に有償でもいくつかの雑誌は引き取らせていただきたいです。
[...] 救いたい! | ポット出版 – どうしてこんなに重要なことが簡単に影で密かに決まるんだ (#metrolib)。賛同者がいま一つのオリンピック招致、破綻した首都銀行の救済、築地市場の汚染地帯への移転に一千億円の巨費を投じながら、都民が長年蓄積してきた文献の保存に数億が用意できないとでも言うのだろうか。 [...]
はじめまして。
大変興味深く記事を拝読しました。
この件、こちらでも下記の通り詳細を確認致しましたので
お知らせいたします。
http://d.hatena.ne.jp/aliliput/20091020
貴重な地域資料ができるだけ多く保護されることをお祈りしています。
myamatoさま、 Linksさま、aliliputさま。
ご意見、情報提供、ありがとうございました。
私も正確な情報の収集に奔走していましたが、いろいろ調べて行くうちに行き着いたのがこちらの活動です。
http://www.geocities.jp/depo_tama/index.html
これは、設置主体の異なる複数の図書館が、それぞれで所蔵が困難になった資料を一ヶ所に集め、共同で保存する仕組みを実現しようという動きのようです。
こんな動きがあることも踏まえ、同法人の理事・事務局長でいらっしゃる齋藤氏と連絡を取りつつ「続・救いたい!」を急遽アップしました。
(「#metrolib」の状況も見ました)
共同保存図書館については、私自身勉強不足なので、これについて今は詳しく語ることができませんが、今回のことを機に、図書館の資料保存に関心を持つ人がもっと増えていくことを期待しています。
[...] ポット出版のサイトで、このところ話題なのが「朝焼けの図書館員」のエントリー「救いたい!」です。アクセス急増中です。 [...]
[...] 今回の騒ぎは、笹沼崇氏の「朝焼けの図書館員」10月17日付けのエントリー「救いたい!」が始まりです。 [...]
[...] 「朝焼けの図書館員」のエントリー「救いたい!」にはこういうフレーズもありました。 [...]
[...] ちなみに現在ポットのサイト内では「伏見憲明公式サイト」の「うたぐわさんインタビュー(前編)」がアクセス急増中で、「救いたい!」を抜きそうな勢いです。たぶんこのあと5年や10年は、図書館ネタがベスト10に入ることはないでしょう。 [...]